そんなモヤモヤを抱えたまま、また1週間が過ぎる。
気づけば、毎年の恒例行事
4日間の職場研修が、
3日後から始まろうとしていたのだ。
私は、本が好きだったので、本屋を希望したが、
案の定 希望者が定員を越えていたため 抽選で選ばれることになった。
…
結果は、勿論 とでも言うかのように、
呆気なく外れ、
希望外の
アパレル関係の会社になってしまった。
その名簿をみると…
…
思わず声に出してしまった。
…別に、
この間の事だってやましいことではないし…
気にする必要はない。
そして放課後、事業所ごとに教室に集まり、行くまでのルートの確認などを行った。
渡された学校の書類に、電話番号を書いた。
他の人も書くんだしね…。
…─────────────────
ついに、明日からが研修日と言うことで、今日も最後の打合せだ。
…と言うときに、
先生の諸注意も聞かす、叉萠がこんな事を言ってきたのをよく覚えている。
いつも彼は、駄々を捏ねる友達になんか見向きもせず、私の隣にすわる。
ちょっとそれが、嬉しかったりもした。
この時点で、既に…
私は
叉萠の事が、気になっていた。
珍しく、目付きを変えるようにして、私の髪に執着する叉萠。
あの日から、
ちょっと、私の中にも
叉萠に対する気持ちに変化があったのだろう。
こんな顔もする人なのか…
いつもの
上部だけの笑顔を浮かべている時も、
叉萠の瞳は、何かを覗き込むような…
真っ直ぐな、綺麗な瞳なのだ。
思わず、見つめていると吸い込まれそうな程。
そして、
その奥には、
どんなものがあるんだろう…
その笑顔の奥に何を隠し持っているの…?
聞きたくても、聞いてはいけない気がした。
まるで、
とでも言っているかのように。
君をもっと知りたい。
最後に出た私の答えはこれだ。
私が近づくほど、
彼の闇が露になっていく…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!