第10話

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2021/05/21 06:30 更新
 久々に雨が降っている。

ここ数週間、ずっと暑かったせいか、嫌いな
雨でも嬉しく感じた。

「よし、じゃあこの6問解いてみよう」

数学。連立方程式が黒板いっぱいに書いてある。

「祈ー、ヘルプ!」

斜め前の陽慈が手を合わせてくる。

「分かった、ちょっと待ってて」
「マジ神だわ、サンキュ」

別に神じゃないけど。

問題を解きながら、ふと昨日の事を思い出す。
涼佑とLINEを交換してから、もう1週間くらい経つけど、毎日やり取りが続いてる。これってすごいよね。学校じゃ全然会えないから、所詮は画面上での繋がりだけど。

でも、クラス違うんだし仕方ないか。





午後。学年集会で、体育館に並んでいた。

「あと少しで夏休みですが、8月にある学校対抗の郡市の水泳大会があるので……」

水泳大会、職場体験。
2年生って、意外と夏休み中に色々あるんだな。部活の大会も多いのに。

「いきなりで悪いけど、今から水泳大会に出てもらう代表候補を発表しまーす」

軽くざわついたものの、先生の声を聞き逃さないように、すぐに静かになった。
水泳大会なんて、だれも出たいなんて思わないもんな。と言って、去年私は、1年のバタフライで出されたけど。

今年はまぬがれたい……!

「じゃあ男子から。クロールで……」
次々に名前が呼ばれていく。名前が挙がった人は、ハズレくじを引いた表情をする。
当たり前だ、夏休みが減るんだから。
私も例外では無いけど。
「バタフライ25m、名越なこし、門倉……」

ん。

今、門倉って呼ばれたよね。
涼佑、バタフライ選ばれたんだ。
運動神経いいもんね。

「……で、ラスト。女子バタフライ25mは、松林と湯沢ゆさわ。以上の人は、後で体育館に残って手紙を貰ってなー」

……結局、選ばれてしまった。

「祈また選手じゃん!応援行くよー」
すぐさま日南乃が寄ってくる。
「ありがと……。あーあ、やだなぁ」
でも、内心少し面倒くささは消えてた。

バタフライ、涼佑と一緒だから。

「はいこれ、手紙よく読んで。もし大会などで無理な場合は、先生に言ってね」
配られた案内の手紙には、夏休みの練習日なんかが書いてある。

選ばれたのは20人ほど。皆運動得意な人ばっかり。私、そうでも無い気がするのに。
辺りを見回していると、不意に少し離れた位置にいた涼佑と目が合った。
……!
ドクン、と心臓が分かりやすく反応する。
えっ。
涼佑が手を振ってきた。
慌てて振り返すと、涼佑はニコッと笑ってくれた。
前より、確実に近づいてるよね。
嬉しくて、思わずそう思ってしまった。

これなら、大会も憂鬱じゃないかも。

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