虎杖 side
淡波が目を覚ました後、
出張から帰ってきた五条さんに来て,話を聞いて貰った。
五条先生の衝撃的発言に、思わず大きな声が出た。
しかし、当の本人は何故かキョトンと首を傾げた。
俺と淡波が声を揃えてそう怒ると、
五条さんはうっかりした様な顔で、平謝りをする。
そう悪気もなさそうに謝る所とか……
本当に五条さんは、強さ以外尊敬できるところが…
なんて考えていたら
「悠仁、今僕に失礼なこと考えてるでしょ」
と言い当てられて、背筋が冷えた。
俺と淡波の指摘に、
五条さんは楽しそうに笑いながら言葉を続ける。
五条さんの言いたいことを頭が察した途端……
段々と、目の縁が熱くなっていくのを感じた。
ガバッと音がして、俺の座っていたパイプ椅子が倒れる。
俺は、無意識のうちに彼女を強く抱き締めていた。
そして淡波も俺の背中に手を回して、
ぎゅっとその小さな腕と手で、俺を強く抱き締める。
一度この手で奪ってしまった彼女の幸せを、
俺は、今度こそは…この手で守り抜く事が出来たんだ。
そして、これからもこの先も……
俺が淡波を思い続ける事で,俺は淡波を守る事が出来る。
その事実に対する言い表しようもない喜びが
大粒の涙となって、沢山溢れ出てきた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。