額に伝わる冷たい感触に目が覚める。
最初に目に入ったのは、俺を覗き込む拓だった。
どうやって入ってきたのか、何をしているのか聞きたいことは山ほどあったが、驚きすぎて上手く言葉が出てこない。俺の驚く姿に疑問を浮かべた後、すぐに納得した顔になった。
記憶を探るが、自分にとって都合のいい夢を見た記憶しかない。拓が部屋に居て、素直になってみたけど結局自分の嫉妬をぶつけただけで...と思い出している内にあることに気づいた。恥ずかしさや照れから顔がどんどん熱くなっていく。
残念そうに声を漏らした後、考え込んでいるような間があった。
キッパリと言う拓に少しイラッとして、壁の方に向けていた顔を勢いよく拓の方に向ける。
振り返った途端、片手で顔を挟まれる。行動の意図が分からず、黙っていると拓が口を開いた。
離さないと言うように手をしっかり掴まれる。
そう言いながらも手を離された顔は、拓の足元を向いている。
しばらく黙っていた拓は急に俺の肩を掴み、ベッドに押し倒す。
俺が混乱している間に拓はベッドの上に乗り、顔を挟むようにして両手を置く。所謂床ドン状態だ。
嘘をつくどころか話すことすら出来ない。床ドンというものに慣れていないのもあるが、恥ずかしすぎる。顔を逸らそうとしてもずっと上から見つめられているから、逸らし辛い。
拓の顔を見上げれば、それだけ?と言いたそうな顔をしている。
少し拗ねているような言い方で言うと拓がの顔が近づいてくる。
動けば唇が触れるというところまで来て、そう言う。思わず目を瞑っていたが、拓の言葉に目を開けた。
驚きで言葉を失っていると拓にこつんと額同士をぶつけられる。
もう熱のせいにして...
そう自分の中で言い訳をして、拓の目を見つめた。
拓は俺の予想外の言葉に驚いている。離れるかと思いきや俺に乗ったまま倒れ込む。
大声を出したせいか咳が出る。それでも拓は退かずに俺の顔を真横から覗いている。
重いし、絶対悪化した...!
咳で少し喋るだけでも痛いが、声を絞り出す。拓は、俺の頬に手を当てながら話を続けた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。