第30話

約束の少女になれなくて[最終話]
103
2020/05/09 02:11
朝…玄関を開けてすぐ…
僕は思わずカラッとした笑い声を
あげる。
宇佐美 智十
宇佐美 智十
何?今日は…何かのサプライズ?
明 奏太
明 奏太
おおげさだろ?ただ、待ってただけだよ
宇佐美 智十
宇佐美 智十
変なの
明 奏太
明 奏太
いいの。俺は、好きな子のことは
朝迎えに行きたいタイプだし。
奏太は、いつも僕の上を行き
色々な愛情をくれる。

たまに恥ずかしくて、素直に喜べない
ことの方が多いけど…

奏太のしてくれることは、本当は
全然嫌じゃないんだ。
宇佐美 智十
宇佐美 智十
ほら、手
明 奏太
明 奏太
ん?
宇佐美 智十
宇佐美 智十
あそこの、路地に出るまでは…
誰も通らないから…そこまで////
人前で手を繋ぐとかは、恥ずかし
すぎてできないけど、奏太と手は繋ぎたい。
これは、精一杯の僕からのわがままだ。
ギュッ…
奏太の冷たい手を握った。
明 奏太
明 奏太
いつから、そんな可愛いこと
覚えたの?
奏太は、僕を横目で見ながら
ハハっと、おかしそうに笑った。
宇佐美 智十
宇佐美 智十
か、可愛くないし‼︎むしろ、キモい
ぐらいだし…
奏太は、「何だそれ?」と言いながら
歩き続ける。





宇佐美 智十
宇佐美 智十
あ、そろそろ手を離さなきゃ!
路地に出たら、たくさんの
学生や自動車が通ってるから…

名残惜しくも、手を離そうとする
僕は、手を振り払ったのだが、奏太は
ガンとして、手を離してくれない。
宇佐美 智十
宇佐美 智十
ちょ、人に見られるだろ‼︎
明 奏太
明 奏太
あのさあ…言いにくいんだけど
宇佐美 智十
宇佐美 智十
え?
明 奏太
明 奏太
もう、何人かの人かには
見られてるんだけどな?
奏太は、後ろを振り替えると
ニヤッと笑った。
宇佐美 智十
宇佐美 智十
え!?
僕も慌てて振り替えると
後ろには、サラリーマン1人に

おじいちゃん…それに中学生のカップルなど
けっこう人が歩いていて…僕はその場で
石のように固まる。
宇佐美 智十
宇佐美 智十
な、何で教えてくれなかったの?
うそ…どうしよう
奏太は、僕の頬を軽くつねると
かがみながら…
明 奏太
明 奏太
いいじゃん、堂々としてて
誇らしかったぞ
などと、子供の発表会に来た
父親みたいな言い方で、僕をからかっている。
宇佐美 智十
宇佐美 智十
僕が、恥ずかしいの‼︎
奏太は、そういう気持ちないの!?
宇佐美 智十
宇佐美 智十
人前で、いちゃつくのだけは
絶対嫌だからね!!
つい、言葉が止まらなくなって
奏太に強く当たってしまう。
そう言ってるうちにこの道を使ってる人は、
僕と奏太しかいなくなっていた。
宇佐美 智十
宇佐美 智十
奏太‼︎ごめん…僕
言いすぎた
明 奏太
明 奏太
…ああ、そうだな。
ちょっと傷ついたよ
宇佐美 智十
宇佐美 智十
そう…
明 奏太
明 奏太
でも、知十の素直な気持ち聞けて
良かったよ
宇佐美 智十
宇佐美 智十
は?
明 奏太
明 奏太
最近、すげぇデレてくれるけど
無理させて気を使わせてたら、
嫌だなって思ってたんだ。
奏太は、前を向くと
僕より先を歩き出した。
明 奏太
明 奏太
ほら、学校遅れるぞ
笑いながら、手を差し出してくる奏太。
宇佐美 智十
宇佐美 智十
ちょっとは!わがまま
奏太も言っていいからな!!
明 奏太
明 奏太
宇佐美 智十
宇佐美 智十
僕だけのこと…考えてくれるのは
嬉しいけど、僕だって奏太の事
考えたいんだから‼︎
明 奏太
明 奏太
じゃあ、遠慮無く
宇佐美 智十
宇佐美 智十
不意打ちの、振り返りの口づけは
突然すぎて…頭の中が真白になった。

でも、これが奏太なりの
僕へのわがままなら、ちょっと
嬉しくないことも、ないかもしれない。
明 奏太
明 奏太
ごちそうさま♡
宇佐美 智十
宇佐美 智十
気が済んだか?
じゃあ、行こう
奏太のニットを、引っ張り
照れながらも、僕の気持ちとは

うらはらに、口元は緩んでいた。
本当、僕は天邪鬼だ。
そういえば、冬樹はどうやら
牙崎と付き合ってるのかは、不明だけど、

明かに最近仲が良すぎて
僕の方が2人の間に居づらい時が、
あるぐらいだ…

始まったばかりだった高校生活も
今や、半年が過ぎ…最初奏太と再開した時は

「運命の相手」なんて言われて
困ってしまったけど、今では

これは、子供の時から決まっていた
事だったんじゃないかなんて思うんだ。
宇佐美 智十
宇佐美 智十
奏太、僕はお前の約束の女の子には
なれなかったけどさ…
明 奏太
明 奏太
宇佐美 智十
宇佐美 智十
奏太は、きっと最初から
僕の運命の相手だったんだなって
思ったら…ちょっと腹がいたい
明 奏太
明 奏太
智十?保健室行くか?
宇佐美 智十
宇佐美 智十
違う!おかしいって言ってるの!
笑いがこみ上げ過ぎて、ふふふ…
宇佐美 智十
宇佐美 智十
腹が、ふっ、いたたたっ
明 奏太
明 奏太
…お前さあ、本当ムカつくな
明 奏太
明 奏太
うさ晴らしに、キスさせろ
宇佐美 智十
宇佐美 智十
いや、ここ学校だから
無理!ってか、最近奏太、チューばっか
りで嫌なんだけど////
明 奏太
明 奏太
本当にイヤ?
ああ、最悪だ。なんでこんな奴が
僕の好きな人なんだろう。
宇佐美 智十
宇佐美 智十
イヤじゃない…けどさぁ
明 奏太
明 奏太
智十、好きだよ
明 奏太
明 奏太
絶対、幸せにするから
宇佐美 智十
宇佐美 智十
何それ…僕は女の子じゃないんだから、
幸せというか、花嫁にはなれないよ。
明 奏太
明 奏太
智十なら、ウエディングドレス
着ても可愛いよ。きっと
頭おかしいでしょ…
そう思いながらも、僕は奏太の事が
大好きだ…

好きの形は、けして同じとは限らない。
僕たちだって最初はそうだったように。


END

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