柏馬からの電話が一方的に切れた後。
謎だけが残されたスマホを見つめながら呟く。
電話をかけて来るなんて、よっぽどの事があった時か。
ただの、気まぐれか。
自分は言えないけれど、
雅に会って聞くべき事とは何だろう。
少し小走りで視線を色んな場所に向けながら走っていると。
見知ったクラスメイトが近付いて来て、自然と足が止まる。
しかも、引っ込み思案な彼女らしからぬ行動。
驚きと戸惑いを隠せないままお礼を言って、また走り出す。
その後も、様々な場所でクラスメイトや同級生から
同じような事を言われた。
ここまで来ると、逆に不安になる。
今だに会えないから、余計に。
____だから。
後ろから雅が現れた時には、
ビックリしたと同時にホッとした。
彼女は、一瞬だけ目を閉じた後。
僕の声を遮って、微笑む。
その微笑みが綺麗過ぎて、見とれて。
ああ。期待させないで欲しいのに。
少しだけ、期待してしまう。
叶わないまま終わるはずだった恋を。
あの日、届かなくて。
落としたフリをした想いを。
もう一度、拾い上げて良いのかな、なんて。
一歩。距離が縮まって。
今までで1番近くに、雅が居て。
不意打ち過ぎて、照れてしまった。
葛藤する僕の気持ちなんか知らない彼女は、やがて言った。
1番聞きたくて。
いざ聞くと疑ってしまう言葉を。
君にとっくに溺れて居る僕が、嬉しくない訳が無いのに。
本当に、良くないよ。
ますます好きになって、手離したくなくなるから。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。