第3話

イキテイク
93
2023/12/21 10:00
多分、あれから一ヶ月くらいは経った。
過ぎていった世界の思い出を語りながら、今日も温かい場所で生き延びる。
ばむと
くまさーん、コンポタこれで行けますか〜?
くまめいぷる
自分で作れって…
ばむと
いやいやいやいや、僕がやったらたまに失敗するんで
くまめいぷる
お前なぁ…
そんなことをボヤきながらコンポタをクラフトする。
普通のクラフターは作業台を必要とするクラフトだが、普通だと言うようにやってのける。
多分これが、俺がこの中で秀でていること。
マイクラ世界から稀に与えられる、クラフトの力。
くまめいぷる
ほいよ
ばむと
ありがとうございます〜
そう言いながらテーブルへと駆けていくばむと。
大量に置いてあるストーブを巧くよけつつ走っていく。
くまめいぷる
やっぱ反射神経いいな。俺なら十回は転ぶ。
すと
くまさんだからね
背後から唐突に聞こえた声に肩を震わせて掠れた声で叫ぶ。
くまめいぷる
ふぎゃあっ!?
すと
なんだその踏んづけられた猫みたいな声は…
くまめいぷる
俺はくまだぞ
すと
まぁそうだけどさ…
くまめいぷる
すと
いやくまさんのことだしボケるのかなと
くまめいぷる
確定ボケ役か俺は
そんな会話をしながらばむとが歩いていった方向へとストーブを避けつつ歩いていく。
…その途中でほんとに十回転んだのはまた別のお話。
 
 
こたつでコンポタをすする僕。
こんな生活をしているからか、凍りかけた喉に温かさが沁みる。
そんな中で冷たさもまた、鋭く刺すように凍みてくる。
中和されることもなく、寒の空気それは僕の中を侵食していく。
いつになったら春なのかな。なんて。
見たこともない春の象徴に願いながら…。
 
 
こたつの方へこけながら歩いていくくまさんを見送って私は空へと目を向ける。
寒気、冷気。冷たいという概念を含んでいるものならなんでもあってしまう現状を、未だに受け止めきれていない。
なんで私達がこんな目に?そんな疑問はどんどん湧いてくる。
…一回…多分、ほんとにこれが始まって数日くらいの話。
くまさんに、「なんで私達がこんな目に遭うの?」なんて、妄想の域を出ない答えしか帰ってこないだろう質問をしたことがあった。
今思えば、混乱してたんだな。って思うような質問。
心内で抱えていようと、決して言葉には出さないだろう質問を。
そんな私のおかしな質問にも、変な顔して考え込んでいたな。
ゆっくり、慎重に、言葉を選ぶように話し始めた。
くまめいぷる
多分…なんでとか、どうしてとか…罪とか、罰とか、そういう理由なんてないんじゃないかって…
くまめいぷる
これは、ほんとにただの理不尽で、俺達への制裁とかじゃないんだと思う…
くまめいぷる
多分、これが、このゲーム人生なんだと思う…
凄いなって。
彼は多分、これに対して、ただの理不尽としか思っていない。
…理不尽を、ただの理不尽で終わらせられる人はほんとに少ない。
多分、彼も私と違って、自分の考えを正に持っていて。
きっと、違うんだなって…
正直、ちょっと驚いた。
んだってなんかくまさんって、無鉄砲でドジで、常に笑ってるような変な人…それでいて、一番よくわからない人だったから。
だから、ここまでしっかりと芯を持った考えをできることは、すごいなと思った。
めためる
俺は、あんなふうには、生きられないから…
…ちっぽけな考えと、このちっぽけな感性で、俺に何ができたんだろう…

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