志麻side
テーブルの上にご飯を置くと俺はお盆を持って台所に向かった。
ガシャン!
お義父さんが俺に灰皿を投げつけてきた。
義父からの容赦ない暴力に、俺は身を小さくして必死に耐えた。
義父、というのはこの人と俺は血が繋がっていない。
俺の母は風俗嬢で、俺はどこかの客との子だった。
母は俺が邪魔で仕方なく、幼少期から酷い虐待を受けていた。
俺が中学の時、母と母の常連客(今の義父)が結婚して一緒に暮らし始めた。
母からの虐待は止まったが、義父は俺に無関心でまともに会話したことすらない。
そして高校の時、母が俺を置いて浮気相手と蒸発した。
それからだ。義父からの虐待が始まったのは。
殴る蹴るは当たり前、ご飯をまともに食べれる日も少なく、学校だって高校からは特待生の授業料免除でがあってやっと行けるんだ。
部活なんてやれるわけない。放課後は沢山のバイトを夜までやる。
全部全部、義父のためだ。
家を出ようと玄関に手をかけると、チャイムがなった。
ドアスコープから覗くと、黒いスーツを来た金髪の男が立っていた。
玄関のドアを開けて黄百合さんを家にあげる。
黄百合さんがテーブルの横に正座をする。
俺は引き出しから封筒を取り出して黄百合さんに渡した。
足りない。足りるわけない。万も入ってないんだから。
義父が俺の頬を殴った。
勢いで後ろに飛ぶ。
義父がテーブルの上のお茶を手に取り、俺に向かって中の熱いお茶をかけた。
ぎゅっと目をつぶる…が俺の肌は熱を感じなかった。
黄百合さんが俺を庇うように立っていた。
黄百合さんは今までと変わらない笑顔のままハンカチで濡れたところを拭いている。
黄百合さんが玄関で靴を履き、俺に一礼して玄関から出た。
黄百合さんがこちらに向き直った。
今度こそ黄百合さんが去っていった。
逆らったら、だめだから。
殴られたくない、痛いことやだ。
この地獄は…いつ終わりますか?
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。