第3話

みつめあう。
3,928
2018/01/18 10:12
大嫌いな英語の授業。先生の言葉一つ一つが私にとっては子守り歌だ。

若干睡魔におそわれ、首をかくかくさせる私をみた沙織は小さな声で言った。
沙織
山田くんが見てるよっ!
あなた

へぇっ!?

沙織の言葉に驚いた私は思わず飛び起きた。
あいにく先生にはバレなかったが、沙織の言った通り遠くの席から涼介がこちらをちらちらと見ていた。

ふと目が合うと、涼介はすぐにそっぽを向いてしまった。

どうしたんだろう。
また何か忘れてしまったのかな?
沙織
よかったね、あなた!
あなた

えっ!な、なんで?

沙織の言葉の意味がよく分からない私は、首をかしげてみせた。
そんな私を見てクスクスと沙織は笑いをがんばってこらえている。

あなた

??

どうやら英語の授業は後半ほとんど眠っていたらしく、気がついたらお昼休みの時間になっていた。
山田涼介
山田涼介
ねぇあなた
あなた

――えっ、何!?

今日はいつも通り沙織と一緒にお昼を過ごす予定だった。
山田涼介
山田涼介
昼一緒に食べない?
あなた

えっ?で、でも……

学校でも世間でもアイドルな涼介とお昼を過ごすのは中学校以来だ。

いつも涼介は一緒に行動しているグループの男子達とお昼も一緒に過ごすみたいだけれど、どうやら今日は気が変わったらしかった。

正直嬉しかった。アイドル…しかも好きな人となんて、夢みたいだから。


私は親友の方へ目を向ける。沙織はいつもの優しい笑顔で「行ってきなよ」と私の肩を叩いた。
あなた

え、でも……。

沙織
その代わり……お願いね?
沙織のお願いというのは、きっと2人きりの時の“報告”。
あなた

……うん、わかった! ありがとう、沙織

山田涼介
山田涼介
?? まぁいいや、じゃあ行こ!
そう言って、涼介は私の腕を掴んだ。
その笑顔は小学生の時と同じ、無邪気で純粋な彼らしい笑顔だった。
あなた

う、うん……!

涼介に引っ張られ私たちは教室をあとにした。


“誰か”が見ているとも知らずに。

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