駅のホームで、人ごみの中に生身の莉子をみつけた。
彼女との距離は5メートルぐらいだ。
でも、僕たちには打つ手がなかった。
なすすべもなくしばらく見ていると、スーツ姿のサラリーマンが生身の莉子に近づいてきた。
髪の毛はボサボサで、能面みたいに無表情なのがブキミだ。
頭を押さえたまま、莉子Aがサラリーマンのほうを指さす。
よくわからないまま、僕はその不審な男と莉子の間に割って入った。
突然の出来事に、生身の莉子もけげんな顔をしている。
男はポケットから大きめの折りたたみナイフを出し、刃の先を僕に向けた。
こちらが避ける間もなく、体ごとぶつかってくる。
――ドン!
お腹が焼けるように熱い。
自分の足で自分の体を支えていることができず、僕はその場にくずれ落ちた。
僕の目に最後に写ったのは、莉子Bの泣き顔と、男が生身の莉子をナイフで刺している姿だった。
(続く)


















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。