第5話

城の生活と安らぎ
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2021/08/08 09:00
───お城での生活も早いもので1週間がたった。

お城に来て1番驚いたのは『陛下のワガママに付き合わされて可哀想』という私に対する周囲からの同情の声。
ソフィア
ソフィア
アラン様!
起きて下さい、朝です
北部出身だということも特別隠しているわけじゃないし、もっと……こう、否定的な扱いを受けるものだとばかり思っていたから、拍子抜けしてしまった。

みんなアラン様のことを、口を揃えて「ワガママな王様だ」と言うけれど、それって"本当のアラン様"なのかな?
アラン
アラン
……ん、おはよう
ソフィア
ソフィア
おはようございます、アラン様。
今日は温かいハーブティーを用意しました
毎朝、アラン様を起こしに向かうことから私の仕事は始まる。

身支度を手伝ってお見送りしたあとは、お部屋の掃除や洗濯……それから、夕飯の支度。

アラン様が寝る前に温かい飲み物をお出しして、私の仕事は終わりを迎える。

まさに、アラン様の世話役そのもの。

とはいえ、週に2日は北部へ帰って、今までのように仕事をしたり、自然に囲まれてゆっくり流れる時間を大切にしている。
アラン
アラン
ああ、着替えてからもらう
手伝ってくれ
ソフィア
ソフィア
あ、はい
そんなあっという間に過ぎていく日常にも最近やっと慣れつつある。
***

国王としての仕事に向かうアラン様を見送って、私も次の仕事に取りかかった。
洗濯物のシワをパンパン!と伸ばしながら、思わず独り言を零してしまうほど、今日は洗濯日和。
ソフィア
ソフィア
これが終わったら、
アラン様のお部屋を掃除して、
ソフィア
ソフィア
それから、
???
あら、あなたもしかして
ソフィア
ソフィア
え?
ふわり、聞こえてきた可愛らしい声。

ゆっくりとその姿を探す。
そして見つけた瞬間、その声の主があまりにも綺麗で息を飲んだ。
???
アランのお気に入りさん?
ソフィア
ソフィア
……!?
???
やっぱり!そうでしょ?
あのアランが女の子を連れてくるなんて
夢みたいだわ〜
クリクリと大きな瞳で嬉しそうに見つめられて、キョトンとする私。
ソフィア
ソフィア
あの、失礼ですが……あなたは?
ルシア
ふふ、初めまして。
アランの母のルシアです
ソフィア
ソフィア
アラン様のお母様。
つまり……王妃様……っ!?
慌てて頭を下げる。
まさか、こんなところで王妃様に出くわすなんて思ってもみなかった。
ルシア
今はもうアランが国王だもの、
私は王妃ではないのよ
ほら、頭を上げて?
ソフィア
ソフィア
……はい
ゆっくりと頭を上げれば、再び綺麗な瞳と目が合う。
ルシア
あの子、城の中じゃ"ワガママって評判でしょう?
ふふ、とおかしそうに口元を隠して上品に笑うルシア様は「でもね」と続けて、切なげに目を細めた。
ルシア
先王が早くに亡くなって、
アランはあの若さで突然、
国王としての責任を負うことになったの
ルシア
学ぶことは山ほどあって、
自由な時間なんてほとんどない。
それでも疲れた顔ひとつ
母の私にすら見せたことがない
ルシア
先王を亡くして悲しむ私に、
アランが言ってくれたの。
"大丈夫、俺がこの国を守るから"って
"頼もしいでしょ”と、目を細めるルシア様に、思わずジーンと目頭が熱くなってしまう。
ルシア
だけど、
全てを自分一人で背負おうとしすぎて、
どこか独りよがりになっているのかも。
それが、みんなの目には
"強引さ"や"ワガママに映ってしまう
ソフィア
ソフィア
……なるほど
ルシア
いつか、アランが疲れてしまったとき
あの子に癒しを与えてくれる素敵な女の子に
早く出逢って欲しいと思っていたの
ソフィア
ソフィア
癒しを与えてくれる
素敵な女の子……ですか
ルシア
ソフィアさん、アランをよろしくね
ソフィア
ソフィア
……えっ!?
あ、はいっ
"今度、お茶でもしましょ"なんてニコリと微笑んで、来た道を優雅に戻っていくルシア様の背中に慌ててお辞儀をする。

困った。⋯⋯成り行きで、アラン様をよろしく頼まれてしまったけれど、私は癒しの力なんて、生憎そんなものは持ち合わせてない。
ソフィア
ソフィア
私、アラン様を癒してあげられるかな

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