I.N side
ふにゃ、と柔らかい唇。
なんとなくスローモーションの様な時間だったと思う。
脳が状況を理解した時には、プツリと糸が切れた後だった。
抱き抱えたヌナの頭を片手で押さえて、そのまま唇をはむようにキスをする。
ヌナの小さな手が、頼りなく僕の胸をキュッと押すけれど、切れた糸は簡単にはつながらない。
にゅるりと唇の間に舌を滑り込ませると、ヌナの歯が閉じているのがわかった。
開かなかったその隙間は、
拒絶なんだと落胆して体を離す。
ぺたりと座り込んだヌナを横目に見ると、
目を見開いて頬を赤く染めていた。
え?
ぐわっといろんな思考が頭を駆け巡らせると、
一つのシーンを思い出した。
ヌナの部屋から出ていく
スンミニヒョンの姿。
その言葉に反応するかのようにビクリと肩を震わせる。
ぶんぶんと首を振るヌナ。
そっとヌナの頬を撫でると、
潤んだ瞳で僕を見つめた。
僕を見つめるその瞳が
僕だけを映せばいいなんて
そんな汚い感情をむき出しにして伝えたら
きっとヌナは僕から離れるでしょうね?
はらりと落ちたバスローブ。
着崩れたせいで肩からずり落ちた。
露わになるヌナの綺麗な肌を見て、僕は…
長いまつ毛が震えた。
唇はそっと開いて、肯定の合図を。
ヌナの体を引き寄せて優しく唇を塞ぐと、
熱い吐息と共に僕の舌を受け入れてくれた。
何秒か
何十秒か
部屋に響く水音
僕らの呼吸音
絡まる体
すごく短い時間だけど、
僕の心は熱く満たされた。
ポンポンと頭を撫でると、ヌナは微笑んだ。
あー、
脳を占める悪い考えを振り払って、
スマホを見るとたくさんの通知。
現実に戻ってしっかりしなければ。
洗面所のドアが開いてヌナがひょっこりと顔を出す。
僕のグリーンのTシャツに、
ダボっとしたズボンは裾を折って履いている。
可愛らしいヌナの姿に胸がギュッとするのを感じつつ、抑えきれない愛しさから笑みが止まらない。
うん、ほんとだよ。
僕の服を着て、
僕の香りを纏って、
僕のことを考えて。
なんて伝えちゃったら、
引かれちゃうかな??
まあいいや、
ヌナ、
大好きですよ。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。