マジで雰囲気
謎
「死ねば良いって、思った?」
お前は随分とまあ、いつにも増して闇の深い笑顔でそう聞いてきた。
「……別に」
「そっかあ。なつくんはばかだね。」
それに対する否定がお前の求めているものではないと分かっていた。分かっていた上で、否定した。俺にだって発言を選ぶ権利くらいは有るじゃ無いかって。お前を傷つけるけど、お前を傷つけたいわけじゃ無いって、そう思うくらいはいいだろって。心の中でクソほど反論しておいた。
「お前は」
「ん?」
「お前は、逆に、どう思ったん」
話題が曖昧なまま返したキャッチボールを、お前はまた曖昧に受け止めた。そうだな、一回グローブから滑り落ちて、空中でまたキャッチした、とかじゃないの。
「おれは……ごめんって、思った」
「なんで?」
「さあ、なんでだろ。全部おれのせいなのにな」
なんで、なんでだろうね。お前はそう言って、何度も何度も何度も、自分に問い続けていたけれど。それも飽きたのかして、辞めた。
「なつくん」
「ん?」
「ごめんね」
「ごめんって、俺になん」
「多分」
「なにそれ」
「わかんない」
あまりに中身のない、ぺらっぺらの会話が風になって流れていく。今までお前との会話の中で感じたことのない、妙な居心地の悪さがまた気持ち悪くて、足の感覚だけに意識を集中させた。
「なつくん、足砂だらけだよ」
「……三日間消息不明、探し回った末にこんな海にいたのは誰だよ」
「え、なつくんの知り合いにそんな自分勝手なことするやついるの? 友達やめな?」
「この野郎」
「ははは、ごめんごめん」
「なつくんは優しいね。そんで、ばか」
せっかく俺が優しいボールを投げてやっているのに、いつも以上に空気を読まないお前はそのボールを地面に捨てたり、あるいは踏み潰そうとして転んだり、また別の場所に投げようとして辞めたりする。そして最後は、また俺の元に投げずに転がしてくる。
「こさめ」
「なあに」
「俺、お前んこと割と好きなんだけど」
「え、おれノンケ」
「違ぇよ、人間として。……あ、でも、キスはできる」
「マジで? でもこさめもできる」
「っていうかメンバーみんなできるけぇ」
「らんくんだけ無理やな、舌入れてきそう」
「あーたしかに、らんは無理だわ」
……いや違うって、こんな話がしたいんじゃねぇの。
お前に転がされたいわけじゃないし、お前を転がしたいわけじゃないの。傷つけたくない、そんだけだから、ちゃんと話さなきゃって。思っただけ。
「……なんの話してたっけ?」
「俺がこさめを好きって話」
「あーそうだそうだ、それで?」
「そうそれで……俺は、こさめが好きで。でもお前は、こさめのこと好きじゃない、やん」
なんて言えば良いかわからない。から、割と率直に言ったら、お前は当たり前のような顔をして頷く。
「え、うん。」
「……はぁ〜〜……やんな〜〜」
「なになに急にww」
「いや、俺はお前のこと好きだけど、お前がお前のこと嫌いだから。俺の好きはお前の救いになんないけぇ、どうすりゃいいかなって」
「そうやって、今、こさめのこと幸せにする方法考えてる……って、話」
雪山のバラバラ死体みたいなまとめ方だった。だってこう言う時、俺はらんみたいに気が回らない。すちみたいに寄り添えない。
いるまみたいな語彙力もなければ、みことみたいな底抜けの明るさだって持ち合わせていない。あまりに人を救うのに向いてない人間性しか手のひらに転がっていない。
だから、あまりに向いてない人間なりに伝えたけど、多分こいつには伝わらない。一生。
「……」
「…………」
「…………………」
「…………なんか、言ってや」
「……そっちこそ、って言うか、順番的にこさめの番じゃん」
「まだなつくんの言葉続くかなって」
「これ以上にお前に言うことねぇし」
「うわひどっ、……いや、別に酷くないな」
「だよな? 俺変なこと言ってない」
「あはは、ごめんね」
「なつくんは、こさめのこと好き?」
「おん」
「世界一? 宇宙一? こさめのために死ねるくらい好き?」
あまりにお前がツボるものだから、何だか気恥ずかしくなって、こっちは珍しく口数が多くなった。
その滅多に見ない光景がまたお前のツボを謎に刺激したらしく、一生笑ってる。メンバー嘲笑うのまじで趣味悪いぞお前。
そう言って、お前が笑った。つられてちょっと俺の口角が動く。
謎メンタル病み水さん × 病みがデフォルトだからだれよりも近い場所にいられる赤さん
が書きたいだけだったんです。なんでこんな謎作品に……??












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。