私は約10日間ぶりに学校に行った。
私の友だちや彼氏、先生や先輩。
みんなとても心配してくれたけど、
『大丈夫、ありがとう』
無理して笑うことしかできなかった。
こんなにいい人たちばかりなのに、ろくに感謝できず、ずっと塞ぎ込んだままだった。
いつも、学校ではうるさいくらいだった私がこの黙りようだ。
『やっぱり、今日早退する?』
友だちにそう言われた。
『まだ、癒えてないでしょ?無理しないで。
授業のノートちゃんと送るから』
その言葉に涙が出てきた。
こんな情緒不安定な私を見られたくなくて、涙を手の甲で拭いた。
『ごめん。今日は帰るね……ありがとう』
友だちが先生に言っておいてくれ、正門の前まで送ってくれた。
ありがとう
それだけ言って私は、2時間目で早退した。
***
帰ってからは、お姉ちゃんがくれた本を読んでいた。
ほのぼのとした内容に少し救われる。
もとは小学校高学年用の本だからすぐに読み終わった。
何もする気力はなかったが、フラフラとお姉ちゃんの部屋に行った。
勉強机の上には、開いたままの英語のノートに私がプレゼントしたペンケース。
そして、ノートにはお姉ちゃんの癖のある字。
私は指で文字をつつっとなぞった。
帰ってきてから少し勉強してたんだろうな。
そこには授業の内容が書いてあった。
そして、目線をふと横にそらすとあの本───群青の星 があった。
手にとってパラパラとめくる。
お姉ちゃんは、もう読んだのかな…。
私も、読んでいいかな?
お姉ちゃん。
読んでなかったらごめん。
少し借りるね。
***
本の最後のページにはシリーズ一覧が書いてあった。
1.蒼い月
2.ふたご座流星群
3.孔雀劇
4.遙か先のキミへ
5.春風症候群
6.群青の星
7.意味を探して
8.Coming Soon...
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。