ニュースでも取り上げられるような大事故。
飲酒運転の大型トラックが信号無視をし衝突。
トラックの運転手は一命を取り留めたみたい。
事故現場に行ってからの記憶は私には無い。
気づけばお葬式もお通夜も終え、私は2人で暮らしていたアパートに戻っていた。
成人式。
久しぶりに色んな人と会えて幸せだった私の人生は一気にどん底へ落ちた。
何もする気にもなれなくて毎日写真を見ては泣いての繰返し。
戻りたい
"幸せだった頃に戻りたい"
目を瞑り遺影の前でそう呟いた
はずだった。
目を開けると実家のダイニングテーブルに座っていた。
お母さん「ほら、ちゃっちゃと食べちゃって」
目の前には朝ごはんが並べられている。
お母さん「今日は入学式なんだからピシャッとしなさいよ?」
……
あなた「入学式…?」
お母さん「いつまでも中学生じゃないんだからね!」
急いで自分の部屋に行くと充電しているスマホが目に入った。
私が高校の時使っていたスマホだ。
ふと姿見を見ると烏野高校の制服を着ている自分が写る。
この姿は……5年前の私だ。
でも、どうして……
これは夢なんだろうか。
ほっぺをつねると痛みを感じる。
我ながら古典的だとは思うけど他に方法は分からないし。
どうしよう。また3年間みんなと過ごせるのは嬉しいけど
あ…過去に戻ったのは、私がさっき戻りたいって思ったから?
5年前に戻ったのも私たちが出会った年だから?
んん、考えても正解は分からないし
とりあえず入学式…って違う。
会いに行かなきゃ、1番会いたい人の所へ行かなきゃ。
あなた「確かこの辺に…」
机の引き出しに隠すように入れていたお小遣い。
中学時代にコツコツと貯めていたからかなり貯まっていたはず。
財布にお金をつっこみ私は学校ではなく駅へ向かった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。