無料スマホ夢小説ならプリ小説 byGMO

前の話
一覧へ
次の話

第2話

盲目の彼
108
2021/12/06 12:39
今日も街を徘徊する。

特に目的の場所がある訳でもなく、ただただ街を歩き回る。


と、俺の前に人影が見えた。

杖をつき、点字ブロックの上を歩く青年。

盲目…か。

こんなただでさえつまんない世界に目が見えないとなると、さらにつまらないだろうな。
俺はそーっと彼のよこを通り過ぎた。




その直後
ガシャン!!!!
!?
振り返ると、自転車のタイヤに杖を取られ転んでいる彼の姿。
必死に杖を探しているが見つからないようだ。
他の通行人は見て見ぬふり。
誰も助けないのかよ。誰か助けてやればいいのに。



















いやいやいやいや俺は何を言ってるんだ。
お前だって助ける気はさらさらないだろう。

面倒事に巻き込まれるのは嫌だし、さっさとここから…






でも、足が動かなかった。
目も彼に釘付けで他のものを見れない。
ようやく足が動いたと思えば、彼の方へ歩みを進めていた。
何やってんだ俺。戻れよ早く、こんな面倒事に巻き込まれたくなんて…
志「大丈夫?」
意志と真反対のことをしてしまう。
自転車から杖を外して彼を支えながら立ち上がる。
?「すみません…ありがとうございます…」
そう言ってこちらを振り向いた彼を見て時が止まったかのような感覚を覚えた。
違う、そうじゃない。衝撃を受けたのはそこではないんだ。

彼ほど、美しい人を俺は見た事がなかった。

大きな目に薄紅色の頬。赤薔薇を思わせる真っ赤な唇。
白く濁った瞳の奥に薄らと浮かぶ緑の光さえも、美しく見えた。
志「あ、これ。杖っす。」
?「ありがとうございます。」
志「ったく…ほんと危ないっすよね。こんなとこに自転車なんて…」
?「あ、自転車かぁ…タイヤにでも引っかかったかなぁ。」
志「そうっすね。自転車のタイヤに杖がはまってますね。」
?「なるほど…ありがとうございます。何かお礼させてください。」
志「いや、いいっすよ。当たり前のことしただけなんで。」
嘘つき。思いっきり見捨てようとしてた癖に。
?「それじゃあ俺の気がすみません!」
志「えぇ…じゃあ…」
しばらく考えた後、ふと自販機に目がいった。
志「コーヒー、奢ってくんね?」






近くの公園に入り、ベンチに座る。

コーヒーを飲みながら先程の彼と話をした。
彼はうらたと言うらしい。俺と同い年の20歳だ。
視力を失ったのは10年前、彼が小学4年の夏だった。


家に押し入った強盗に鉢合わせし、目を切りつけられ、視力と家族を失った。
う「だから、家族っていいなって思うんだ。」
志「そうか。」
う「志麻さんの家族はどんな人?」
志「俺?俺は…まぁ優しかったかな。」
う「なんで過去形なの?」
志「4年前…俺が高1の時、両親とも死んだんだ。」
う「え…ご、ごめん…」
志「気にしないで。俺も別に気にしてないし。」
う「そ、そう?」
志「うらたさんはさ」
う「ん?」


?「あーーーー!!!!うらさんいた!!!!」
公園の入口から赤い髪の青年が走ってきた。
う「坂田。」
坂「うらさん!勝手にいなくならんといて!」
う「ごめんごめん。」
志「あの…うらたさん。この人は?」
俺はうらたさんの耳に顔を近づけヒソヒソと話しかけた。
う「あぁこの人は…「あんた何?」」
うらたさんの言葉を遮り赤髪が俺に問う。
う「どしたの?今日機嫌悪い?」
坂「別に悪ないよ。」
志「俺は志麻。さっきうらたさんと知り合った。」
う「俺が転んだ時助けてくれたんだ。」
志「あんたは?」
俺が赤髪を真っ直ぐ見つめると、赤髪は少したじろいだ。
それもそうだろう、俺は元々目付きが良い方ではない。その目が先程の「あんた何?」で少しイラつき睨みをきかせているのだから。
坂「…坂田。」
志「坂田くんか。歳はいくつ?」
坂「そんなん別にええやろ。うらさん帰るで。」
う「先帰ってていいよ。俺志麻さんと話してから帰るから。」
坂「ダメ。
コソッこんな人と一緒にいたらうらさんがやばいで。
ガッツリ聞こえてるんだなぁ。
う「何がやばいの?」
坂「うらさんシッ!」
志「うらたさん今日は帰りぃよ。坂田くん困らせたらあかんよ。」
せめても、と優しく微笑んだ。

と、うらたさんが俺の顔に触れた。
志「うらたさん?」
う「あ、笑ってるんだ。ごめんね、どんな顔してるのかわからなくて。」
ハッとした。


すっかり忘れていた。彼が、あまりにも普通の青年だったから。
う「ねぇ志麻さん。」
志「ん?」
う「また会える?」
坂「うらさん、あかん。」
う「会え…ない?」
少し眉をひそめて不安そうなうらたさん。
そしてその横で鬼の形相で俺を見る坂田くん。
志「ううん。会えるよ。明日も明後日も明明後日も。」
う「ほんと?なら約束。毎日14時にこの公園のベンチね。」
坂「うらさん!」
う「坂田いいでしょう?そんなに心配しないで。」
坂「でもッ…」
う「じゃあ坂田も一緒に来る?ね?」
志「それがええんやないの?坂田くん何が不安なんか知らんけどな。」
坂「は?なんなんお前さっきから…」
う「坂田。もう帰るよ。」
坂「…おん。」
う「じゃあ志麻さん、また明日14時ね。」
手を振るうらたさんに小さく手を振った。
志「またね。」
う「またね〜」
心臓の鼓動が早い。きっと…きっと俺は…     































うらたさんに恋をした。