仁菜と二人の帰り道。
いくつか他愛ない話をした後、仁菜が問う。
つい、足が止まる。
仁菜も止まって、僕の前にまわり込んで顔を見上げてきた。
鋭い……。でも、今はまだ言うわけにはいかない。
微笑んでみせると、仁菜の表情はかえって暗くなった。
え……?安心してくれると思ったのに。
仁菜が打ち明ける相手としてダメなんじゃなくて、言ったらバレちゃうから……。
そう言ったら今度は何がバレるのかってなりそう。これ以上は言えない。
寂しそうな声だった。
そんな顔をさせたいわけじゃないのに。考えても考えても、理由を話さずに君の誤解を解く方法が思いつかない。
でも、今の僕で全部話したら、待っているのは玉砕だけだ。
なんとか君を笑顔にしたくて、母さんの力を借りようと思ったけれど。
そのせいで、作り物の笑顔をさせてしまった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。