4月半ば。
新入部員のパート割も決まり、フルートパートは新たに2人のメンバーを迎えた。
思った以上に個性の強い後輩たちに戸惑いつつも、桜音は、これからが少し楽しみになった。
1年生2人、2年生1人、3年生2人。
これだけいれば、コンクールも人数は大丈夫!
コンクール、頑張るぞ~!!
っていうか、ゆかちゃん、健のことタイプっていってたよね!?
そこは共感できない~…!!
えっ、ゆかちゃん?
1年生にしていきなりそんな事言うのは、いくら何でも…
っていうか、周りの目とか、気にならないのかな…??
みんなもざわざわしている。
先生優し過ぎだよ。
まぁ、いっか。笑
この子すごいなぁ。
度胸ある。
ゆかちゃんがsoliのメロディを奏でる。
あぁ、やっぱりこういう積極的な子は、演奏も積極的だなぁ。
ビブラートからも、自信の大きさが感じられる。
それに応えるように、健がアルトサックスの音を絡めていく。
ゆかちゃんの音に動揺が見えた。
そっか、ゆかちゃん、健のことタイプって言ってたもんね。
いいなぁ。
そういう人とのsoliなら、想いも込められるんだろうな…
その日の練習が終わってから、健が私のところに来た。
そう言って健は、私をおいて隣の部屋にすたすたと歩いていった。
練習しなきゃ…
だって私、全国目指してるんだもん。
練習しなきゃ!!
はぁ、行かなきゃ…
私は、いやいや健のいる部屋に向かった。
私は、最初のメロディを吹いた。
特に、何も考えずに。
ただ、楽譜に書いてあるものをそのまま。
健も、気持ちのない音を、ただ並べていく。
機械的な演奏としてはほぼ完璧かなって感じ。
でも…人を感動させられる音楽には程遠い。
そっか、そうだよね。
私もそう思ったよ。
あー、もーいー!
どーでもいい!
健なんて大嫌いだよ。
あんなやつ…
なんで、なんであんなに酷いこと言うの…?
気づいたら、泣いていた。
泣きながら、とにかく走った。
健から逃げた。
その背中を見ながら、健は1人で呟いた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。