〜あなたside〜
鍋の中を、カレーライスの歌を歌いながらかき混ぜる
……そう、今日の晩御飯はカレーです!
ホントにこんな簡単なものしかできないんですけど……
ルーも入れ終わってて、もう後はかき混ぜるだけ!
ガチャ
風呂掃除が終わった様子の先輩
匂いをかぎながらキッチンに入ってきた
そう言いながら先輩は冷蔵庫からお茶を出す
注ぐと、椅子に座って休憩してる
……少しは……役に立てたかな……?
服がほとんど乾いてきた頃、カレーが出来上がった
せめてお風呂に入る前に、先輩の分を作っておこう
パカッ
炊飯器を開け、ご飯を入れる
そこに、さっき出来上がったカレーを…………
ガチャンッ!
あーあ……やっちゃった………
炊きたてご飯と作りたてのカレーを入れたお皿は、
想像以上の熱さで……
また…落としてしまった………
先輩が駆け付けてきてくれる
幸い落ちたのは床ではなくキッチンの上
カレーはいいとして………
よそったおたまからこぼれ落ちたカレー
乾き始めていた服の袖に付いてしまった
こびり付いて取れなくなるのも嫌なので、
仕方なく先輩に言われるままお風呂に入ることにした
ガチャ
脱衣所に入り、服を脱ぐ
カレーが付いてしまったものは別の場所において
お風呂から出た後に洗おう……
髪をバレッタでまとめて、お風呂のドアに手をかける
ガラガラッ
目の前に広がるのは、
白を基調とした明るめな空間
そこに3人は余裕で入りそうな丸いバスタブ
棚にはラベルが英語のシャンプーとトリートメント、
端には緑の観葉植物がある
いやいや……
ここ……ホテルですか…、?
そう見違えるようなお風呂に、
ドアを開けたまま固まってしまう
自分に問いかけつつ、中に一歩踏み入れる
ガラガラッ
ドアを閉め、バスタブからお湯を汲んで体にかける
なんか……これだけで良いんですけど………笑
これ以上は私にもったいなさすぎて、気が引けてくる
でも…、こんなに良いお風呂……他にはない………
遠慮と欲で戦った結果、
圧倒的に欲が勝つ
いや…先輩がこんなに大きいお風呂洗ってくれたんだから……!
そんな理由をつけて、お風呂の中に入る
チャパ ジャポンッ
リョウキ先輩の家のお風呂は、凄いあったかくて
1日……何なら1週間ぐらいの疲れが飛んでいく
それに……あったかくて……
……リョウキ先輩の匂いに包まれてる感じ…
何処となく…落ち着く………
髪を洗い終わり、また湯船に入る
もう少ししたら出ないと………
少し瞼が重くなってくる……
このまま長居するとお風呂で寝落ちしちゃうな……、
ジャパ……
湯船から上がり、足を床につける
重心をそこに預けると、私の足は滑っていき…
ドゴッ…ドンッ!
目を開けると体は倒れていた
足元を見れば、流しきれなかった泡がポツリと一つ
これが原因か………
風呂場の床は固くって…
強打した肘と、捻った足首……そして学校で怪我した膝が痛い
しばらく動けずに居ると、脱衣所の明かりがついた
ちょっと焦ったような先輩は、脱衣所で何かを探してる
少し経つと、「開けるよ〜」と声が聞こえた
ガラッ
10センチほど開いた扉からは、タオルが差し込まれる
顔は見えない先輩から声が聞こえる
その指示に従い、体を起こしてタオルを受け取り、体に巻いた
カラガラッ
開いた扉
目を隠すような素振りをしながら先輩が入ってきた
片方の手ではタオルを押さえ、
もう片方の手で手を掴んで握る
この手が私を立ち上がらせてくれるためと学習した私は、
先輩のその紳士な行動にドキッとする
先輩にそう言われ、思わず手をぎゅと握る
先輩は、私の手を握ったままドアを開ける
ガラガラッ
脱衣所に連れてこられ、手を離される
そのまま無言で先輩は出ていこうとした
こっちを見ない先輩が答える
指をさして、また出ていこうとする
教えてもらったけども……教えてもらったけども……
なんか……もやっとくる……
どうにかして先輩を引き止めたい………
気付けば、私は先輩の手を握っていた
体を前に倒して、精一杯きれいなお辞儀をする
先輩が今、
どんな顔をしてるかも分かんないし
何なら嫌な顔をしてるかもしれない
でも、私を助けてくれたお礼だけは伝えておきたい………
元通り立ち上がる
すると、 先輩の目線がおかしい……
下に目線をやれば、タオルが落ちている
………え?
自分の体には、もういないタオル
騒がしい夜…………
あれ……?これ、近所迷惑じゃないよね……?
朝更新すんません
こういうカップル私好きです♡
次のお話で終わらせられるように頑張ります
長々と書いてる短編ですが、よろしくです🙇
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。