「うぇえ、今日から早速放課後集まりがあるとか最悪かよ…っ」
放課後。
一ノ瀬くんはジャンケンで負けて、
班長になってしまい、
そして早速今日から班長の集まりがあるらしい。
「頑張ってね、一ノ瀬くん!」
私が一ノ瀬くんの応援をすると、
一ノ瀬くんは何かを思い出したように、
「あっ」と言った。
…どうしたんだろう?
「あ、あなたちゃんっ、俺のこと一ノ瀬くんじゃなくて、遊佐って呼んで!」
「…遊佐?」
「そうそう、じゃあ行ってくるっ」
一ノ瀬くん…じゃなくて遊佐はそれだけ言うと、嬉しそうに走っていった。
やっぱり少し親しくなると下の名前呼びの方がいいのかな。
確かに苗字+くんは呼び方的に長くなるもんねっ。
そういえば、今日。
翔先輩は生徒会の資料とじ込みの仕事があるから、とかで遅れるから先に帰っていてって言ってたっけ…。
でもいつも待ってもらってるから、
私も待っていよう…!
手伝えるなら私も手伝えばいいし。
そう思って生徒会室に向かった。
生徒会室の扉をコンコン、と鳴らす。
「今取り込みちゅー……って、あなた!」
生徒会室から出てきたのは翔先輩だった。
翔先輩は私を見るなり、
嬉しそうだけど驚いた顔をしていた。
「翔先輩っ、私も手伝えるなら手伝います」
「え、それはあなたに悪いし…っ」
「大丈夫です!」
半ば強引に翔先輩を説得すると、
翔先輩は私を生徒会室に入れてくれた。
「……すごい量」
「本当にいいの?あなた…」
机の上にあったのは100枚は超えてるであろうプリントの山。
翔先輩は1人でこれをこなそうとしてたのか…。
「2人でやったほうが効率いいですし」
そう言って私はプリントの山の半分位を持ち、
自分の手元に置いた。
「ごめんね、ありがと。一応プリントは纏まりになってるから、ホチキスで左上を留めるだけでいいから」
「はいっ」
翔先輩は私にホチキスを渡してきた。
そのホチキスでひたすらプリントをとじ込む。
ガチャッ
ガチャッ
ガチャッ
……作業してる時って無言になってしまう。
何か喋ろうかと思ったけど、
翔先輩が先に言葉を発した。
「そういえば、あなたってもう遠足近いよね、班は決まった?」
「一応決まりましたっ」
「誰になったの?」
そういえば、遊佐と翔先輩って若干不仲説出てるんだっけ…。
でも、嘘つく方がダメだよね…。
「桃果、由真、遊佐となりましたっ」
「……遊佐?」
その名前を聞くと、
翔先輩のホチキスを動かす手が止まった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。