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第1話

新しい家
44
2019/11/30 08:23
美渚
美渚
…っ、行ってきます
母親
バタンッ。
もう、この家には帰らない。
私はそう決めた。
両手に持った、大きなカバン。
私の服や洗面道具、スマホ、財布など、私の物は全て入っている。
もう、振り返らない。
前だけ見て歩いていくって決めたんだ。
私は、拳を強く握った。







…にしても、これからどうしよう。
学校はもう終わってるだろうし、行くあてもない。
友達の家に泊まるって言っても、どれくらいそれが続くのか分からないから、迷惑でしかないし。
う~ん、これは困ったな。
お金はあるけど、毎日ホテルに泊まれるほどじゃない。
美渚
美渚
…私、馬鹿だな…
自虐的に笑う。
考えが浅すぎた。
あの家からおさらば出来たのはいいけど、泊まるあてもない。
美渚
美渚
…はー、野宿でもするか~!
大きく伸びをした時…
ゴンッ。
伸ばした手に、固いものが当たった。
???
…ってぇな
美渚
美渚
声がして、思わず振り向くと…
???
???
…お前、そんなとこで何してんの
美渚
美渚
え…
私の後ろに、謎のイケメンな男子が立っていた。
私が伸ばした手は、恐らく彼の額に当たったのだろう。
???
???
…何か言えよ
美渚
美渚
あっ!さ、さっきは腕が当たってしまい、申し訳ありませんでした!
私は咄嗟に謝った。
???
???
いや、それはいいから、お前そんなとこで何してんのって
美渚
美渚
いや、その前に!初対面の人に「お前」呼ばわりは何なんですか!
???
???
…あー、悪い、くせで
じゃあ、君?
彼が首を傾げた。
いや、何このイケメン。
本人は絶対そんなつもりないと思うけど、あざとい、あざとすぎる。
美渚
美渚
そ、そんなこと、あなたに話すわけないでしょ
???
???
ふーん…でも、この荷物の量、普通じゃないけど
美渚
美渚
!り、旅行に行くの!
???
???
旅行行くのに、こんな道端で座り込むんだ?
美渚
美渚
……
この人、分かって言ってる。
???
???
…家出したんだろ?
美渚
美渚
……だから、あなたには関係ないって…
???
???
うち・・来る?
美渚
美渚
…え?
???
???
もちろんただで居候されたら困るし、掃除当番とか買い出し当番とかはあるけど
美渚
美渚
…本当にいいの?
???
???
いいよ
君の様子見た感じ、ただ事じゃなさそうだし
美渚
美渚
…あ、ありがとうございます!
???
???
いいよ、俺はなんもしてないし
いや、めっちゃ色々言われたけどね。
てか、もう聞かないんだな。
私が家出した理由。
???
???
…ところで、名前は?
美渚
美渚
笹倉ささくら美渚みなぎです…
臣くん
臣くん
俺、松戸まつと忠臣ただおみ
臣って呼ばれてる
美渚
美渚
じゃあ、臣くんって呼ぶ!
臣くん
臣くん
どうぞご自由に
臣くんが…優しく微笑んだ。
その顔は、夕焼けに彩られ、とても綺麗だった。

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