第7話

5,156
2020/09/13 04:56
川村壱馬
川村壱馬
じゃあ、俺らについて説明するね
川村壱馬
川村壱馬
まずね、俺ら"RAMPAGE"のメンバーなんだけど……。さすがにそれは知ってるよね?
らんぺーじ?
倉木(なまえ)
倉木あなた
なにそれ
藤原樹
藤原樹
ふざけんなよ
川村壱馬
川村壱馬
RAMPAGEは暴走族だよ、あなたちゃん
……は?


ちょっと待て?
倉木(なまえ)
倉木あなた
暴走族って……バイクに乗って旗を持ってる……
川村壱馬
川村壱馬
そうそう、イメージはそんな感じ
……嘘でしょ。


樹たち、ただのヤンキーじゃないの?


ヤンキーでさえイヤなのに。


暴走族、だなんて……。
倉木(なまえ)
倉木あなた
私、嫌いなんだけど。暴走族
川村壱馬
川村壱馬
俺ら、正統派だよ?
倉木(なまえ)
倉木あなた
暴走族に正統とかあるわけないじゃん
川村壱馬
川村壱馬
……正統派じゃない奴は、薬とか、犯罪に手を染める。俺らはしない
ほんとに……?


ほんとにそう?


関係ない人を巻き込んで、死なせても?


お母さんの場合は、ただのヤンキーだった。


そうだよ。


ただのヤンキーのケンカに巻き込まれたんだ。


じゃあ暴走族なんて、もっと危険な奴らじゃないか。


けど、それはあくまで私の意見で、正統派の暴走族の実体なんてわからない。ただ、理解したくもない。


だから、
倉木(なまえ)
倉木あなた
ま、いいや。続き、教えてよ
ここは早く終わらせることが先決。
川村壱馬
川村壱馬
で、暴走族には役職があってね?その中でトップなのが総長なんだけど、それが、樹
川村壱馬
川村壱馬
で、その次の副総長が、俺
川村壱馬
川村壱馬
で、その次が幹部の北人、慎、翔平。この5人が中心になって作られてる暴走族が、RAMPAGEだよ
倉木(なまえ)
倉木あなた
つまり、あなたたち5人はお偉いさんなわけ
藤原樹
藤原樹
そういう事だ
樹が満足そうな口調で言う。
倉木(なまえ)
倉木あなた
……で?
藤原樹
藤原樹
は?
倉木(なまえ)
倉木あなた
で?って聞いたの。だから私に何をしてほしいの?何を望んでるの?何かあるからここに連れ込んで説明してるんじゃないの?
じゃなきゃ、樹たちにとって神聖?な場所であるここに入れないでしょ?
長谷川慎
長谷川慎
……なるほど。これが樹の気に入る女か
倉木(なまえ)
倉木あなた
まぁ、ぜぇぇぇったいに関わらないけど!てか、話はおわったの?なら帰して!!
よりによって、なんで嫌いなヤンキーと関わらなきゃいけないの。


お母さんはヤンキーのせいで死んだのに……。
川村壱馬
川村壱馬
あなたちゃん、続き説明していい?
……はぁ、もう勝手にすれば。


たぶん私がイヤって言っても無駄だろうし、外に出たらリンチだし、どうすることもできない。


私が何も言わないのを肯定と受け取ったのか、壱馬は口角を上げた。
川村壱馬
川村壱馬
じゃあ続き説明するね?
……にこやかに言ってるけど、どうせ計算のうちだと思ってるんでしょ。
川村壱馬
川村壱馬
さっきあなたちゃん。自分にどうしてほしいかって聞いたよね?
私は頷く。
川村壱馬
川村壱馬
率直に言うと、俺たちと……
藤原樹
藤原樹
つまりRAMPAGEに入れ……ということだ
倉木(なまえ)
倉木あなた
……何、言ってんの?
RAMPAGEに入れ?


は?


は?


は?
倉木(なまえ)
倉木あなた
私にもついに空耳が……
浦川翔平
浦川翔平
ちげぇよ!!
浦川翔平
浦川翔平
俺だって、樹からの提案じゃなきゃお前を入れることに納得してねぇよ。けどどうしてもって言うなら……
倉木(なまえ)
倉木あなた
言ってないよ!むしろイヤだよ、お断りだよ、翔平の頭は何でできてるわけ?
浦川翔平
浦川翔平
お前の事じゃねぇよ!樹がどうしてもって言うならって話だよ、勘違いしてやんの!バーカバーカ、バカあなた!
はぁ!?


何コイツ!


翔平のくせに!!
長谷川慎
長谷川慎
うっせぇよ。女がキィキィ騒ぐな。目障り、消えろ
倉木(なまえ)
倉木あなた
はぁ……
で、なんの話だっけ。


RAMPAGEに入れ……だっけ。
藤原樹
藤原樹
お前に拒否権ねぇから
何それ!?


ってか何様なわけ!?
藤原樹
藤原樹
樹様
ムカムカぁ!!


自分で言わないでしょ!?


ていうか……。
倉木(なまえ)
倉木あなた
なんで私が考えてること……
藤原樹
藤原樹
お前単純なんだよ。つまり、天然と書いてバカと読む。そんなイメージだ
倉木(なまえ)
倉木あなた
はぁ!?単純でも天然でもバカでもないんですけど?私、特待生ですけど?
そう、私は母親が死んで、お金が本当に足りなくなって転校してしたのだ。


学費免除の特待生として受け入れてくれるところに。


だから私はバカではない!!
藤原樹
藤原樹
勉強ができる、できないの話じゃねぇよ。性格の話をしてんだよ。お前、バカだろ
倉木(なまえ)
倉木あなた
はぁ?だからバカじゃないって言ってるの
藤原樹
藤原樹
学力とかそういうのは比例しねぇんだよ。お前すぐ騙されそうだし
倉木(なまえ)
倉木あなた
バカバカって、失礼すぎる!とにかく、私は暴走族なんかに入らないからね!
藤原樹
藤原樹
拒否権ねぇっつったろ
倉木(なまえ)
倉木あなた
あるよ!!てか、なんで女の私が入らなきゃいけないわけ?私、ケンカなんてできないけど!
私が言うと、へ?みたいな顔で見られる。


な、何?


その瞬間、バシンッと背中を勢いよく叩かれた。
倉木(なまえ)
倉木あなた
いたっ
そしたら次は、
倉木(なまえ)
倉木あなた
ぐえっ
頭を思いっきり上から押し付けられ、グリグリと撫でられる。
倉木(なまえ)
倉木あなた
何すんの、翔平、北人!
吉野北人
吉野北人
いやいや、だってさ?姫なのに戦うって……
今度は笑って私の紙をわしゃわしゃしてくる北人……って、おい!


髪ぐちゃぐちゃになるし!


ヤンキーなんぞに馴れ馴れしくされたくないんだけど!
藤原樹
藤原樹
壱馬……さっさと説明してやれ
川村壱馬
川村壱馬
いやいや、したくても樹があなたちゃんとじゃれはじめたからでしょ?
川村壱馬
川村壱馬
あのね、あなたちゃんには姫になって欲しいんだけど
倉木(なまえ)
倉木あなた
姫ぇ?
何その残念なまでに私に合わない存在は。
藤原樹
藤原樹
確かにお前は姫じゃねぇな……。ゴリラとか
倉木(なまえ)
倉木あなた
え、なんか言った?樹
藤原樹
藤原樹
言った。ゴリラって言った
倉木(なまえ)
倉木あなた
はぁ!?
ありえない!!


人のことゴリラとか!!


健全な女子高生に言う言葉じゃないよ?
川村壱馬
川村壱馬
樹、話しそらさないで
川村壱馬
川村壱馬
姫について説明するね?
長谷川慎
長谷川慎
姫の役割を聞いたとたんに、入るとか言い出すんじゃね?女ってそんなもんだし
倉木(なまえ)
倉木あなた
何、私にケンカ売ってんの?
長谷川慎
長谷川慎
別に。たいして可愛くもないのに、なんでそんなに上から目線なわけ?
顔は関係なくない?


てか、上から目線なのはそっちもでしょ!!
吉野北人
吉野北人
ん〜、まぁ確かに俺が遊んでた子達と比べると見劣りするなぁ……。顔面偏差値は、60ってところ?
別にいいけど!!


そんな軽い人達と一緒にされないだけマシ。


しかも顔面偏差値って何。


60って高いと捉えることもできるけど。


北人が遊んでた人たちって、相当可愛い子たちばかりだろうし……。


けど、顔面に偏差値をつけられるとか屈辱なんだけど。
長谷川慎
長谷川慎
お前、そんなんで姫になりたい、とか。ありえないんだけど。
慎も話を聞いてないな。


私、ひと言もそんなこと言ってないんですけど!?
川村壱馬
川村壱馬
とりあえず、総長命令みたいだから。ちゃっちゃと姫の説明しちゃうよ
川村壱馬
川村壱馬
姫って言うのはね、言葉通り俺らのお姫様なわけ
倉木(なまえ)
倉木あなた
お姫様ぁ?
川村壱馬
川村壱馬
そう。お姫様。お姫様の役割は2つ。1つは、俺らに守られること。2つは、俺らの活力になること
もはや役割じゃないんじゃ……。


だってそうでしょ。


守られる、とか。


こっちの意思は関係ないし。


活力になるなんて。


そんなの個人それぞれの問題でしょ。
川村壱馬
川村壱馬
お姫様は、本当に大事な役割なんだよ。……ま、この2つの役割を果たすために、先代の総長達はみんな自分の彼女を姫にしてたみたいだけど
自分の彼女だったら守りたいとも思うし、それと同時に活力にもなるってことか……。


ん?それなら……。
倉木(なまえ)
倉木あなた
私、全く関係ないよね?
川村壱馬
川村壱馬
樹の彼女になれるって言っても、姫になりたくない?
倉木(なまえ)
倉木あなた
……ふざけてる?
川村壱馬
川村壱馬
ふざけてないよ
倉木(なまえ)
倉木あなた
そんなの、頼まれたってなりたくないよ!
藤原樹
藤原樹
……拒否権ねぇから
そのセリフ何回言うの?


最近少女マンガとかに出てくる壁ドンとか、拒否権ねぇからとか、お前は俺のもんだとか。


犯罪だからね!?
倉木(なまえ)
倉木あなた
私は、暴走族とは関わらない。そもそもなんでこんなことになったんだろ……
川村壱馬
川村壱馬
仕方ないよ、諦めて、あなたちゃん。総長の言うことは絶対なんだから
倉木(なまえ)
倉木あなた
それは君たちのルールでしょ?
私、本当に関係ないし。


そもそもなんで私なの。
藤原樹
藤原樹
俺らに、きゃーきゃー言わないから
樹がそう言うと、そうだそうだというかのように、みんな愚痴りはじめた。
浦川翔平
浦川翔平
だって俺らが暴走族だからってきゃーきゃー言うんだぜ?めんどくせぇよ!!
吉野北人
吉野北人
ん〜、女の子は好きだけど、くっつかれてうるさいのはイヤかなぁー?
長谷川慎
長谷川慎
女、うざいし
藤原樹
藤原樹
結局、俺らの地位と顔しか見てねぇじゃん。でもあなたは違う
私はちがうって。


そんなの、今日会ったばかりで分からないじゃん。
倉木(なまえ)
倉木あなた
バカじゃないの?
藤原樹
藤原樹
どういう意味だ、あなた
倉木(なまえ)
倉木あなた
そのまんまの意味
倉木(なまえ)
倉木あなた
地位とか、顔とか。そういう理由で好きになられるのがイヤって、自分たちで暴走族を否定してない?
倉木(なまえ)
倉木あなた
怖がられるのもイヤ。好かれるのもイヤ。そんな偏見を持たれたくないとか、なんか正論っぽく言ってるけど、それ、全部言い訳だから
長谷川慎
長谷川慎
黙ってればお前、好き放題いいやがって……
川村壱馬
川村壱馬
うるさい、慎。今は、聞こうよ。あなたちゃんの話
倉木(なまえ)
倉木あなた
私は暴走族のことは知らないけど、今幹部ってことは、どうせ下っ端時代があったんだから知ってるでしょう。幹部になるとどんな扱いを受けるかってことぐらい
倉木(なまえ)
倉木あなた
全てを覚悟で暴走族やってるんでしょ!?イヤならやめちゃえばいいじゃない…!!
シーン……。


そう、そんな表現がまさにぴったりな静けさ。


……って、やっちまった。
倉木(なまえ)
倉木あなた
あ、えっと……まぁ、そういうことだからさ……
倉木(なまえ)
倉木あなた
とにかく、姫には……
長谷川慎
長谷川慎
いいんじゃね?
姫にはならない。そう言おうとしたのを遮ったのは、慎だった。
長谷川慎
長谷川慎
コイツ、姫でいいんじゃね?
慎が私を見てフッと微笑む。


いや、微笑んでなんかいない。


皮肉を込めた、笑い方だ。
倉木(なまえ)
倉木あなた
いや、私は……
浦川翔平
浦川翔平
慎もいいって言うなんて、これから先、絶対ないよな!!やっぱり、お前で決まりだな!!
慎に続いて、翔平まで私を遮る。
倉木(なまえ)
倉木あなた
いや、だから私は……
藤原樹
藤原樹
決定だな
……またしても、私の言葉を遮る樹。


けど本当に、暴走族なんかの仲間になるほど落ちぶれてはいないの。
倉木(なまえ)
倉木あなた
絶対ならないから
ここにいるのも、私がこれからバイト三昧な毎日になっちゃうのも、全部全部……。


ヤンキーのせいなんだから。
川村壱馬
川村壱馬
はぁ……もう諦めようよ、さすがに無理な勧誘はあなたちゃんに迷惑だからさ
藤原樹
藤原樹
チッ……
浦川翔平
浦川翔平
壱馬!なんであなた側につくんだよ!?総長の樹が言ってる事だし、無理な勧誘じゃなくて、無駄な抵抗をさせないことが大事なんじゃねぇの!?
おい翔平。


なんて物騒なこと言ってるんだ?


しかも、無駄な抵抗って……。


キミたちの嫌いそうな警察の決まり文句じゃん……。
川村壱馬
川村壱馬
いいんだよ、女の子には優しくね?
川村壱馬
川村壱馬
そのかわり、まぁ……友達程度にはなってくれるかな?
そう言って首をかしげるから、
倉木(なまえ)
倉木あなた
まぁ友達なら……
そう答えてしまった。


その瞬間、壱馬がわずかにだけど、ニヤッと微笑んだ気がした。


……とても妖しく。
倉木(なまえ)
倉木あなた
な、何……?
川村壱馬
川村壱馬
あなたちゃん、友達からの恋人っていうのがアリなように、友達からの姫もアリだよね?
はい!?


諦めたんじゃないの!?
吉野北人
吉野北人
あなたチャーン、本当に断らないほうがいいよ?俺たちの姫になれるなんて、こんな栄誉なことはないよ?
倉木(なまえ)
倉木あなた
ぶっちゃけ、RAMPAGEっていう暴走族の、何がすごいのかわからないんだよね
めっちゃケンカ強いとか?


実はメンバーの親が大金持ちで、何かしたら相手の親の首が飛ぶとか……?
倉木(なまえ)
倉木あなた
全国、何番目に強いとか!
藤原樹
藤原樹
プッ……
藤原樹
藤原樹
アハハハハハハッ!!クククククッ!!全国って……!!クソ……ッ
浦川翔平
浦川翔平
あなたっ!!お前、めっちゃ乙女だな!!
2人が大笑い。


壱馬はため息をついてるし、北人はなぜか微笑ましそうにこっちを見てるし、慎は睨みつけてるし。


え、なんか変なこと言った?


っていうか、樹ってこんなにガッツリ笑うんだ……ブスっとしてばっかりだったから意外。
浦川翔平
浦川翔平
お〜お〜?あなた、お前って本当に面白いな!!
川村壱馬
川村壱馬
あなたちゃん、暴走族ってなんやかんやでチーム同士で抗争とかしないからね?
倉木(なまえ)
倉木あなた
そ、そうなの……?
長谷川慎
長谷川慎
世間が美化しすぎなんだよ。闘う男がかっこいいって言う妄想だろ。キモっ
川村壱馬
川村壱馬
まぁゼロじゃないけどね?どちらかというと、学校対抗の方が多いかなぁ〜
学校対抗!?


それって、学校全体で闘うってこと?


巻き込まれるじゃん、一般生徒!!
藤原樹
藤原樹
この学校に入った時点で、もれなく一般人じゃなくなるんだよ
んなわけあるか!


じゃあ何!?


私はもう一般人じゃないっていうの?
藤原樹
藤原樹
当たり前だろ、お前はRAMPAGEの姫だから
倉木(なまえ)
倉木あなた
だか、ならないって言ってるでしょうが!!
もうっ!!


私だって忙しいんだからね。


これからバイトして、生活費を稼がなくてはならない。
倉木(なまえ)
倉木あなた
私は、普通の高校生なの!!
浦川翔平
浦川翔平
さすがにそれは知ってるぞ
長谷川慎
長谷川慎
お前が一般人だろ〜とそうじゃなかろうと俺たちは知ったこっちゃないね
倉木(なまえ)
倉木あなた
とにかく!授業がはじまって人がいなくなったし、ここから出ても大丈夫そうだから失礼するね!!
川村壱馬
川村壱馬
じゃあまた会おうね、あなたちゃん
浦川翔平
浦川翔平
あなたまったなー!
吉野北人
吉野北人
あなたチャンなら、いつでも歓迎だよ?
長谷川慎
長谷川慎
あんまり来んじゃねぇぞ
藤原樹
藤原樹
いつでも来い、あなた
なんやかんやで、二度と来るなとは言わない慎に対して、自信家なのか俺様なのか総長だからなのか、上から目線で微笑む樹。


正直、またはあるかわからないけど、でも……。
倉木(なまえ)
倉木あなた
ばいばい
まぁそこらへんのヤンキーよりは、いいんじゃない。


なんて、素直になれない私がいた。

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