第2話

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2024/02/19 03:20
龍駕時貞が亡くなった。

悲しみにくれる人もいれば、跡取り、財産のおこぼれは貰えるのか、とそういう事しか考えていない人もいた。
紗夜
お母様、少し気分が……
散歩をしてきても宜しいですか?
乙米
好きにしなさい
あなた、紗夜について行きなさい
(なまえ)
あなた
……………………
乙米
返事は?
(なまえ)
あなた
……畏まりました、乙米様………………
私は紗夜様の後を着いていく。
紗夜
……暑いですね
(なまえ)
あなた
……そうですね
体調が優れなくなりましたら
すぐにお教え下さい
紗夜
……すみません
(なまえ)
あなた
……何故謝られるのですか
謝る事など何も無いはずですが
紗夜
……あなた様は私の事が
お嫌いでしょう?
(なまえ)
あなた
…私が嫌いなのは紗夜様ではなく……
紗夜様の御母堂である乙米だ。
紗夜
ッでは、私のことは嫌いでは
無いのですか?
(なまえ)
あなた
……えぇ、まぁ…………
嫌いになる要素がありませんから
紗夜
ふふ、そうですか……
私もあなた様の事が大好きですよ!
………あっ
紗夜様が躓いた。

私はすかさず紗夜様を支える。
(なまえ)
あなた
大丈夫ですか
紗夜
えぇ……ありがとうございます
でも、どうしましょう……
足元を見ると、鼻緒が切れてしまっていた。

……昔は直せたが、如何せん、今は腕が1本だ。
(なまえ)
あなた
……紗夜様を抱えて戻りますか
紗夜
そ、そんな……!
申し訳ないです……!
そ、それに……私、重い…ですから
少し頬を赤らめた。

……年頃の少女には不躾だったか。

その時、1人の男が近付いてきた。

私は紗夜様の前に出て、背中で守る。
水木
お困りですか?………あぁ、鼻緒が
切れてしまったんですね
これは大変だ
貸してください、直しましょう
紗夜
で、でも……
男は有無を言わさず、紗夜様の足元に跪いた。

鼻緒を直すみたいだ。
水木
お辛いでしょう
肩に手を、足も私の膝に
紗夜
えっ、いえ……
(なまえ)
あなた
私が支えるので結構です
私は紗夜様を支える。

男は東京から来た、龍駕製薬会社と取引をしている者だと名乗った。

男は直した鼻緒を紗夜様の足元に置いた。

紗夜様は鼻緒を履く。
水木
具合はどうですか
紗夜
大丈夫そうです
水木様、ありがとうございます
水木
いえ
時弥
紗夜姉ー!!あなたさーん!
声がする方を見ると、時弥様が手を振っていた。
紗夜
時ちゃん!
時弥様は走ってきた。

そして、紗夜様に抱き着き、少し談笑してから水木様を見る。
時弥
おじさんが余所者だね?
水木
余所者?
時弥
皆が言ってたよ
余所者が村に入ってきたって
紗夜
時ちゃん
咎めるように名前を呼んだ。
時弥
おじさん、何処から来たの?
水木
僕は水木と言う
東京から来たんだ
時弥
東京!?
じゃあ、川上の試合見たことある!?
水木
あぁ、知っているよ
川上の二千本安打の話とかね
時弥
すごい!ねぇ、一緒に話そうよ!
紗夜
時ちゃん……
お客様が驚いてしまうでしょう?
(なまえ)
あなた
……あまり興奮されると
また熱が出てしまいます
時弥
えー!大丈夫なのにぃ……
水木様は時弥様の頭を撫でる。
水木
暫くこの村に滞在するつもりだから
また機会があったら話そう
時弥
ほんと!?
水木様は顔を上げた。
水木
龍駕様への御屋敷は……
紗夜
この道を真っ直ぐ行って頂けると
ありますよ
水木
ありがとうございます
また、紗夜さんともお話しましょう
紗夜
はい
水木様は鞄を持って、すれ違いざま、私に頭を下げて龍駕の屋敷へと歩いて行った。
(なまえ)
あなた
……私達もそろそろ行きましょう
紗夜
そうですね
時弥
あなたさん、抱っこ!
紗夜
こら、時ちゃん?
恐らく紗夜様は私の腕が1本しかないことを気にかけて下さっているのだろう。
(なまえ)
あなた
大丈夫ですよ、紗夜様
では時弥様、いつものように
時弥
うんっ!
そう言って私が跪くと、時弥様は私の右側に来て、私の首に手を回した。

それを確認した私は、時弥様の太腿の付け根に腕を回して持ち上げる。

紗夜様に目配せをして、屋敷を目指して足を動かす。
紗夜
いつものようにって……時ちゃん
いつも抱っこしてもらってるの?
時弥
うん、そうだよ!
紗夜
時ちゃんったら……
あまりあなた様を困らせないでね
時弥
困らせてないよ!………あ!分かった!
紗夜姉も抱っこして欲しいんだ!
紗夜
ち、違います!
もうっ!と頬をふくらませた紗夜様。
(なまえ)
あなた
……後でして差し上げましょうか?
紗夜
ッ!もうっ!あなた様までっ!

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