「ふぁぁ…」
大きなあくびをかましながら、口元を手のひらで隠す。
鎌倉から逃げ帰ってきた翌日、いつも通りに仕事をしていた。
ザッザッ、と落ち葉を掃いているが、昨日の帰りが遅かったが故にかなり眠い。
しかし仕事をサボるわけにもいかないので、進みは遅いがやる。
(そういえば、若様は大丈夫だろうか?)
先輩巫女の栄さんたちが揃って若様の部屋へと向かったので、ちょっと気になる。
私も誘われたが、流石に主君?になった人の寝室に忍び込むことはできない。
小心者なので。
無心で箒を動かしていると。
目の前で突風が吹いた。
「っ!?」
何が起こったか把握する暇もないまま、ズボッ、という音が届いた。
音のした方を振り向くと、落とし穴にはまっている若様が。
(あー…)
なるほど、そういえば亜也子ちゃんと弧次郎くんが頼重様に指示されてなんかやってたな。
あれ落とし穴だったのか。
ひとまず近寄って、上から覗き込む。
「おはようございます、若様」
「おはよう、ってそんな状況じゃないだろう!?
なんなんだこれは!?」
「私も知らなかったんですよ…とりあえず、引き上げるので手を伸ばしてください」
「あ、ありがとう」
伸ばされた若様の手を取り、上へ引き上げる。
8歳?とはいえ、子供はそれなりに重たい。
でも案外簡単に持ち上げることができた。
筋力ついたかな、と思いつつ若様を地面に下ろす。
しゃがんで若様の服についた土をパタパタと払っていると、ふいに。
「おはようございます、時行様!!!そしてあなた殿も!!!」
「うわーっ!?!?」
「っぱびっくりした…」
かなりの音量が横からぶつかってきたので、悲鳴を上げる若様の横で一瞬硬直する。
クッッソびっくりした…。
心臓を押さえている間に、なにやら若様と頼重様が話している。
あれいつのまに雫ちゃんいるんだ…?
困惑しながらも立ち上がると、若様の姿がない。
と、思ったらまたズボッという音が聞こえた。
「はい2回目ぇ!!」
視線をそちらに向けると、若様が再び落とし穴にはまっていた。
「…いくつ掘ったんだ…」
こりゃ私も気軽に出歩けないな、と思った。
「父様、あなたさんまで驚かせてどうするの」
「いやー、あそこまで驚かれるとは…」











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。