俺のしたことを
ようやく理解したらしく、村田は
ヘナヘタと草の中に、自分の顔を
埋めていく。
村田は、耳まで赤くして
プルプルと拳を震わせている。
何でだろうな…
俺は、べつにゲイでも何でもない。
男が好きとか、そういうことじゃなくて
ムカついたんだ。村田のくせに俺を避けたり…
何か言いたそうな顔して黙り込んで、
絶対何か隠してるコイツが。
そして、俺の中で溢れてたもんが
我慢できなくて、ついキスしちまった。
顔を上げて、空を眺める。
鳥が2羽仲良く飛んでいた。
俺が、言いたいのは…
もっと…違くて…上手く思いつかねぇ
そう言った村田の目から
涙がこぼれた。
くそっ‼︎何やってんだよ…俺は…
本当にこういう時は…いつもそうだ。
肝心なことを素直に言えない。
それで、いつも誤解されたまま
解決しないで…時間が過ぎていくんだ。
言葉って難しい…
言いたいことがあっても伝わらない
もどかしさがある。
俺は、泣いている村田をただ
強く抱きしめた。
俺の頬に触れながら、村田は
うなずく。
俺は、立ち上がろうと
膝をついた瞬間…
グイッ
村田にネクタイを掴まれ、体を
引き寄させられる。
さっきと一変して、立場が逆転した
俺たち…
さっきと違うのは、村田からじゃ
迫力と怖さは感じないってぐらいだ。
俺たちは、思っていることを
隠さず話す事にしたんだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。