「...おい、本気か?」
「あ、あぁ!」
北見が手に持っているのは派手などピンクのオナホ。...買い物ってアダルトグッズかよ!
「そういうのは普通1人で来るんだけどな」
「え、マジ!?でも初めて買うし恥ずかしくて...」
「いや逆に友達の前で買う方が恥ずかしいと思うけど。というかお前、俺にしか頼めないとか言ってなかったか?...どういう意味だコラ」
「痛ってぇ!頭グリグリすんなよ!...ただ、なんか慣れてそうだなー...みたいな」
北見は誤魔化すように目を逸らした。
その言葉、俺が相手もおらず悲しくオナってる陰キャ男っていう侮辱か?
まぁ北見は基本的に本心しか言わないから特に悪意とかもなく言ったことなのだろう。
...俺も前までは事実独りだったし。
「はぁ、もうさっさと買ってこい」
「あなたは買わないのか?」
「いや買わな───」
そう言おうとした時、目に入ったのは
《入れた途端絶頂♡♡トコロテンになれる魔法のディルド☆*。》
という文字。
いや、決して...決してトコロテンに興味がそそられたとかでは無い。でもいつの間にか、俺の手にはそのディルドが収まっていたのだった。
「何だ?それ」
「あ、や...彼女に使う用の...」
「え、彼女いたのか!?」
咄嗟に嘘をついたけど仕方ない。これを自分で使うなんて言えるわけないだろ!
こっそり買うつもりだったのに、北見が「レジどこ?」とか言うから「...仕方ねぇな」と、変なところで母性が出て一緒にレジに並んでしまった。
1人で行けよ...男二人でアダルトショップ来るとか勘違いされかねないし早く出たい。
...勘違いというか俺はもう掘られてるけど。でも北見をそういう目で見たことないし!!
「買えた〜!」
「はいはい、良かったな」
そんなことを考えていたらもう買い終えたらしい北見が駆け寄ってくる。俺もレジに出してキャッシュで秒で払った。
「この後何する?せっかくだから飯行こうぜ!」
「奢れよな。ついてきてやったんだから」
ただの買い物なのに精神は既に疲弊していた。これは奢ってもらわないと気が済まない。
俺たちは近くにあったラーメン屋に入り、特盛を選択して食券を店員に渡した。
それから窓側の空いた席に並んで座る。この時に北見がオナホを隠そうともしないから急いでバッグに詰めさせた。恥じらいとかないのかよ。
「あ、そういえば」
「ん?」
北見が何か言いかけたため耳を傾ける。
「俺、これの使い方分かんないんだよね。それもついでに教えてよ」
「......はぁ!?!?」
俺は悟ったのだった。北見遊征は頭がおかしい奴なのだと。俺とは真逆な陽キャ天然野郎なのだと。
深く考えるのはやめよう...
そう思った1日だった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。