あの日から三日後。
私はまた、廃病院へとやってきた。
病室のベッドについてあるテーブルの上に課題のプリントと教科書、筆記用具を広げた。
叶多は目を輝かせながら広げた教科書を眺めていた
そして、手を伸ばし教科書をペラペラと………
一体何年以上、叶多はここにいたんだろう…
各教科からのプリントを解いている解いている私の隣で、叶多はじっと見ている
最初に簡単な問題を教えてみたけど叶多はもう大丈夫、と断った
勉強して一時間経ったお昼の時間にリュックからカップラーメンと自転車に積んできた大きめの魔法瓶を取りだした
『カップラーメンを食べてみたい』
これも、叶多の願いを叶えるためでもあった
シーフードのカップラーメンとトマトのカップラーメンにお湯を入れる
良かった…
お湯、冷めてないみたい
叶多の前にふたつのカップラーメンを置く
押し問答が続き結局私は、自分の好きなトマトのカップラーメンを選んだ
カップ麺の蓋を開けると叶多はすごく嬉しそうに笑って、見せた
私も蓋を剥がした
カップ麺は3分過ぎてしまい少し伸びてしまっていた
汁も麺に吸われてしまっていた
ただのカップ麺
親の帰りが遅い時にはいつも食べていたカップ麺
食べ慣れた味…
そのはずなのに
時間が経って伸びた、汁を吸った麺
なんでこんなに美味しいんだろう
隙を狙って、カップ麺を取られた
けどその無邪気な表情を見ていたらこっちまで方が緩んでくる
確かにそうかもしれない
周りに期待しないで
何でも自分で解決して
ひとりで勝手に壊れて
でも、周りに気づかれたくないと偽った笑顔
笑えてたと思ってたんだけどな…
その後ほとんどのプリントを終わらせ、6時に家に帰った
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。