重岡side
濵ちゃんの後に続いてやって来たのはあなたの家。
濵ちゃんが合鍵であなたの家を開け中に入る。
俺も遅れないように、中に入って行く。
ソファーに座って待ってて〜と言い残して、
濵ちゃんは1度リビングから出て
どこかに行ってしまった。
濵ちゃんが戻ってきたと思えば
手には何かを持っていた。
そう言えば、ソファーの前にある小さな机に
濵ちゃんは1枚の写真を置いた。
そこにはあなたの家族全員が写っている写真。
皆笑顔でいい写真やった。
これに何が意味するんやろうと思って
手に取った時やった。
お父さんが死んだ?
確かに俺は今まであなたのお父さんには
会ったことがない。
むしろあなたのお母さんもLIVEで数回程度。
濵ちゃんの目を見ればちょっと切ない表情で
ちょっとだけ沈黙が続いたと思ったら
濵ちゃんは少しだけ深呼吸して言葉を続けた。
言葉が出なかった。
薄々とてつもない過去なんやろうって思ってたけど
まさかここまでとは思わんかった。
殺されたって…。誰にや?
色々と疑問が頭をよぎる。
受け止め難い事やった。
そりゃ2人が辛くなるのは当たり前や。
もっとこの先笑える未来が来ると思ってたら
急にぱっと出てきた男に殺されて…。
お父さんともっと一緒にやりたいことや
お父さんに一緒に見せたい景色があっただろう。
この仕事をしている以上
野外ライブや東京ドームでのライブを
1番近くでそばで応援してくれてた家族に
見せたいのは俺やったそう。
何度も挫けそうになった時だって
間違いなく「家族」が支えてくれた。
その「家族」に恩返ししたいから
どんなに時間がかかっても
その分ちゃんと心のこもったありがとうを伝えたい。
濵ちゃんも濵ちゃんで苦しんで…。
あなたもあなたで苦しんで…。
濵ちゃんやから。
これは間違いないと思う。
発作に苦しんでいるあなたを
優しく支えられるのは長い間一緒に過ごした
濵ちゃんだけやから。
俺もデビューして直ぐに
あなたの発作のことについて、持病について知った。
デビューして間もない時
慣れない環境であなたは体調を崩し
よく発作が出ていた。
そんな時でも直ぐに駆け寄って
不安なあなたを安心させて
「大丈夫やで」と背中を優しくさすって
暖かく優しく抱きしめるのは
他の誰のものでもない濵ちゃんやった。
思ったことを伝えると
今まできっと溜めてたんやろう濵ちゃんが
ポロポロと涙を流し始めた。
ソファーから立って
濵ちゃんの方に近付き優しく濵ちゃんを
抱きしめる。
強めに濵ちゃんの背中を叩くと
今まで溜めてきたであろうものが溢れ出し
濵ちゃんは声を出しながら泣き崩れた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!