アイルランドのとあるホテル。
どこかと連絡を取っているこの男の名は、坂口安吾。
土方銀介の組織"新撰組"は坂口安吾を通して、政府から情報などを受け取っている。
坂口安吾は日本政府内務省異能特務課で長年働き続けてきた男である。彼の異能は物体の記憶を見る事が出来るため、拷問などをせずに情報を引き出せるので重宝されている。
異能特務課とは、簡単に言えば異能力を使った犯罪を行う者を取り締まる役目を持った課の事である。現在となっては公にも知れ渡っている異能力も、過去にはこの特務課のように専用の組織が内密に取り締まっていた事もある。
彼は数日前、とある会議を開いていた。
それは帝国で起きているクーデターに関係する物だったのだが、安吾はその時のある出来事が引っ掛かっていた。
数日前──────────────────
────────異能特務課 会議室
3人の異能力者がこの場に集まっていた。
坂口安吾、中原有馬(ギーク)、太宰治。
太宰治は、「異能開業許可証」を持つ探偵社である「武装探偵社」に所属する男だ。
この「武装探偵社」というのは、設立されてから40年以上経ついわゆる"老舗"であり、この名前が出るだけで犯罪者や犯罪組織が慄く。
かつては何度も難事件を解決している組織でもあり、その組織でもかなり名の売れた存在が太宰治である。
───────所で、この太宰治。
もうすでに20年近く探偵社に在籍しているが、その間殆ど顔が変わらない。老けないのだ。吸血鬼や妖の類いなのだろうか?
ギークが部屋をそそくさと出ていった。
ギークが扉を閉めたのを確認して、太宰は安吾に声をかける。
また、この男は何かを考えている。
この時安吾はそう考えた。
太宰治という男は俗に言う"天才"……いや、頭脳という点における"宇宙人"のような存在である。我々とは、考えている内容も、視点も、おそらくは感性も違う。
そういう男だから、安吾は何度も、この男の考えに振り回されてきた。
なので、安吾は「またか」と言いたげな顔をして、少し不機嫌な感じに「なんです?」と答えた。
救世主暗殺事件。
2043年に起きた事件で、2023年の浮遊大陸出現に尽力した、世界を救う"救世主"と呼ばれていたナナシ・クライスという人物が、妻と共に殺害された事件。犯人不明のこの事件は、今でも多くの人々の記憶に焼き付いている。
このナナシ・クライスの娘が、ヴィオラ・クライスという女性なのである。
───────現在に戻る。
その頃。
ビッキー、ギーク、ファマスは、飛空艇で異形に突っ込み、異形の内部に侵入した。
有馬の異能力により、突っ込んだ衝撃で爆発している飛空艇から飛び出したビッキー達は、異形の内部の地面に無事着地したのだった。
異形の内部は建物のようになっていて、黄緑と白と肌色が混ざった複雑な色合いのタイルが床と壁に張り巡らされているように感じる空間になっている。
そこかしこでリフトのような物が動いており、リフトには犬のような獣が乗っている物がある。恐らくはモンスターだろう。
ビッキー達が侵入した層は、下の方。
3層目辺りである。
ビッキーは着地した後、足を押さえながら立ち上がった。他2人もゆっくり立ち上がる。
見渡す限り、窓もなければ換気扇もなし。衛生観念はよろしくなさそうだ。この分だと飛空艇で突っ込んだおかげでむしろ悪い空気を外に出せて良かったのではないだろうか。
3人の男達は、未知の怪物の体の中を、
右も左もわからないまま、進み始めた。
to be continued…
















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。