第23話

22.
9,303
2020/11/24 15:49





鍋敷きの上にグツグツと揺れている鍋を置く


さっきまでのテンションも


今やこの空気にかき消されている


机を挟んで北斗と向かい合うようにして座る


そして、何故か私の横に座る樹



『そっち行きなよ』

樹「、やだ」

『狭いじゃん』

樹「、、嫌なの」



そう言ってピッタリとくっつくように


私の隣に座る



『い、いただきます』

北斗「いただきます」

樹「、いただきます」



3人揃って手を合わせる



北斗「名前、聞いてもいい?」

樹「樹、です」



ぎこちなく答えたあと


やっぱり決まって私の方をむく


安心させるかのように


ニコッと笑えば


またそっと私の方へと寄る



北斗「距離、近くない、?」



そんな言葉にドキッとして


「ほら」と言ってスっと樹から離れる


何か言いたげな樹は置いといて


初めから今まで


全てのことを丁寧に話した


一緒に夜ご飯を食べたんだ


食べ終わる頃には仲良くなるだろう


なんて思ってた自分が馬鹿だった


相変わらず気まずい空気のまま


北斗に何かを聞かれる度に


チラッとこちらを見て私に助けを求める


まったく、


ソファーの上でテレビを見る樹を置いて


キッチンに並び洗い物をする



北斗「ごめん。急に来ちゃって」

『ううん、お鍋美味しかった』



「それはよかった」なんて言いながら


泡だらけのお皿をまた水で流していく



北斗「あなたはさ、」

『うん』

北斗「怖くないの?あんなやつと住むことは」

『あんなやつ、じゃない。しかも、もう今は違う』



少し腹が立ち


声のトーンをワントーン下げた



『心配する気持ちはわかるよ。でも、今だけは待っててほしい。』



きちんと目を見ていえば


「わかった」と言ってタオルで手を拭く



北斗「なんかあったら絶対言えよ?」



コクリ、と頷く私に


「じゃ、帰るわ」とだけ言って


荷物を手に取る


バイバイと言って手を振り


玄関がしまった瞬間


一瞬で後ろからふわんといい匂いがする


完全に樹のペースだ









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