第23話

三度目の幕切れ
119
2021/09/16 10:51 更新
駅のホームで、人ごみの中に生身なまみの莉子をみつけた。

彼女との距離は5メートルぐらいだ。

でも、僕たちには打つ手がなかった。
裕太
裕太
向こうはこっちのこと知らないし……
莉子B
莉子B
よし、私が話しかけてみるよ!
莉子B
莉子B
おーい! リコ~?
莉子
莉子
…………
莉子B
莉子B
だめだ、声も届かないし姿も見えないみたい……
莉子D
莉子D
元は自分なのに、歯がゆいですわね……
裕太
裕太
仮に話ができても、どんな危険が迫ってるのかわからないんじゃなあ……
なすすべもなくしばらく見ていると、スーツ姿のサラリーマンが生身なまみの莉子に近づいてきた。

髪の毛はボサボサで、能面のうめんみたいに無表情なむひょうじょうのがブキミだ。
莉子A
莉子A
あ、あれです! 裕太さん、止めて!
裕太
裕太
え! あれなの!?
頭を押さえたまま、莉子Aがサラリーマンのほうを指さす。

よくわからないまま、僕はその不審ふしんな男と莉子の間にって入った。
不審なサラリーマン
不審なサラリーマン
どけ! 邪魔だ!
裕太
裕太
どかない!
裕太
裕太
アンタ、何をするつもりだ?
莉子
莉子
え……? なに……?
突然の出来事に、生身なまみの莉子もけげんな顔をしている。
不審なサラリーマン
不審なサラリーマン
そうか、お前もグルだな……
不審なサラリーマン
不審なサラリーマン
はは、どいつもこいつも……
不審なサラリーマン
不審なサラリーマン
俺をバカにしやがって!
男はポケットから大きめの折りたたみナイフを出し、刃のやいば先を僕に向けた。

こちらがけるもなく、体ごとぶつかってくる。

――ドン!
裕太
裕太
ぐっ……!
なかが焼けるように熱い。
莉子
莉子
きゃあああっっ!!
莉子B
莉子B
裕太ぁっ!!
莉子A
莉子A
裕太さぁんっ!!
自分の足で自分の体を支えていることができず、僕はその場にくずれ落ちた。

僕の目に最後に写ったのは、莉子Bの泣き顔と、男が生身の莉子をナイフでしている姿だった。

(続く)

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