第29話

弁当より大切な奴
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2020/05/09 01:00
村田 冬樹
村田 冬樹
ななななななな!!!
村田 冬樹
村田 冬樹
はあああ!?
俺のしたことを
ようやく理解したらしく、村田は
ヘナヘタと草の中に、自分の顔を
埋めていく。
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
そんなに、大したことしてないだろ?
まさか、お前…ファースト
村田 冬樹
村田 冬樹
それ以上言うな‼︎アホ崎
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
お前、そういう時は
大人しくしてろよな…口が悪いのは
可愛くねえから
村田は、耳まで赤くして
プルプルと拳を震わせている。
何でだろうな…
俺は、べつにゲイでも何でもない。

男が好きとか、そういうことじゃなくて
ムカついたんだ。村田のくせに俺を避けたり…
何か言いたそうな顔して黙り込んで、
絶対何か隠してるコイツが。

そして、俺の中で溢れてたもんが
我慢できなくて、ついキスしちまった。
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
心配してたのは、弁当のことだった…
村田 冬樹
村田 冬樹
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
そう、思ってた。
村田 冬樹
村田 冬樹
えっ?
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
初めて、村田が俺に弁当作ってくれ
るって言ってくれた日…俺は、正直面倒くさい奴に絡まれたと思った。
村田 冬樹
村田 冬樹
面倒くさい奴って…
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
大抵の奴は、俺の外見だけで判断して
近づかないけど、お前は違ったから…
村田 冬樹
村田 冬樹
・・・
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
でも、そんな毎日が
明日から続かないんだっておもった時
ようやく、俺が大切だったのは…
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
お前が作った弁当じゃなくて…
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
お前が、俺に作ってくれるって
事だった。
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
今更だと思う、弁当が…違う、
村田が俺を避けるまで、お前が
俺にとって大事な奴になってたなんて
気付かなかったんだからな…
顔を上げて、空を眺める。
鳥が2羽仲良く飛んでいた。
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
俺は…村田のことさ…
特別だと思ってる…
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
友達・・だから…
俺が、言いたいのは…
もっと…違くて…上手く思いつかねぇ
村田 冬樹
村田 冬樹
友達…
村田 冬樹
村田 冬樹
俺も、友達やし
牙崎のことは、特別やで
そう言った村田の目から
涙がこぼれた。
村田 冬樹
村田 冬樹
じゃあ、特別で友達で大切なら…
お前は、誰にでもキスするん?
村田 冬樹
村田 冬樹
俺じゃなくても、いつか…また
新しい特別な友達ができたら…
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
違う‼︎そうじゃない
くそっ‼︎何やってんだよ…俺は…

本当にこういう時は…いつもそうだ。

肝心なことを素直に言えない。

それで、いつも誤解されたまま
解決しないで…時間が過ぎていくんだ。
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
村田‼︎
村田 冬樹
村田 冬樹
何や!何が違うんや!?
村田 冬樹
村田 冬樹
言葉って難しい…
言いたいことがあっても伝わらない
もどかしさがある。

俺は、泣いている村田をただ
強く抱きしめた。
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
俺、下手だから…
村田 冬樹
村田 冬樹
何がや…
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
いつも、うまく相手に
気持ちを伝えられない…
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
今だって、俺は
お前を泣かせちまってる。
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
そうじゃないんだ、俺が言いたい事は
村田 冬樹
村田 冬樹
牙崎…お前も俺と同じやな
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
村田 冬樹
村田 冬樹
言いたいことなんて、素直に
言えるわけないよな…
俺の頬に触れながら、村田は
うなずく。
村田 冬樹
村田 冬樹
焦らせて、すまん。
ちゃんと聞くから、な?
村田 冬樹
村田 冬樹
だから、最後まで俺に伝えて
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
むらた…
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
………………今度じゃ、ダメか?
俺は、立ち上がろうと
膝をついた瞬間…

グイッ
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
でっ!
村田にネクタイを掴まれ、体を
引き寄させられる。
村田 冬樹
村田 冬樹
今度は、俺がお前の話を聞く番や。
ほな、怒らへんからちゃんと言えや
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
💢
牙崎 龍雅
牙崎 龍雅
お前、調子に乗るなよ…
村田 冬樹
村田 冬樹
お前もな…💢
さっきと一変して、立場が逆転した
俺たち…

さっきと違うのは、村田からじゃ
迫力と怖さは感じないってぐらいだ。

俺たちは、思っていることを
隠さず話す事にしたんだ。

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