第8話

第7話 「 話 」
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2024/07/05 12:49

佐野side

インターホンを鳴らし、小島くんが出てくるのを待つ

「晶哉、意外と早かったな、笑」

「…おん、」


小島くんにはLINEで「話がある、」と伝えると

「了解」と簡潔な返事がかえってきた

…小島くんも、きっと分かってる、

……分かっててこんな明るい素振り見せてくれてんのか、

罪悪感で押し付けられそうになる


「晶哉、何飲む?」

「……飲み物、はええよ、
長居せんから、ね、?」

「……そんなこと言わんとってさ、笑
…ほら、ビールもあるし、コーヒーも何から何まであるで、?笑」

「……ほんとに、今日は、すぐ帰るから…」

小島くんの顔を上手く見れない

「…ん、そうよな、」

小島くんは一言そう呟いた、


どう話を切り出せばいいのか分からず、時間ばかりが過ぎてゆく


「……晶哉、」

小島くんが先に話を切り出してくれた


「……終わり、やんな、」

「…おん、終わりに、したい、」

「……わかった、」




「ごめんな、俺のせいで」


小島くんはぽつりとそう呟いた

「……うん、」


「俺、っ大好きやってん、晶哉のこと、…
だから、手放したくなくて、っ…!」


「……うん、」

「……なぁ、晶哉は俺の事好きでおってくれてた、?」


「…うん、大好きやった、
小島くんの事、愛してた、」

「そっか、…ありがとう、」


「……それじゃあ、また、明日…」

「ん、またな、」


そう告げ、俺は部屋から出ていった


「…雨、
やまなそう、」



家に帰る途中に小島くんとの始まりを思い出していた



俺と小島くんは付き合っていた


本当に充実していて、これ以上に無いほど幸せだった、





付き合ってから1年後、


小島くんの家に行った時に幸せは崩れた、



合鍵を貰って浮かれて小島くんに秘密で小島くんの家に行くと

小島くんはいつもバンドを見に来てくれている若い女の人と浮気をしていた



女の人は俺を見ても構わず「あれ、見られちゃった、?笑」と微笑みながら俺に話しかけてくる、


当たり前だ、女の人からしたらイチャイチャしてた時に同じバンドのメンバーが家に入ってきただけなんだから、


だけど俺と小島くんは違った、

小島くんは「ごめん…ごめん、ほんまに、」と謝り続けるだけだった、


女の人は小島くんの言ってる事を理解出来ずに帰って行った



「……小島くん、」

「まさ、や、ごめ、」

「…別れよっか、」



これで、終わりのはずだった、


同じバンドのメンバーという事もあって嫌でも顔を合わせなければならない、


小島くんの声を聞くとやっぱり好きだな、と感じてしまい、昨日の事なんか許してしまいそうと考えていた俺はどうかしていた、

…今なら分かる、

俺は小島くんに依存していた、


だから別れてるのにも関わらずの突然のキスも、

体の関係も、全て許していた、


小島くんはあの女の人とは別れたと言っていた、俺と復縁したい、という意味だろうか、


でも俺は「そっか」と淡々と返事をした、

どれだけ俺が小島くんを好きでも、体の関係を重ねても復縁はしなかった、


俺の手のひらに転がされている小島くんを見ているのが楽しかったから、



我ながら屑だなと思う、

だって今日に関しては体の関係ですらやめようと言ったから、


でも俺は小島くんに俺が感じた苦しみを小島くんにもわかって欲しかった、


それを1番、望んでた



こんな屑な俺を愛してくれるのは小島くんだけだろうか、


……誠也くんは、こんな俺の事を知っても好きでいてくれるのだろうか、


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