第11話

現世と天国
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2021/08/25 15:39 更新
志賀直哉
夏目さん!お待たせしました!
夏目漱石
丁度良いところに来ましたね、彼が北川君ですよ
北川俊
北川俊です!宜しくお願いします
志賀直哉
俺は志賀直哉だ。お前が芥川に世話に成ってるって言う…なぁ、今お前が書いた原稿持ってるか?
北川俊
えっ?!あっはい!芥川さんに出された課題の小説なら…
志賀直哉
ふぅーん…
志賀さんはペラペラと僕の原稿用紙を見ていた。その間、子規さんと夏目さんは和菓子や洋菓子を頬張り、とても美味しそうに食べていた。
正岡子規
なぁ、何で志賀を呼んだんだ?
夏目漱石
北川君の成長を込めてだよ。彼が話ていた感じだと、龍之介君は彼に教える気は無さそうだったからね
正岡子規
アイツも頑固な所があるしなぁ、だからって志賀を呼ばないほうが良かったんじゃねぇか?アイツ辛口で有名なんだぜ?
夏目漱石
だ・か・らです、一度位は辛い経験をした方が良いでしょう
志賀さんが原稿用紙を整え机に置き口を開いた。
志賀直哉
お前の小説を読まして貰った。単刀直入に言おう、悪くない物だった。
夏目漱石
!!(志賀君が否定的に批評していない!?)
北川俊
ありが…
志賀直哉
しかしだ、登場人物の心理描写がいまいちだ。これじゃあ、何通りもの解釈が出来て、読んでいる側、つまり読者側が混乱し話の筋が通らなくなる
北川俊
なる程…
志賀直哉
あとは、人物の口調が崩れている所がある。もっと、台詞を大事に扱うべきだ。その他は、悪く無かった。話の内容、情景の描写が上手く出来ていた。
北川俊
ありがとうございます!志賀さんの指摘された箇所を改善して、芥川さんに出して見ます!
正岡子規
珍しいな!お前がそんなに褒めるなんて
志賀直哉
俺はただ、思った事を言っただけです。
夏目漱石
!そう言えば武者小路君は元気にしているかい?一緒に住んでいると聞いたが
志賀直哉
あぁ、武者なら現世にいるんだ。新しき村を見に行くだのなんなのと…
北川俊
現世に行けるのですか!?
夏目漱石
そうか、君は知らなかったね。現世に行くこと、我々は下界落ちというのだが、現世に行く事が可能だかいくつか条件があってね。
正岡子規
まずは、金。現世に行くには船に乗る必要があってな。ある程度金を持って無いといけない。だから、皆ここで働いているんだ
志賀直哉
あとは、覚悟だな。現世に行ったらまた顔が変わるんだ。理由としては、故人とバレてはいけないからだ。だから、一緒に来た奴がいる場合探すのに一苦労だ
北川俊
そうなんですか……帰る時はどうなるんですか?
正岡子規
本人が帰りたいと思った意識と自分の墓に行けば天国に帰れる。
夏目漱石
逆を返せば永遠とそこにいられる。だが、皆またここに戻ってくる。何故だか分かるかい?
北川俊
えっ…うーん…自分といた時代と違い過ぎて慣れないから?
夏目漱石
それもあるが、最大の理由は『ここにいれば自分より先に死んでいった者たちや、自分の大切な人が居るから』だよ。
夏目先生が話している時、真剣な表情だったが、少しだけ悲しそうだった。まるで自分が体験したような…この後志賀さんと別れ夏目先生の家に戻った。家に帰るまで誰も話さなかった。俺はこの天国には何かがあると、この日をもって確信した。

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