第3話

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2024/02/20 01:00
屋敷に戻って部屋に入れば、水木様は頭を下げていた。
乙米
遅いですよ、紗夜
紗夜
すみません
乙米
あなた、貴方が居ながら
この場に遅れるなんて
一体何をしていたんですか
(なまえ)
あなた
……申し訳ありません
紗夜
お母様、あなた様は
何も悪くないのです
私がもう少しと我儘を言ったので……
乙米
良いから座りなさい
紗夜様は、乙米の隣に座った。

……私の座布団がないのは地べたで、ということか。

私は紗夜様の後ろに座る。

紗夜様は私に座布団を渡そうとしていたが、丁重にお断りした。

弁護士が遺書を読み上げた。

龍駕家当主に選ばれたのは龍駕克典ではなく、長男龍駕時麿。

時麿は長田時弥を養子に置き、時弥が成人すれば時弥が当主となることになった。

さらに、龍駕製薬の社長は今まで通り克典氏であるけれど、最終決定権は克典氏の妻龍駕乙米にあり、克典氏と次女龍駕丙江、分家宗たちには何の取り分もなかった。

そこからは大変だった。

取り分の無い分家宗は掴み合い、殴り合い。

私は紗夜様を私の後ろに隠れさせた。

紗夜様と逃げてきた水木様が何やら話をしているが、分家宗達が煩くて何も聞こえない。

その時だった。

地面の底から唸り声が聞こえてきたのは。
(なまえ)
あなた
ッ……
乙米は口元を抑えている。

地響きが続き、襖も音を立てて揺れている。
乙米
……あなた
名前を呼ばれたので、乙米の側へ行く。
(なまえ)
あなた
何ですか
乙米
貴方は水木という男の傍に居なさい
(なまえ)
あなた
……何故ですか
乙米
監視に決まっているでしょう
いいですね?
……こちらに聞いているくせに、私には一切拒否権が無い。
(なまえ)
あなた
……わかりました
紗夜様と入れ違いで水木様の傍に行く。

ちょうど、ねずみが鞄を奪い取った所だった。
ねずみ男
げっ
(なまえ)
あなた
げ、とは何ですか
ねずみ男
い、いやぁ……あはははは……
なんか用ですかい?
(なまえ)
あなた
水木様と行動を共にするよう
命ぜられただけです
ねずみ男
そーかい
離の部屋に案内する。
ねずみ男
じゃーな!
ねずみは去って行った。
水木
………………
ちらちらと私の方を見てくる。
(なまえ)
あなた
……私など気にせずお寛ぎ下さい
水木
え、あ、あぁ……
じゃあ失礼して……
暫くして、水木様は布団で寝てしまった。

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