第6話

初めての勉強。
132
2022/02/04 14:21
あの日から三日後。

私はまた、廃病院へとやってきた。

病室のベッドについてあるテーブルの上に課題のプリントと教科書、筆記用具を広げた。





川上 由紀
川上 由紀
じゃあ、まず勉強しよっか!
叶多
叶多
おおっ!勉強!




叶多は目を輝かせながら広げた教科書を眺めていた



そして、手を伸ばし教科書をペラペラと………
川上 由紀
川上 由紀
って!物触れるの!?
叶多
叶多

触れるよ?
なんで?
川上 由紀
川上 由紀
いやっ!よく幽霊とかって物に触れたりできないとかあるじゃん
叶多
叶多
あー
そういうこと?
ほかの人たちは触れなかったみたいだけど…
僕は触れるよ?
川上 由紀
川上 由紀
え?この病院には、まだ他の人もいるの…?
叶多
叶多
ううん
今は、僕一人だけ
もう他のみんなは成仏したみたい



一体何年以上、叶多はここにいたんだろう…

叶多
叶多
ねえ!勉強しよ
川上 由紀
川上 由紀
あ、うん




各教科からのプリントを解いている解いている私の隣で、叶多はじっと見ている

最初に簡単な問題を教えてみたけど叶多はもう大丈夫、と断った
叶多
叶多
由紀の隣にいて、見てるだけで勉強してる気分になれるし安心する



勉強して一時間経ったお昼の時間にリュックからカップラーメンと自転車に積んできた大きめの魔法瓶を取りだした



『カップラーメンを食べてみたい』

これも、叶多の願いを叶えるためでもあった





川上 由紀
川上 由紀
…叶多って食べることは出来るの?
叶多
叶多
出来るよ!
川上 由紀
川上 由紀
本当に幽霊とは思えないな…
シーフードのカップラーメンとトマトのカップラーメンにお湯を入れる


良かった…

お湯、冷めてないみたい
川上 由紀
川上 由紀
どっち食べたい?
叶多の前にふたつのカップラーメンを置く

叶多
叶多
由紀が先に選んでよ
川上 由紀
川上 由紀
いいよ!どっちも食べれるし
叶多の夢でもあるんでしょ?
好きなほう食べて
叶多
叶多
いや
由紀が選んで




押し問答が続き結局私は、自分の好きなトマトのカップラーメンを選んだ





川上 由紀
川上 由紀
はい!これでいいでしょ!
叶多
叶多
うん!
うわぁ、美味しそう!
カップ麺の蓋を開けると叶多はすごく嬉しそうに笑って、見せた

私も蓋を剥がした


カップ麺は3分過ぎてしまい少し伸びてしまっていた

汁も麺に吸われてしまっていた





川上 由紀
川上 由紀
………おいしい
ただのカップ麺

親の帰りが遅い時にはいつも食べていたカップ麺

食べ慣れた味…



そのはずなのに

時間が経って伸びた、汁を吸った麺




なんでこんなに美味しいんだろう
叶多
叶多
ね!美味しいね!
由紀のもひと口食べさせて!



隙を狙って、カップ麺を取られた


けどその無邪気な表情を見ていたらこっちまで方が緩んでくる
叶多
叶多
お!笑った
いつも笑ってればいいのに…
初めて会った時なんか、表情死んでたからね?
川上 由紀
川上 由紀
そう…だった?
叶多
叶多
うん
つまんなそうな顔してた






確かにそうかもしれない


周りに期待しないで


何でも自分で解決して


ひとりで勝手に壊れて


でも、周りに気づかれたくないと偽った笑顔




笑えてたと思ってたんだけどな…
川上 由紀
川上 由紀
そっか…
でも、叶多といると楽だな
親とか学校の友達とかといるよりも
自然体でいられる
叶多
叶多
なら、僕といればいい!
僕に弱音を吐いてもいい
辛かったら頼ればいい

僕が由紀を頼っているみたいに
川上 由紀
川上 由紀
うん、そうするよ

………ありがとう




その後ほとんどのプリントを終わらせ、6時に家に帰った

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