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第1話

虐待
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2022/04/11 13:21
志麻side
志麻
お義父さん…はいご飯。
義父
ん、
テーブルの上にご飯を置くと俺はお盆を持って台所に向かった。
ガシャン!
志麻
ビクッ!
義父
おい志麻ぁ…んだ?この飯は?
ふざけてんのかよ!おい!!!?
お義父さんが俺に灰皿を投げつけてきた。
志麻
ごめッ…ごめんなさいッ!
義父
ああ?ごめんなさいですんだら警察要らねえだろうがよお!!!?
義父からの容赦ない暴力に、俺は身を小さくして必死に耐えた。
義父、というのはこの人と俺は血が繋がっていない。
俺の母は風俗嬢で、俺はどこかの客との子だった。
母は俺が邪魔で仕方なく、幼少期から酷い虐待を受けていた。

俺が中学の時、母と母の常連客(今の義父)が結婚して一緒に暮らし始めた。
母からの虐待は止まったが、義父は俺に無関心でまともに会話したことすらない。

そして高校の時、母が俺を置いて浮気相手と蒸発した。

それからだ。義父からの虐待が始まったのは。

殴る蹴るは当たり前、ご飯をまともに食べれる日も少なく、学校だって高校からは特待生の授業料免除でがあってやっと行けるんだ。

部活なんてやれるわけない。放課後は沢山のバイトを夜までやる。

全部全部、義父のためだ。
義父
ったく、おい酒買ってこいよ。
志麻
お酒は、売ってもらえないよ…
義父
あ?何口答えしてんだよ、買ってこいっつってんだろ!?
志麻
いたッ…、ごめんなさいッ…ごめんなさい…ッ
義父
さっさと買ってこいよ!
志麻
で、でも…お義父さん、お金は…
義父
あ?
志麻
ビクッ!
ご、ごめんなさい…買ってきます。
家を出ようと玄関に手をかけると、チャイムがなった。
志麻
あ…
義父
誰だよ。
ドアスコープから覗くと、黒いスーツを来た金髪の男が立っていた。
志麻
黄百合さん来てる…
義父
またかよめんどくせぇな…上げろ。
志麻
はい…
玄関のドアを開けて黄百合さんを家にあげる。
志麻
こんにちは、散らかってますが…どうぞ。
センラ
ありがとうございます。
黄百合さんがテーブルの横に正座をする。
センラ
さて…月崎様。そろそろ払っていただきたいのですが。
義父
はぁ…今いくらだっけ?
センラ
はい、5400万ですね。
義父
あ〜来週来週。来週返すから。
センラ
1ヶ月前から同じ言葉をお聞きしております。
そろそろ返して頂かなければ弊社としても…
義父
わーったわーった。わかったからもう帰れって。
センラ
そういう訳には行きませんので。
少しでもお返しいただけないかと…
義父
あーはいはい。
おい志麻。もってこい。
志麻
え…でも、
義父
あ?
志麻
ビクッ!
ご、ごめんなさい…
俺は引き出しから封筒を取り出して黄百合さんに渡した。
志麻
あの…全然少ないんですけど…
センラ
拝見致します。
足りない。足りるわけない。万も入ってないんだから。
センラ
…はい、それでは残り、5399万と6000円ですね。
義父
は?お前なんでそれしか出さねぇんだよ。
志麻
だ…だってこれ以上出したら、この後の生活…
義父
うっせぇんだよ!!!!
志麻
ひッ…
義父が俺の頬を殴った。

勢いで後ろに飛ぶ。
義父
いいからさっさと金出せよ!!!!
義父がテーブルの上のお茶を手に取り、俺に向かって中の熱いお茶をかけた。
志麻
やッ…!
ぎゅっと目をつぶる…が俺の肌は熱を感じなかった。
志麻
ん…え!?
センラ
ふう…大丈夫ですか?
黄百合さんが俺を庇うように立っていた。
志麻
あ…あ…ご、ごめんなさい!ごめんなさい!
センラ
ご心配には及びません。
そんなに熱くなかったので。
志麻
ほ…ほんと、ですか?
センラ
はい。
黄百合さんは今までと変わらない笑顔のままハンカチで濡れたところを拭いている。
センラ
それではまた後日。
黄百合さんが玄関で靴を履き、俺に一礼して玄関から出た。
センラ
あ、そうそう。
黄百合さんがこちらに向き直った。
センラ
あなたは…月崎様のご子息ですか?
志麻
あ…いえ、あの人は義理の父です。なので血は繋がっていません。
センラ
やはりそうですか。
急に申し訳ありません。では。
今度こそ黄百合さんが去っていった。
義父
おい志麻。もっと時給の高いとこで働けよ。
志麻
え…はい。
逆らったら、だめだから。
殴られたくない、痛いことやだ。


この地獄は…いつ終わりますか?

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