第7話

scene.6 彼女についての記録
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2023/09/05 02:49 更新
坂口安吾
坂口安吾
……はい。無事土方銀介のチームが潜入に成功しました。引き続き遺体の回収を急がせます
アイルランドのとあるホテル。
どこかと連絡を取っているこの男の名は、坂口安吾。

土方銀介の組織"新撰組"は坂口安吾を通して、政府から情報などを受け取っている。

坂口安吾は日本政府内務省異能特務課で長年働き続けてきた男である。彼の異能は物体の記憶を見る事が出来るため、拷問などをせずに情報を引き出せるので重宝されている。

異能特務課とは、簡単に言えば異能力を使った犯罪を行う者を取り締まる役目を持った課の事である。現在となっては公にも知れ渡っている異能力も、過去にはこの特務課のように専用の組織が内密に取り締まっていた事もある。

彼は数日前、とある会議を開いていた。
それは帝国で起きているクーデターに関係する物だったのだが、安吾はその時のある出来事が引っ掛かっていた。
坂口安吾
坂口安吾
……はぁ……
数日前──────────────────
────────異能特務課 会議室



3人の異能力者がこの場に集まっていた。
坂口安吾、中原有馬(ギーク)、太宰治。

太宰治は、「異能開業許可証」を持つ探偵社である「武装探偵社」に所属する男だ。
この「武装探偵社」というのは、設立されてから40年以上経ついわゆる"老舗"であり、この名前が出るだけで犯罪者や犯罪組織が慄く。

かつては何度も難事件を解決している組織でもあり、その組織でもかなり名の売れた存在が太宰治である。

───────所で、この太宰治。
もうすでに20年近く探偵社に在籍しているが、その間殆ど顔が変わらない。老けないのだ。吸血鬼や妖の類いなのだろうか?
太宰治
太宰治
じゃあ、安吾。もう一度作戦の内容をおさらいしよう
坂口安吾
坂口安吾
そうですね。改めてクーデターの内容を説明します。まず、標的となっているのはkun帝国と呼ばれる天空の国と、その頂点、大統領に該当する人物、kun
坂口安吾
坂口安吾
元はkunの依頼『帝国の崩壊』を達成するための物ですが……。我々にはこの依頼の意図がよく理解出来ないため、とにかく占領し、帝国内に軍備を配備した所で大統領に真意を問い詰める運びとなりました
坂口安吾
坂口安吾
数日後、このクーデターの第一段階として、「レッドサーカス事件」の犠牲者である「ヴィオラ・クライス」の遺体の回収作戦が決行されます
太宰治
太宰治
遺体の回収……それは安吾の異能力で彼女の記憶を除いて犯人を暴き、クーデターを正当化する証拠を掴むため……だね。
良い案だと思うけど、問題は何処にあるかだ。目星は付いているのかい?
ギーク
ギーク
……帝国のkunの根城には遺体安置所が存在します。ここに潜り込めば、彼女の遺体の回収が可能であると考えられます
太宰治
太宰治
そうか……。ありがとう。有馬君、もう行っていいよ。君は準備で忙しいだろう?
ギーク
ギーク
……ええ。では、お言葉に甘えて
ギークが部屋をそそくさと出ていった。
ギークが扉を閉めたのを確認して、太宰は安吾に声をかける。
太宰治
太宰治
ねぇ安吾
坂口安吾
坂口安吾
……なんです?
また、この男は何かを考えている。
この時安吾はそう考えた。

太宰治という男は俗に言う"天才"……いや、頭脳という点における"宇宙人"のような存在である。我々とは、考えている内容も、視点も、おそらくは感性も違う。

そういう男だから、安吾は何度も、この男の考えに振り回されてきた。

なので、安吾は「またか」と言いたげな顔をして、少し不機嫌な感じに「なんです?」と答えた。
太宰治
太宰治
ヴィオラちゃんの話をしようか。君も、あらかた調べたんだろ?
坂口安吾
坂口安吾
ええ。彼女が"救世主"の子供である事や、弟がいる事、元アトラス隊隊長との恋愛事情など……そして、彼女の異能力についても
太宰治
太宰治
……そうかい、そうかい。
坂口安吾
坂口安吾
目を疑いましたよ。『5、6秒先の未来を見る事が出来る』能力……というのを見た時は
太宰治
太宰治
……ああ、だろうね。
坂口安吾
坂口安吾
名前は……"天衣無縫"と。まさかとは思いましたけど、何処を見ても真実のようで
太宰治
太宰治
……あの日、あのバーで彼に会った時、彼は異能力のコピーをする道具について話していた。……だから、恐らくは使ったんだろうね。あの痛ましい事件の時に……
坂口安吾
坂口安吾
……"救世主暗殺事件"……犯人が未だに捕まっていない、帝国で最も衝撃的な事件として語り継がれるあの事件ですね
救世主暗殺事件。
2043年に起きた事件で、2023年の浮遊大陸出現に尽力した、世界を救う"救世主"と呼ばれていたナナシ・クライスという人物が、妻と共に殺害された事件。犯人不明のこの事件は、今でも多くの人々の記憶に焼き付いている。

このナナシ・クライスの娘が、ヴィオラ・クライスという女性なのである。
太宰治
太宰治
……彼女を殺す事に意味はない。そして、恐らく彼女は……
坂口安吾
坂口安吾
待ってください。まさか、生きているとでも言うんですか?
太宰治
太宰治
ねぇ、安吾。ヴィオラのお母さんの事は調べた?
坂口安吾
坂口安吾
……?あぁ、トキ・クライスですか
太宰治
太宰治
彼女はねぇ、"不死の呪い"っていう最悪な呪いを持っていたんだ。それは彼女の一族がずっと受け継いでいた物らしいんだけど
坂口安吾
坂口安吾
まさか……
太宰治
太宰治
……だっておかしいだろう?不死の呪いを持っているならば、殺されるというのはちゃんちゃらおかしい話だよ
───────現在に戻る。
坂口安吾
坂口安吾
アレがもし本当にそうなのなら、遺体安置所などにヴィオラさんはいません。どうしましょう、伝えた方が良いのか、混乱を招かないためにも伝えない方が良いのか……
その頃。
ビッキー、ギーク、ファマスは、飛空艇で異形に突っ込み、異形の内部に侵入した。


有馬の異能力により、突っ込んだ衝撃で爆発している飛空艇から飛び出したビッキー達は、異形の内部の地面に無事着地したのだった。

異形の内部は建物のようになっていて、黄緑と白と肌色が混ざった複雑な色合いのタイルが床と壁に張り巡らされているように感じる空間になっている。

そこかしこでリフトのような物が動いており、リフトには犬のような獣が乗っている物がある。恐らくはモンスターだろう。

ビッキー達が侵入した層は、下の方。
3層目辺りである。

ビッキーは着地した後、足を押さえながら立ち上がった。他2人もゆっくり立ち上がる。
ビッキー
ビッキー
いってて……おい、もうちょっと安全に運転してくれよ
ファマス
ファマス
るせぇよ!入口ねぇんだから無理だろうが!!
ギーク
ギーク
まぁ、この方法しか無理だろーな……この感じだと
見渡す限り、窓もなければ換気扇もなし。衛生観念はよろしくなさそうだ。この分だと飛空艇で突っ込んだおかげでむしろ悪い空気を外に出せて良かったのではないだろうか。
ビッキー
ビッキー
とにかく行こう。ここを上に上がって、皆に合流して、そして遺体の回収を……ヴィオラ、もといGM9の遺体の回収をする
ギーク
ギーク
ああ、そうだな
ファマス
ファマス
あぁ、目的はそれだったな。
kunの怒った所とか見てみたいけど、まぁそんなことより任務優先だな


3人の男達は、未知の怪物の体の中を、
右も左もわからないまま、進み始めた。




to be continued…

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