店の扉が開くたび、
柔らかなベルの音が鳴る。
カウンターの中で、
俺たちは並んで立っている。
胸元には、揃いのネックレス。
指には、同じリング。
そして俺の左手には、
婚約指輪と
あと、もう1つ___
結婚指輪。
最初の頃は、
常連さんに笑われた。
「ここカフェだよね?
恋愛ドラマじゃないよね?」
なんて、冗談混じりに
言われるくらいには、
俺たちは距離が近すぎたらしい。
今は少しだけ、抑えている。
…いや、抑えられている、の方が
正しいかもしれない。
店が忙しくなったから。
ありがたいことに、
お客さんも増えて、
開店当初みたいに
余裕なんてなくなった。
jk「……最近さ」
ふと、ぽつりと口に出す。
jk「前よりいちゃつけてなくない?」
すぐ隣にいるテヒョンに、
こっそり言うと、
コツン、と軽く小突かれた。
v「仕事しろ」
即答。
jk「えー」
思わず不満が漏れるけど、
そのまま小さく笑って、
jk「はーい」
と、素直に返す。
オーダーが入った
カフェモカに取り掛かる。
ミルクを温めて、
チョコレートを溶かして、
丁寧に注ぐ。
手元に集中していると、
v「……お前のカフェモカ、
すげえ売れるんだよ」
不意に、テヒョンが言う。
顔を上げると、
どこか誇らしげな目。
jk「そう?」
v「うん。リピーター多い」
その言葉に、少しだけ照れる。
でも、すぐに言い返す。
jk「テヒョンのラテだって
売れてるじゃん」
v「……まあな」
jk「普通に美味しいし」
そう言うと、
テヒョンは少しだけ
目を逸らした。
ほんの一瞬の沈黙。
次の瞬間___
背後から、
ふわりと腕が回る。
jk「……っ、え」
お客さんからは見えない死角。
そのまま、頬に軽くキスが落ちる。
jk「なっ……!」
思わず声が漏れると、
テヒョンはすぐに離れて、
v「ほら、仕事仕事〜」
なんて、
何事もなかったみたいに
戻っていく。
その背中を見ながら、
じわじわと顔が熱くなる。
jk「……ずる」
小さく呟いて、
また手元に戻る。
カップの中に注がれるコーヒーは、
今日も同じように香るのに、
胸の中は、少しだけ騒がしい。
忙しい日々の中で、
変わっていくこともある。
距離も、時間の使い方も、
昔みたいにはいかない。
それでも、
こうして隣に立って、
同じ場所で、
同じ時間を過ごしている。
それだけで、十分だと思える。
v「……ジョングガ」
名前を呼ばれて顔を上げると、
テヒョンが、
いつもの少し柔らかい顔で
こっちを見ていた。
何も言わなくても分かる。
この先もきっと、
こうやって、
くだらないことで笑って、
少しだけ触れて、
同じ未来を描いていくんだろう。
コーヒーの香りに包まれながら、
俺たちは今日も、
“これから”を、
少しずつ重ねていく。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。