第19話

優しい悪魔
439
2023/12/24 12:03

 あなた side









淡波 あなた
  この呪具はね、対象者となった者を  
強制的に動けなくする術式が組み込まれてて
淡波 あなた
  その術式を使った人……要は私が  
対象者であるアンタへの憎しみの大きさ
によって、術の持続時間も変わってくる
淡波 あなた
  だからまぁ、しばらくは動けないよアンタ  
_@_
  …………  








     そう言って、悪魔の上に馬乗りになり

     いつでも殺せるようにナイフを構える。












    その間、意外にもこの悪魔はずっと静かで、

 まるで,こうなる事は予想通りとでも言いたげな顔だった。









淡波 あなた
  で、最後に言い残したい事とかある?  
淡波 あなた
  拾ってもらった恩はあるからね
最後の言葉くらい聞いてあげるよ








          真人さんは言った

   「本当に殺されそうになった時,本性を現す」と。









   だから最後くらい、アンタの本性を見せてよ。

  私がアンタを「殺してよかった」と思えるくらいのを。









_@_
  じゃあ、淡波はこの一ヶ月半…楽しかった?  
淡波 あなた
  ?……まぁ、それなりには  











 何だこの質問は……と思ったが、ここは正直に答えた。

   実際、この一ヶ月半は本当に楽しかったから。









_@_
  それなら…俺への''復讐''以外の  
「生きる理由」は見つかった???
_@_
  俺を殺した後も、生き続ける?  
淡波 あなた
  ……まぁ、死にはしないんじゃない?  
淡波 あなた
  案外こんな人生も悪くないって思えたし  
_@_
  ………………  










         そう何気なく答えたが、

     悪魔は私の返答に少し黙り込んだ後…



































_@_
  ……そっか  









        そう言って、優しく笑った。








淡波 あなた
  〜ッ、  
_@_
  それならもう良いよ……殺してくれ  
淡波 あなた
  は?良いの?アンタ……
''やらなきないけないこと''があったんじゃ…
_@_
  あぁそれ?それは  
「淡波の生きる理由を見つけること」
だったから、もう達成された
淡波 あなた
  ……は、?  










     は?何それ……じゃあ初めからコイツは、

   「私の為に死にたくなかった」ってこと???









淡波 あなた
  なんでそこまで……っ、どうしてそんなにも  
私に優しく出来るわけ!?
_@_
  ……どうしてって言われてもなぁ、
そりゃ初めは償いたいとか思ってたけど…
_@_
  今はただ、淡波の幸せとか笑顔とか…  
そんなのを''守りたい''だけだよ
淡波 あなた
  〜ッ……  









 悪魔の言葉が,私の心を温かくしていく様な感覚がする。










       心に光が帯びていくようで……

  まるで目に見えないナニカに守られている様だった。








淡波 あなた
  ッ…あっそ……じゃあもう殺すから  











        今更、コイツが私の事を

      どう思っているかなんて関係ない。










   コイツが私の両親を殺した''悪魔''だった事には

           変わりない。




















           だから…………



























_@_
  いや!超嬉しい!!!  
























           だから………ッ!






























_@_
  ……おい、淡波が嫌がってるだろ  
その手、離せよ




























          だか…ら……っ、
























_@_
  ……俺が絶対何とかするから  





















           …………ッッ、




























_@_
  淡波、幸せになれよ!  








淡波 あなた
  〜ッッ!!!  
淡波 あなた
  ( だか…ら…っ
私はアンタを…殺さなきゃいけない……ッ )











  最後の力を振り絞り,ナイフを持った腕で振りかぶる。




























































淡波 あなた
  でも……っ  









   カランと乾いた音がして、ナイフが床に転がった。










     その音を聞いて、目を瞑っていた悪魔

          思わず目を見開く。








_@_
  ……え?  
淡波 あなた
  アンタは確かに悪魔だ。私の両親を殺し  
私を地獄に突き落とした
淡波 あなた
  でもそれ以上に…
私を助けてくれた…優しくしてくれた…






淡波 あなた
  だから貴方は私にとって……''優しい悪魔''  








淡波 あなた
  「優しい悪魔の殺し方」なんて…  
淡波 あなた
  私には…ッ、やっぱり分からない  







      溢れてくる涙を裾でゴシゴシと擦り、

   今できる精一杯の顔で虎杖さんに笑って見せた。







_@_
  ……ッ、淡波……  








   まるで、奇跡でも目の当たりにしたかのように

     '' 虎杖さん '' は、目を大きく見開く。









      そんな顔があまりにも面白くて、

   少し笑いを吹きこぼしそうになってしまった。










淡波 あなた
  虎杖さん、帰ろっか。高専に_______  




























  やっぱりそうなっちゃうよね〜  







淡波 あなた
  っ!?  
_@_
  ( ッ!?この声……もしかしてッ、! )










     予想外にも、背後から彼の声が聞こえて、

     思わず立ち上がり、彼の元へ駆け寄った。








淡波 あなた
  っ!真人さん……っ!  
真人
真人
  やぁあなた!上手くやってるみたいだね  
_@_
  っ!淡波!ソイツに近づくな……ッ!!!  









       動こうと必死にもがいているが、

   当然術式の影響で動くことの出来ない虎杖さん。











   ……でも、なぜ彼が必死にそう叫んでいるのが

        私にはよく分からなかった。








淡波 あなた
  いや……虎杖さん!
真人さんは私に優しくしてくれてて…
淡波 あなた
  それに、真人さんも…ごめんなさい……  
私、貴方との約束を…









 結果的には、真人さんの気持ちを無下にしてしまった。

       でも、真人さんならきっと……








真人
真人
  ……そっか。でも、いいんだよあなた  










      ……ほら、やっぱり許して________









真人
真人
  だって俺自身、こうなる事を望んでいたから  
淡波 あなた
  ……え?  
_@_
  淡波……っ!!!  











   脳が何らかの危険信号を察知した時にはもう遅く、

   流れるように、真人さんは私の頬に優しく触れ……






























真人
真人
  '' 無為転変 ''    








       そう冷たく、無慈悲にも囁いた。





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