久々に雨が降っている。
ここ数週間、ずっと暑かったせいか、嫌いな
雨でも嬉しく感じた。
「よし、じゃあこの6問解いてみよう」
数学。連立方程式が黒板いっぱいに書いてある。
「祈ー、ヘルプ!」
斜め前の陽慈が手を合わせてくる。
「分かった、ちょっと待ってて」
「マジ神だわ、サンキュ」
別に神じゃないけど。
問題を解きながら、ふと昨日の事を思い出す。
涼佑とLINEを交換してから、もう1週間くらい経つけど、毎日やり取りが続いてる。これってすごいよね。学校じゃ全然会えないから、所詮は画面上での繋がりだけど。
でも、クラス違うんだし仕方ないか。
午後。学年集会で、体育館に並んでいた。
「あと少しで夏休みですが、8月にある学校対抗の郡市の水泳大会があるので……」
水泳大会、職場体験。
2年生って、意外と夏休み中に色々あるんだな。部活の大会も多いのに。
「いきなりで悪いけど、今から水泳大会に出てもらう代表候補を発表しまーす」
軽くざわついたものの、先生の声を聞き逃さないように、すぐに静かになった。
水泳大会なんて、だれも出たいなんて思わないもんな。と言って、去年私は、1年のバタフライで出されたけど。
今年は免れたい……!
「じゃあ男子から。クロールで……」
次々に名前が呼ばれていく。名前が挙がった人は、ハズレくじを引いた表情をする。
当たり前だ、夏休みが減るんだから。
私も例外では無いけど。
「バタフライ25m、名越、門倉……」
ん。
今、門倉って呼ばれたよね。
涼佑、バタフライ選ばれたんだ。
運動神経いいもんね。
「……で、ラスト。女子バタフライ25mは、松林と湯沢。以上の人は、後で体育館に残って手紙を貰ってなー」
……結局、選ばれてしまった。
「祈また選手じゃん!応援行くよー」
すぐさま日南乃が寄ってくる。
「ありがと……。あーあ、やだなぁ」
でも、内心少し面倒くささは消えてた。
バタフライ、涼佑と一緒だから。
「はいこれ、手紙よく読んで。もし大会などで無理な場合は、先生に言ってね」
配られた案内の手紙には、夏休みの練習日なんかが書いてある。
選ばれたのは20人ほど。皆運動得意な人ばっかり。私、そうでも無い気がするのに。
辺りを見回していると、不意に少し離れた位置にいた涼佑と目が合った。
……!
ドクン、と心臓が分かりやすく反応する。
えっ。
涼佑が手を振ってきた。
慌てて振り返すと、涼佑はニコッと笑ってくれた。
前より、確実に近づいてるよね。
嬉しくて、思わずそう思ってしまった。
これなら、大会も憂鬱じゃないかも。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。