明らかに、何か言いたいのは
わかる。
そして、ついに宙君は、ゆっくりと
口を開いた。
俺が、宙君にキスをした?
それも、チョコなんか食べて、酔っぱらった
せいで・・・
俺は、ガッと頭を深く
下げる・・・
宙君は、「大丈夫です」と、言って
苦笑いをしている。
もっと、早く気づくべきだった・・・
キス・・・そんな事を、したなんて
俺は、正直ビックリしていた。
酔った勢いとは、いえ・・・許される
はずがない・・・
俺は、ゆっくりと頭を上げた。
そもそも、俺は、宙君に恋愛感情
なんて、持ってないはず・・・いや
そう信じたかった・・・
でも、本当は、宙君にそういう事を
したいとか思ってたのか?
・・・・・・・
宙君は、「わかんねーー!!」と
頭を抱え込んでいる。
本当に、宙君は、優しい。
そして、迷惑をかけるのは、いつだって
俺の方だ・・・
わからない・・・
でも、キスしたとか、してないとか
関係なく、俺は、宙君可愛いかもって
本当は、好意を持ってた変なやつで
俺自身が怖い。
自分では、考えないようにしてた。
宙君と、同じ部屋になってから
俺の世界が、少し明るくなって
口うるさい後輩が、何気に気になる
存在になって・・・・
本当は、宙君を、撫でたり
触れたいと思っていたかもしれない。
それが、酔った勢いで、ブレーキが
効かなくなったんだ。
もしも、宙君に、「キモいんだよ!
この年間ジャージ野郎!!」
なんて、言われる妄想をしたら・・・
深く考えすぎてたせいで、
宙君の顔が、急に視界に現れ、俺は
驚いてしまった。
宙君の目が、ジッと俺を見つめる。
真剣な瞳に、目が放せなくなる。
いつもより、肝が座っている
宙君。
俺が、抵抗できるはずもなく、
「わかりました・・・」
と、返事を返した。
こうして、俺と宙君は、隠し事を
しない話を、始めることにした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。