そうして…
私は2人と手を繋ぎながら帰り道を歩いた。
詠太の友達は奏と言うらしい。
私が、女の子みたいな名前だねって言ったら…
一瞬とてもショックな顔をして、よく言われる…と言って俯いた。
けど、なんだかその行動も可愛くて…
たくさんの人に好かれるだなって思った。
えっ…
やばい…なんて事を言ったんだ私は。
もっとちゃんと考えて問いかければよかった…!
奏くんの顔…すごく暗くなっちゃった…
さっきの名前の事よりもとても暗い……
詠太に…友達がいない!?
話しかけられたのは初めて!?
うそ…そんなに辛い学校生活送ってたの!?
知らなかった…あぁ、もう…
私、詠太の事何も知らなかった…
ただ知ってるつもりでいただけだった。
その言葉を聞いて、とても安心した。
その言葉を言う時の詠太の顔…すごく自身に溢れてた。
それに、さっきよ奏くんの行動を見たら…何度も奏くんは詠太を救ってくれたんだろう。
奏くんになら…詠太は任せられる。
奏くんが弱音を吐くなんて思ってもみなかった。
強気で、心強くて。
自分の意思を貫き通す
そんなイメージだった。
…2人でワイワイ会話してるの見ると、心が和んだ。
平和だなって、思えた。
せめてこの瞬間だけでもそう思いたかった。
2人は話してるうちに早足になって私は後ろを歩く。
綺麗な夕日を私は立ち止まって見る。
こんなの…久々だ。
2人の声が遠くなり、聞こえなくなってしまうんじゃないかと前を向くと、ちょうど2人が振り返り…
奏くんは…姉さんから名前呼びに変わった。
距離が近づいた感覚がして…なんだか嬉しかった。
この平和な暮らしが…会話が。
いつまでも続いてほしい。
いや、出来れば詠太はもう少し友達を増やして欲しいかな…?
まぁ、私も人のこと言えないけど。
けど今は…詠太に奏くんがいるから。
それならそれで、いいかな。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。