らんぺーじ?
……は?
ちょっと待て?
……嘘でしょ。
樹たち、ただのヤンキーじゃないの?
ヤンキーでさえイヤなのに。
暴走族、だなんて……。
ほんとに……?
ほんとにそう?
関係ない人を巻き込んで、死なせても?
お母さんの場合は、ただのヤンキーだった。
そうだよ。
ただのヤンキーのケンカに巻き込まれたんだ。
じゃあ暴走族なんて、もっと危険な奴らじゃないか。
けど、それはあくまで私の意見で、正統派の暴走族の実体なんてわからない。ただ、理解したくもない。
だから、
ここは早く終わらせることが先決。
樹が満足そうな口調で言う。
じゃなきゃ、樹たちにとって神聖?な場所であるここに入れないでしょ?
よりによって、なんで嫌いなヤンキーと関わらなきゃいけないの。
お母さんはヤンキーのせいで死んだのに……。
……はぁ、もう勝手にすれば。
たぶん私がイヤって言っても無駄だろうし、外に出たらリンチだし、どうすることもできない。
私が何も言わないのを肯定と受け取ったのか、壱馬は口角を上げた。
……にこやかに言ってるけど、どうせ計算のうちだと思ってるんでしょ。
私は頷く。
RAMPAGEに入れ?
は?
は?
は?
はぁ!?
何コイツ!
翔平のくせに!!
で、なんの話だっけ。
RAMPAGEに入れ……だっけ。
何それ!?
ってか何様なわけ!?
ムカムカぁ!!
自分で言わないでしょ!?
ていうか……。
そう、私は母親が死んで、お金が本当に足りなくなって転校してしたのだ。
学費免除の特待生として受け入れてくれるところに。
だから私はバカではない!!
私が言うと、へ?みたいな顔で見られる。
な、何?
その瞬間、バシンッと背中を勢いよく叩かれた。
そしたら次は、
頭を思いっきり上から押し付けられ、グリグリと撫でられる。
今度は笑って私の紙をわしゃわしゃしてくる北人……って、おい!
髪ぐちゃぐちゃになるし!
ヤンキーなんぞに馴れ馴れしくされたくないんだけど!
何その残念なまでに私に合わない存在は。
ありえない!!
人のことゴリラとか!!
健全な女子高生に言う言葉じゃないよ?
顔は関係なくない?
てか、上から目線なのはそっちもでしょ!!
別にいいけど!!
そんな軽い人達と一緒にされないだけマシ。
しかも顔面偏差値って何。
60って高いと捉えることもできるけど。
北人が遊んでた人たちって、相当可愛い子たちばかりだろうし……。
けど、顔面に偏差値をつけられるとか屈辱なんだけど。
慎も話を聞いてないな。
私、ひと言もそんなこと言ってないんですけど!?
もはや役割じゃないんじゃ……。
だってそうでしょ。
守られる、とか。
こっちの意思は関係ないし。
活力になるなんて。
そんなの個人それぞれの問題でしょ。
自分の彼女だったら守りたいとも思うし、それと同時に活力にもなるってことか……。
ん?それなら……。
そのセリフ何回言うの?
最近少女マンガとかに出てくる壁ドンとか、拒否権ねぇからとか、お前は俺のもんだとか。
犯罪だからね!?
私、本当に関係ないし。
そもそもなんで私なの。
樹がそう言うと、そうだそうだというかのように、みんな愚痴りはじめた。
私はちがうって。
そんなの、今日会ったばかりで分からないじゃん。
シーン……。
そう、そんな表現がまさにぴったりな静けさ。
……って、やっちまった。
姫にはならない。そう言おうとしたのを遮ったのは、慎だった。
慎が私を見てフッと微笑む。
いや、微笑んでなんかいない。
皮肉を込めた、笑い方だ。
慎に続いて、翔平まで私を遮る。
……またしても、私の言葉を遮る樹。
けど本当に、暴走族なんかの仲間になるほど落ちぶれてはいないの。
ここにいるのも、私がこれからバイト三昧な毎日になっちゃうのも、全部全部……。
ヤンキーのせいなんだから。
おい翔平。
なんて物騒なこと言ってるんだ?
しかも、無駄な抵抗って……。
キミたちの嫌いそうな警察の決まり文句じゃん……。
そう言って首をかしげるから、
そう答えてしまった。
その瞬間、壱馬がわずかにだけど、ニヤッと微笑んだ気がした。
……とても妖しく。
はい!?
諦めたんじゃないの!?
めっちゃケンカ強いとか?
実はメンバーの親が大金持ちで、何かしたら相手の親の首が飛ぶとか……?
2人が大笑い。
壱馬はため息をついてるし、北人はなぜか微笑ましそうにこっちを見てるし、慎は睨みつけてるし。
え、なんか変なこと言った?
っていうか、樹ってこんなにガッツリ笑うんだ……ブスっとしてばっかりだったから意外。
学校対抗!?
それって、学校全体で闘うってこと?
巻き込まれるじゃん、一般生徒!!
んなわけあるか!
じゃあ何!?
私はもう一般人じゃないっていうの?
もうっ!!
私だって忙しいんだからね。
これからバイトして、生活費を稼がなくてはならない。
なんやかんやで、二度と来るなとは言わない慎に対して、自信家なのか俺様なのか総長だからなのか、上から目線で微笑む樹。
正直、またはあるかわからないけど、でも……。
まぁそこらへんのヤンキーよりは、いいんじゃない。
なんて、素直になれない私がいた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!