マダラとの再開に、少し複雑な気持ちを抱えたまま、帰り道へと向かった。
しかし、タズナさんの家が近くまで来た時、何やら騒がしく足を早めた。
近くまで行くと、目の前には男二人が倒れていて、完全に気を失っている。
「へっへーん!」と、嬉しそうに前に立つと、私にピースサインを送る。
なるほど…後ろにいるイナリくんと、気絶してるツナミさん。
カカシ先生が居ないことから、留守の間を狙ったのだろう。
この状況は恐らくガトー…または、再不斬の仕業。だが、そうだとすれば今すぐにでも、カカシ先生達を追わないといけない。
私はイナリくんに「お母さんを頼むね。」と言い、ナルトくんと急いで、カカシ先生の元へと走った──────。
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一方その頃、カカシは再不斬と戦い、サスケはハクと戦闘を開始していた。
サクラはタズナさんを守るように後ろにし、2人を見守る事しか出来なかった。
サスケに向かって、またも針を刺そうと動いたその時だった──────。
バリーン━━━━━━━━━!!
術で作った氷の鏡が、何者かの攻撃により全て割れてしまった。
後ろを振り返ると、離れた場所から月夜と、ナルトの姿が見えた。
負傷しているサスケを、ナルトが助けに行こうとするが、ハクがナルトに向け千本針を向けた。
しかし、月夜が止めに入ると、羽交い締めにし、ハクの手足を拘束する。
サスケを抱えたナルトを見て、声を漏らし笑いながら口を開く少年。
2人は睨み合うような形でお互い向き合う。
少年の顔は見えないが、お面の下からは余裕の笑みが伺える。
唯ならぬ、2人の殺気がぶつかり合い、互いにいつでも動けるように身構える。
そして、向こう側でカカシと再不斬がぶつかりあった瞬間_______________。
互いの印を結ぶスピードは、同じ。
月夜は印を結んだと同時に、四足獣の様な体制になると、地面に向けチャクラの斬撃波を飛ばす。
地面がエグり取られながら、かなりのスピードで範囲もでかい。
しかし、ハクもスピードなら負けない。
月夜と同じタイミングで術を出し、先程の鏡の氷を囲うように複数出す。
そして、斬撃が当たるスレスレに鏡の中へと入り込むと、月夜の斬撃は氷の鏡と当たると同時に、カウンターのごとく跳ね返ってきた。
チャクラ性質が同じなのは盲点だったと、眉を寄せる月夜。
その間、次の策を練る前に、ハクは月夜に余裕を与えない。
目では追い切れないスピードで、次々から次へと、氷の鏡から別の鏡に移動する。
まるで、光の反射だ。移動する度に、何処から千本針が飛んで、防ぎようが無い。
考える暇も、攻撃する暇も無く、月夜の体は太い千本針がいくつも刺さり、ただ刺さっている。
そして、何より厄介だったのが、確実にツボを狙い、針には毒が塗られていた。
体が痺れ、毒による吐き気と目眩もする。
ハクは、月夜に対し、決して油断を怠る事は無かった。
彼女を最初目にした時、自身の生存本能が、危険だと知らせていた。
だからこそ、最後まで手は抜かない。
鏡から、鏡へ、と移動し、千本針を確実にツボへと狙いを定める。
そして、確実に動けなくしたと同時に、背後から心臓目掛け、針を突き立てる───。
ガシッ━━━!ギチギチギチ!!
彼女の声とは思えない、ドスの効いた獣の声。
その明らかな殺気に、気づいた時にはもう遅く、腕を背中から現れた青黒いチャクラに纏わりつかれ、激痛がはしった───。
「シュウウウゥゥーーーーー。」
自身の腕が、この1人の少女により凍傷の火傷を負わされている。
何とか腕からこの尾のチャクラを外さなければ、いずれ骨に到達してしまう...!
千本針を取り出し、彼女の瞳目掛け突き立てたが、やはり無理だった。
もう1つの尾が絡み付いたと同時に、腕を持ち上げたまま、身体が宙に舞った。
そして、背負い投げのように地面へと叩きつけられ、背骨から嫌な音がした。
身体中、あちこちが痛く、今にも意識が飛びそうな中、彼女は高笑いしていた。
そして、傷みだけではなく、心まで折るように、獣の咆哮が広がると、術の鏡が全て粉々に割れてしまった。
「パキツパキッ」
飛び上がった彼女が、殺気を込め満面の笑みで拳を向けている───。
面のヒビが広がり、月夜の拳を目の前にしてバラバラと地面に破片が全て落ちていく...。
ハクの素顔が現れ、拳を寸止めする。
この顔は見た事ある...。
朝一緒に薬草を摘んだ人だ。
ゆっくりと、自分の殺意が落ち着いていくのが分かる。
チャクラの尾は消えていき、琥珀色の瞳がハクを上から覗き込む。
そう、一昔前なら迷わなかっただろう。
だが、再不斬との1体1での戦いの際、ナルトくんに言われた言葉が脳裏に過ぎり、この少年に対する殺意を消したのだ。
再不斬さんは確かに、殺人鬼で数え切れないほど殺している。
”鬼神”だと言われているが、人間味のある優しさがあると、僕は気づいていた。
そんな優しい再不斬さんだからこそ、僕はあの人の道具として守りたい。
だけどこの子は違う。
まだ何も知らないんだ...愛という形を。
まるで、両親に殺されかけ1人になった時の昔の僕のようだ。
ついさっきまで、互いに殺意を込めていたのに不思議だ。もはや互いに敵意は無く、和解同然だった。
そして、ハクと話がしてみたいと持ちかけた、その時だった───。
もう動ける程のチャクラなんて、無いはずなのに。体を無理やり起こし、私の方をチラッと向くと目が合う。
彼は口パクで"『さようなら』"と笑いその場から姿を消してしまった───。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。