第56話

#55 初めての同棲
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2026/05/24 13:00 更新





夏の空気は、

どこか懐かしくて、

少しだけ甘い。



あの日___

先輩の卒業式から、

気づけば1年半が過ぎていた。



俺は高校3年生。

季節は、夏休み。



そして今日、

俺たちは__

一緒に暮らし始める。



段ボールが

いくつも積まれた部屋の中、

まだ“生活”の匂いはしない。



新品の家具、

整えられたキッチン、

広すぎるくらいのリビング。



正直、

全部が整いすぎていて、

少しだけ現実味がなかった。



本当なら、

春に始めるはずだった同棲。

けれど、

先輩の留学が重なって、

それは叶わなかった。



1年間。



長かったようで、

短かったようで、

でも確実に、

“いない時間”は

俺の中に残っている。



6月に帰ってきた先輩と、

こうしてまた隣にいられることが、

ただ嬉しかった。



v「ジョングガ、それ重いだろ。置いとけ」



振り向くと、

変わらない声。



……いや、

少しだけ大人になった声。



jk「大丈夫です、
 “テヒョンイヒョン”」



言った瞬間、

しまった、と思った。



v「……は?」



低い声が、

背中に刺さる。



jk「いや、その、癖で……」

v「戻ってんじゃん、また」



振り返ると、先輩___

いや、テヒョンが

呆れた顔をしていた。



留学前は、

ちゃんと“テヒョン”って

呼べてたし、

タメ口だって、

少しずつ慣れてきてたのに。



離れていた時間のせいか、

気づけばまた距離を

取るみたいな話し方に

戻ってしまっていた。



jk「…だって、なんか、
 ちゃんとしなきゃって思って」



小さく言うと、

テヒョンはため息をつく。

それから、すぐ近くまで来て、

額を軽く小突いた。



v「ちゃんとしなくていいって
 言ってんの」

jk「……」

v「俺ら、もうそういう
 関係じゃないだろ」



その言葉に、

胸の奥がじんわりと熱くなる。



婚約して、

一緒に住んで、

未来まで、

もう決めている関係。



分かってるはずなのに、

どこかでまだ、

“先輩と後輩”の距離が

抜けきらない。



jk「……テヒョン」



少しだけ勇気を出して、

呼んでみる。



一瞬だけ、

空気が静かになる。

テヒョンは、ふっと笑って、



v「ん、それでいい」



と、優しく言った。

そのまま、俺の頭を撫でる。



昔から変わらない仕草なのに、

今は少しだけ意味が違う気がした。



逃げ場みたいな優しさじゃなくて、

ちゃんと“隣にいる人”としての触れ方。



部屋の中には、

まだ段ボールが散らばっている。



けれど、その真ん中で、



v「…これから、ずっと一緒だな」



ぽつりと、

テヒョンが言う。



jk「……はい」



少しだけ照れながら返すと、



v「はい、じゃない」



すぐに訂正が飛んでくる。



jk「あ……うん」



言い直すと、

満足そうに頷かれた。



窓の外では、

夏の光が揺れている。

蝉の声が、

遠くで響いている。



未完成の部屋と、

まだぎこちない会話と、

それでも確かに隣にある体温。



これは、ただの同棲じゃない。

俺たちが選んだ、

“これから”の始まりだ。







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