第5話

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2024/06/11 09:29


ないこ
ないこ
ただいま...


小さな帰りを知らせる声がリビングに響く。


しかし当たり前のように「おかえり」と笑顔で迎えてくれる顔は出てくる気配を示さない。











上着をクローゼットにしまう。


電気は消えていたがシャワーに入っている様子も無い。






寝室だろうか。
 




ないこ
ないこ
(取り敢えず歯磨いて風呂入ろ...)











幾分かスッキリした頭でタオルをかけて脱衣所を出る。





時刻は午後11時。

普段のあなたの下の名前なら2時くらいに帰ってくることが多いから大分早い帰りだっただろう。

一緒に帰れなくて残念....





ないこ
ないこ
あなたの下の名前~...







布団をめくる。

しかしそこにいつもの寝顔は無かった。





ないこ
ないこ
......あなたの下の名前...?







あなた
撒いたか.....




月が綺麗な夜。



いつも通りお客さん達に夢を与えた後、ロッカーの前でネクタイを解きながらため息を着く。







表情筋のやたら浪費する仕事だから。




あなた
お疲れ様でーす...




モブ
おつかれー
     









夜の冷えた空気が肌に刺さる。


繁華街をさっさと出ようと足を早めた時。




ないこ
ないこ
そういうの興味無いんで。





あなた












キャッチかよ。きっしょ。





しかもよく見るとアイツうちで働いてる奴じゃん。





モブ
いやいやそうとは言わずに!







ないこ
ないこ
ホント、!ホントにそういうのいいんで!






後ろに数名隠れているのが目に付いた。





そして2人を守らんとするないこはこんなの見た事無かったらしく、目が少し涙でうるんでいるように見えた。






あなた
お前らなにしてんの?





別に俺は優しくない。



気分。ただそれだけ。



それだけで声をかけた。






それなのにまるで救世主が来たかのように明るくなるないこ。更には一緒に帰ろうだなんて。








どうせあれだろ?



お前らもキャバとか行く予定だったんだろ?





伸ばしたアイツの白い手を振り払った。





呆然とする顔を見ないように、闇に紛れた。




やたら1人では広いベッド。



「帰る」と言った筈なのにあなたの下の名前はどこにも居ない。まさか彼女とか居るのかな。俺に飽きたからかな。






そうやって嫌な想像をしては目が涙でいっぱいになる。




ないこ
ないこ
.....(ゴシゴシ




誰にも聞かれてない筈なのに1人で声を抑えて泣く。








ないこ
ないこ
(俺のどこがダメなんだろ...)





あなたの下の名前の為ならなんでもするのに。





少し離れて駅前。



トイレに入って鍵をかけるとスマホを取り出した。







小さな犬のチャームが揺れる。







迷いもなくあるひとつの番号に電話をかける。



数回コール音が鳴った後、出てくれた。






あなた
もしもし、俺だけど



??
何、オレオレ詐欺?
 



あなた
バカちげぇよ
あなたの名字あなたの下の名前だわ




??
そっかwww
ところで何?こんな夜更けに





あなた
.....泊めてくれん?
ちょっと家に帰れない。




??
え?いいけど......
彼氏さんいるんじゃないの?





あなた
......諸事情




??
んーまぁいいよ。
夜遅いし寝たいから早くしてよね?







あなた
はいはい...
 

??
てか絶対お酒入ってるよね?
お風呂はいる?




あなた
うん、宜しく 
じゃあ電車乗るから。




??
はーい

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