- 優衣の家 -
家がふたつに繋がっているような外観と、ここだけでもキャンプが出来そうだと思わされるような庭。それを見た紘太は、思わず声を漏らしてしまった。
困惑している紘太をよそに、優は紘太の手を引っ張りながら家に上がる。すると1人の男性に声を掛けられた。
声を掛けてきたのは優衣の父親だった。彼は優しそうに優ににっこりと笑いかける。そして優から離れ、紘太の目の前に立つと。
目が一切笑っていない笑顔で、そう問いただしてきた。雰囲気がガラリと変わった優衣の父親に一瞬だけドキリとしてしまったが、すぐに質問を否定する。それを聞いた進夢は安心そうににっこりと笑顔を見せた。
呼ばれたから来たものの、2人は優衣に何故家に呼ばれたのかの説明をされていない。そして優衣も深く説明しようとせず、父親の部屋に行きたいという。
父親も少し不思議そうな顔を浮かべていたが、次の瞬間、笑顔で娘の提案に承諾した。
家の中を進みながら、紘太は優衣の方を見ながらそう質問する。すると優衣は「 よくぞ聞いてくれました 」と言わんばかりの表情になって。
優衣は勉強に関する記憶力がいい。だから優の言っていた言葉に引っ掛かりを感じていたようだ。
そして、昔のことを深く知ることが出来たら何かわかるんじゃないか。そう考えて2人を家に呼んだとのこと。
優衣の言う通りだ。はるか昔に生きていたのなら、今はもうこの現代にはいないはず。それなのに進夢はまだ生きていると思っている。普通、そんなことはありえない。だから3人は彼の言葉の意味が理解できなかった。
恐ろしいと言わんばかりの優の声を聞いた後、彼は扉の前で足を止める。
そしてその言葉と同時に、扉を開く。
扉の先にあった光景は、壁と同じくらいの高さの本棚とそこに敷き詰められた沢山の本だった。
見たことない光景に、紘太と優は空いた口が塞がらない。
逃げられないことを悟った紘太は、面倒くさそうに置かれている本に触れていく。優も紘太と反対の方に置かれている本を手に取り、静かにページを捲り始めた。
そして父親はその様子を眺めてから、部屋から出ていく。その背中を見届けた優衣も近くに置かれている本を手に取った。
ふと、目に止まったひとつの本。
優衣は興味本位でその本を手に取った。
そして、好奇心に負けて本を開く。
数分後。優がひとつの本を手に取って2人の方に駆け寄ってきた。その時、少し恐ろしいような顔をしている優衣が目に映ったようで、心配そうな表情で彼女の顔を覗き込む。
優に声を掛けられた優衣はハッとしたような顔をして本を戻したあと、笑顔を浮かべて何事も無かったような雰囲気を出す。優はそれが不思議だったが、手にしている本について話し始めた。
紘太が手にしていた本も似たような内容のものだったのか、該当のページを開いて2人に見せる。
少し手が震えてる優に優しく触れながら、優衣は次のページを捲る。
表情が曇りきっている優。それもそのはずだろう。
突然、永遠の別れをしてしまったはずなのに、気が付けば声を掛けられて。雫に「 死は救済 」だと言われ、それを信じてしまった。自分の愚かさや不甲斐なさに打ちひしがれてしまっても無理はない。
ばっと立ち上がり、優衣は近くの本棚に目を通していく。何千冊も置かれている本から目当ての本を探すのはかなり難しい。それでも優衣は一生懸命探し続けた。
そして、ひとつの本を手に取って紘太達に見せる。
優衣の言葉を聞いた優は、更に曇った表情になってしまう。
致命傷を与える。それは言わば自分の手で雫を殺すようなものだ。そんなこと、出来るわけがない。
突然、優衣は真面目な顔でそう呟いた。
優の言葉に、思わず優衣は声を荒らげてしまった。そしてその後、彼女はゆっくりと深呼吸をして続きを話す。
優衣の言葉に少し揺れたけれど、やはりそう簡単に行動に移すことは出来ない。だから2人は力強く拳を作ることしか出来なかった。
優衣の優しさを聞いた優はゆっくりと立ち上がり、そう呟いた。
覚悟を決めた優を見た紘太も、ゆっくりと立ち上がってそう呟いた。それを聞いた優は、にっこりと優しく微笑んで。
そう言葉にした。
その覚悟をこの目で見届けた優衣は2人の背中を押して、笑顔でエールを届ける。
それが届いた2人は、顔を見合せて微笑みあった後、部屋から出ていくのだった。

















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。