そんなことを言いながら、おかしなくらい中がスッカスカのチェスト達を漁る。
すぐさま切り替えて、リビングを出ていく。
気温が低くなりがちで、かつ暖房をあまり置いていない廊下はかなり寒かった。
今ならあの乾燥地帯も受け入れられるなぁ…なんてことを考えていたら食料庫につく。
そんなふうにつぶやいてゴソゴソとチェストを周る。
…殆ど空に近かった。
それもそうだ。そもそも食料を一切調達できないような状態でここまで生きられたのが奇跡だったんだ。
他人事のように呟いた声は、自分でもびっくりするくらい空振っていた。
真面目に手を合わせ、木の皿を洗う。
やっぱり冷たい水に自らの手を当てながら、思考はいつの間にか暗いことを考えていた。
僕たち、いつ死ぬのかな。と。
そもそも周りが異質なんだ。
だっていつ終わるかもわからない冷気、常に死と隣合わせの感覚。
それは、本当に人を狂わせるには十分で。
でも、僕が狂っちゃいけない。
僕が脱落者になっちゃいけない。
一番出来ていることが少ない僕が、はじめにリタイアしちゃいけない。
僕は、音を上げちゃいけない。
きっと。きっと大丈夫。だって。
絶対にリタイアしないといえる仲間が、僕にはいるんだから
冷静に。冷静に。
自分に対してそう唱える。
ネガティブ思考は一旦止めて。生き残るための道筋を。
食料に余裕がないことを彼女も知っている。知っていて言わないのは狂気の責任を取れないからだ。
めたが飼ってた鶏はとっくに全滅。この天候じゃ畑なんて作れっこないし、外の動物たちをで食べるにしても外で凍っているから取りに行けない。
そんな言葉が思い浮かぶ。
諦めちゃ、いけないのに。
諦めていない仲間がいる限り、諦めるのは許されない。
だって、私達は四人で進んでるんだから。
居間の暖房が、突然機能を停止したのはついさっきの話。
何個もないと寒さに耐えられないからという理由でたくさんあったのが功を奏した。
こういう機会系はすとさんがいなきゃ…
…頼りっぱなしだなぁ…
何もできていない自分。
ただただ不幸を知らせることしかできない自分。
自分の無力さを改めて実感する。
でも。それでも。
俺が脱落していい理由にならない。
俺が自分から脱落するだけで、皆の意志が揺れてしまう。
生きなければという意志が。
虚像の手をすがりながら、今日も命綱を精一杯掴んでいる。
…星が、落ちていった。
窓を通る寒を通して見えた、凍った空を堕ちる星。
多分いつか、あの星みたいに堕ちてくのかなーなんて。
名も知らぬ現象に、思わず右手を伸ばしていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。