青side
俺は、治らない病気にかかっている。
“治らない”と医者に言われたわけじゃない。
けど、周りのみんなを見てたらわかる。
「もう、死なせてよ…」
誰にも聞こえないような小さな声で
そう呟く。
『死にたいんですか?』
「はい…?」
聞こえてたみたい。
優しそうな男性だ。
『いや、すみません、聞こえてしまったので』
「こちらこそ、すみません」
気が動転してるのかな
「あの俺の話聞いてもらってもいいですか?」
何故かその人にすべてを話そうと思った。
『コク…僕でよければ』
その人は目が消えるような可愛らしい
笑顔で俺を見た。
「俺ね治らない病気にかかってるんです
医者に言われたわけじゃないんですけど」
「もう、8年ぐらいここにいます」
「外に出ることもないと思います」
「そうなったら楽しいこともないし」
「生きてる意味もわかりません」
『だから、死にたいんですね』
「はい…」
『でも、まだ、生きる望みはあると思いますよ。だって、あなたの想像ですよね』
「……」
その通り。
みんなのことを信じてなさすぎるし、
自分に自信がなさずぎてる…
「ありがとうございます、
まだ、自分に自信を持って生きてみます」
『それは良かったです』
「あ、あの名前は、」
『確かに言ってなかったですね』
『薮宏太です』
「薮さん覚えときますね」
「それと、どこに住んでるんですか?」
「外に出ることはないけど、もし出れたら
会いたいと思って」
『あぁ〜、そうですね。
僕は伊野尾さんの心の中に
ずっと住んでいますよ 笑』
また、目が消えるような笑顔を見せてくれる
薮さんに会うために
もう少し生きてみようかな
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。