第96話

Golden Hour ◇ story 92.
1,732
2026/10/26 07:10 更新


お昼になって、昨日のように先輩が休憩を告げにきて、
私たちは引き継ぎをして持ち場を離れた。

スマホを開くとユウからいくつかLINEが届いていた。

2日目の今日は休憩をユウと合わせていて
一緒にお昼を食べる約束になっている。

LINE
休憩入ったら第一視聴覚室にきて!
LINE
食べ物は先に色々買ってきたから
飲み物だけ確保して来て
LINE
あと、あなたの幼馴染も一緒に食べることになったから
あなたの推しも一緒に連れてきて!
LINE
「あなたの推し、俺の分のコーラ買ってきて」
ってあなたの幼馴染から伝言


そんなユウからの連投LINEを見て
横にいたあなたの推しを見上げた。

あなたの推し
?
あなた
これ……


私はユウから届いたLINEをそのままあなたの推しに見せる。

あなたの推し
……これって強制?
あなた
たぶん……?
あなたの推し
……元々二人で食べる予定だったんじゃない?
あなた
うん、元々はね。
だけどみんなで食べた方が楽しいよ


私がそう言うとあなたの推しは「……じゃあ」と
小さく微笑んだ。

ユウと二人で過ごす昼休みも楽しみだったけれど、
そこにあなたの推しとあなたの幼馴染が加わるなんて
予想外な展開に、少しだけ胸の奥がくすぐったい。


ちゃんと普通の顔して
「みんなで食べた方が楽しいよ」って言えたかな?


私はユウに「わかった!向かう〜」と返信をして
スマホをスカートのポケットに入れた。



それからあなたの幼馴染のご所望通り
コーラを入手するために自販機を目指す。

私たちもそれぞれ飲み物を買って
ユウが指定した第一視聴覚室に向かった。



………


ユウ
お疲れー!
あなたの幼馴染
おつかれおつかれ!


私が視聴覚室のドアを開けると
教室の前の方に席を陣取った二人が私たちを出迎えた。

あなた
ユウもあなたの幼馴染くんもお疲れ様


そんなふうにお互いに労いながら二人に混ざる。

あなたの幼馴染
あなたの推し、俺のコーラは?
あなたの推し
買ってきた
あなたの推し
ってかあなたのあなたの名字さんたちを使うなよ。
俺に直接連絡しろよ
あなたの幼馴染
いいじゃん、お前とあなたのあなたの名字ちゃんが一緒にいるのわかってるんだし。
それにお前、俺のLINE見ないじゃん


そんな二人の言い合いに笑いながらユウの隣に座る。

あなた
すごい、こんなにたくさん買えたんだ


テーブルに並ぶ、からあげ・たこ焼き・やきそば・
ポテト・フランクフルト・チュロス……。

まるでパーティーのように広げられた
屋台のトレーを見渡した。

ユウ
うん、私の方があなたより先に休憩入るから一人で先に色々買おうと思ったんだけど、あなたの幼馴染も一緒に食べたいとか言うから二手に分かれて並んだんだよ。
そしたら予定より色々買えた


ユウは満足そうに
テーブルに並んだ戦利品を見て笑った。

あなた
あなたの幼馴染くんも並んでくれたんだ。
ありがと!
あなたの幼馴染
いいのいいの。
俺、どっかの誰かさんが休憩の時間教えてくれないせいでボッチだったから


そう言ってあなたの幼馴染があなたの推しを睨む。

だけどあなたの推しはあなたの幼馴染のことを
チラリとも見ずに聞き流している。

それがあまりにもいつも私の前と横の席で交わされるのと
同じテンポで、つい口角が上がってしまう。



それから私たちは「おつかれ〜!」と言い合って
ペットボトルを合わせて、ユウとあなたの幼馴染が
買ってきてくれた屋台の食べ物に手をつけた。

二人から昨日はゆっくり聞けなかったクラスの
「うちの子カフェ」の盛況ぶりを聞きながら
箸をすすめる。


作り置きしていた焼き菓子やクッキーは
もう少しで完売になりそうなこと。

完売後はドリンクだけに切り替える予定であること。

準備していたシールでは足りなさそうで
会計係の人たちが追加で買いに行ってくれたこと。


そんな大成功の証を聞いて
私たちが当初考えていたよりもたくさんの人に
カフェを楽しんでもらえているのが嬉しくて
あなたの推しと顔を見合わせた。


ちなみに、はんぺんも大人気と聞いて
ニヤケが止まらないのをあなたの推しに見られて
笑われてしまった。

あなたの幼馴染
あなたのあなたの名字ちゃんたちもこの後は実行委員じゃなくてクラスの方に戻ってくるんでしょ?
あなた
うん。
だけどシフトには入ってなくて、私とあなたの推しくんは外でチラシ配りだよ
あなたの幼馴染
そうだったそうだった。
ってことはあなたの推しはそれのためだけに衣装作ってもらったの?
ユウ
そうだよ。
だってどう考えてもあなたの推しに執事の衣装着せたいでしょ
あなたの幼馴染
え?
俺はメイド服……ってか女装なのに?


そう言って、自分が着ている
フリフリのメイド服を見下ろすあなたの幼馴染。

ユウ
それは知らないよ。
あんたたち男子たちが悪ノリで決めたんでしょうが


執事のタキシードを着たユウが
「あんたの分作るの、女子より腰回り広いから
 布たくさん使ってもったいなかった」
と文句を付け足す。

あなたの幼馴染
てかなんでそっちは男装してんの?


あなたの幼馴染にそう聞かれたユウが「私?」と自分を指さす。

ユウ
そりゃー、これが私の本業だから?
あなたの幼馴染
あ、前にコスプレしてるって言ってたけど、男装だったんだ
ユウ
まあどっちもするけどこっちの方が好き
あなたの幼馴染
確かに似合ってるけどさ。
俺もそれ着たかった〜


そんな二人のやり取りを聞きながら
気になったことを尋ねる。

あなた
……なんで女装の案がまた出てきたの?
四人で話し合った時に潰さなかったっけ
あなたの幼馴染
ああ、あなたのあなたの名字ちゃんの「悪夢コンセプト」ね


あなたの幼馴染がくすくすと笑う。

私が「もう!」と言うと、
あなたの幼馴染は「ごめんごめん」と楽しそうに目を細めた。

あなたの幼馴染
俺らの中では女装消えたけど、男子だけのときにやろうぜって話になって俺がじゃん負けした
ユウ
じゃんけんに負けたのがあんたでよかった
あなたの幼馴染
なんてこと言うんだよ!
ユウ
あなたの推しが負けてメイド服とか最悪だよ
あなたの推し
間違いない
ユウ
……違うよ?
なんとしてでもあなたの推しにはタキシード着せるって意味だよ?
あなたの推し
……。


そんな軽口を叩き合っているうちに、
テーブルを埋め尽くしていた屋台のトレーは
ほとんどが空になっていた。



………



休憩時間も終わりに近づいて
トレーを片付けながらこの後の動きを共有する。

ユウとあなたの幼馴染はこの後もクラスの方に顔を出すらしい。


ちなみに、あなたの幼馴染は

あなたの幼馴染
俺はシフト入ってなくて自由時間だけどあなたの推しもいないし、一人で回るのもつまんないからクラスにいるわ〜


という理由。



そして私とあなたの推しは外でチラシ配り。

この後は教室に戻ってあなたの推しは執事のコスプレ、
私は……制服の上にエプロンをつけるだけだけど
それぞれ着替えることになっている。



片付け終わった私たちは揃って視聴覚室を後にした。


私とユウが並んで歩いて
その後ろにあなたの推しとあなたの幼馴染。

制服や私服の人たちが入り混じる廊下を
教室を目指して歩く。


やっぱりあなたの推しとあなたの幼馴染が並ぶと目を引くようで、
すれ違う人たちの視線は
一心に私たちの後ろに注がれている。

ユウ
ほんと、あんたたちアイドルさながらだね
あなたの幼馴染
いやあ、それほどでも
ユウ
すぐに調子乗るじゃん


おどけるあなたの幼馴染にユウがツッコミを入れた時、
私たちは「うちの子カフェ」の看板を掲げた
教室に到着した。

ユウ
じゃああなたの推しは更衣室ね。
あなたは裏の子に「エプロン〜」って言えば出してくれると思うから
あなた
わかった
ユウ
着替え終わったらあなたの推し連れてくるから教室で待ってて
あなた
はーい


こうして私たちは教室の前で解散することになった。

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