第8話

剣の重さ、心の重さ
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2026/01/10 12:00 更新




 夜の森は静かだった。




 焚き火の光だけが、揺れる影を地面に落としている。





朝の風は冷たく、森の木々がざわめく。







 鳥の声も、遠くの川の音も、今日はどこか遠くに聞こえた。









 上官の短い命令が、まだ耳に残っている。







 「敵陣、偵察と補填。全員、遅んなよ」







 膝をかばいながら立ち上がる。




 体は疲れきっていて、呼吸も苦しい。






 でも、止まるわけにはいかない。

 

 (――もう耐えられない。)







そんな気持ちを押し殺す度に色々な考えが頭を巡る。






 戦場での数年間、私は何人も倒してきた。



 剣の腕は、人間の範疇を超えていると、誰もが恐れた。





 でもその力のせいで、心はひどく傷ついた。


別に好きで剣術を鍛えた訳じゃないのに……。








 手に残る感触、胸の奥で鳴り続ける悲鳴、


 目に映る倒れた人の顔――



 それらが、一度も消えずに私を押し潰そうとする。









 息を整えながら、私は長剣を手に膝を抱えた。





 手のひらにはまだ血痕が残っている。




 ……私はこの手で、今日も人を殺めた。




⟡.· ___________________________⟡.·












 戦場に来てからの数年で、私の剣は“人を殺すための道具”になった。







敵も、仲間に反旗を翻した者も、誰もかれも――私の刃の前に倒れた。












 12歳の私が、もう何人も殺してしまったなんて。
 

(あの子が知ったらどう思うだろう……)




 「……ごめん、なさいッ……」










私が生きることを辞めれば多くの人が助かる……













(あの子だって"迎えに来るまで絶対死ぬな"って言ってくれたけど
人を殺してまで生きていて欲しいなんて思っていないんじゃないか…)








最近はそんな悲観的な考えばかり頭をよぎる。




 
 
 

その度に剣を握る手が震えた。





 
 誰かを守るために命をかけたかった……自分のためなんがじゃなく、








 

 肩に長剣をかけ、夜空を見上げた。








「…………」






 月は冷たく光り、森は暗く深い。





 でも、胸の奥で、かすかな光が残っている。







 ーー―彼の為に。








「今夜はよく冷えるな……」






そんな私の独り言が静かな夜に溶けた。





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