社の前に座る三人の手にはラムネの瓶。
マヨイとゆづるの間に大人しく座るオオガ。先程まで死闘を繰り広げていたとは思えないほど、和やかな空気が流れていた。
三人で一緒にラムネのビー玉をかこんと押した。
少し温くなったラムネはしゅわっと泡が勢いよく溢れだし、三人は慌てて口をつけて飲んでいく。
しゅわしゅわとした清涼感溢れる甘みが口の中に広がる。
久々に感じる喉の潤いに、ゆづるとマヨイは迷うことなく喉を鳴らして飲み進めた。
その様子をオオガは困った顔で見つめていた。
オオガを挟み、ゆづるとマヨイは顔を見合わせ微笑みあった。
オオガは呆れたようにため息をつきながら、ラムネをぐいっと飲み干した。
空の瓶を夕日に掲げ、中で転がるビー玉を切なそうな瞳で眺めている。
オオガは瓶を自分の横に置き、後ろ手に体重をかけながら空を見あげる。
体を元に戻しオオガは笑う。
その表情はまるで憑きものが落ちたかのように爽やかなものだった。
全員がラムネを飲み干したとき、急に周囲が暗くなり始めた。
太陽に雲でもかかっているのかとゆづるとマヨイは顔をあげる。
マヨイとゆづるは空を見て驚いた。
これまでずっとこの世界の空を真っ赤に染めていた日が傾き、夜になりかけているではないか。
オオガは二人の背中を押しやり、無理矢理社から離れさせた。
驚くマヨイたちを追い払うように彼はしっしと手を動かす。
呆れながら二人を見つめるオオガの目にはもう敵意はなかった。
腹を括ったように立ちあがり、社の前で両手を広げる。
オオガの言葉に二人は目を見開いた。
そうしている間にも、少しずつ日は山の向こうへと落ちていく。
オオガはにっと笑い、ラムネの蓋を開けるとそこからビー玉を三つ取り出した。
それぞれゆづるとマヨイにビー玉を投げ渡す。
少し青みがかったガラス玉はとても綺麗に輝いていた。
オオガはにこりと笑って、手を振った。
呆れたように笑いながら、もう一度オオガは手を払った。
動こうとしないゆづるの手をマヨイはもう一度強く引いた。
オオガを見るマヨイ。
彼らは視線だけで何かを語り合い、そして何かが通じ合ったように深く頷いた。
そうして二人は手を取り合い、急いで階段を駆け下りていった。
タイムリミットはもう間もなく。二人は村の端の神社から、急いで反対方向のトンネルへと向かう。
オオガは誰も居なくなった神社で、晴れやかな表情で空を見あげた。
オオガの頭上に影が落ちる。
彼は全てを悟ったようにその影を見た。そこには彼を取り囲むように大量のオニが立っていた。
異界に夜がやってくる。
寂しがりやの神様が作り出した小さな世界はもう間もなく閉じようとしていた。
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!