第6話

お引越し
1,239
2023/04/10 14:41




岸くんの家にお邪魔した日から数日が経った。

特に変わりはなく、俺はいつも通り仕事をして、時間が空いたら岸くんのバイト先のカフェに行っている。

もちろん、いつも飲んでいるカフェラテは美味しいが、岸くんの働いている姿を見ながら飲むとその美味しさがさらに際立つ。(変態ですし、失礼ですよ by秘書)

そして、俺の仕事が休みであったり午前中で終わることがあれば岸くんの家に行って家事の手伝いをしている。

平日は妹さんたちは保育園に行っているから大丈夫らしいけれど、土日の休日は見てもらえないらしく、家で2人だけなのだという。

さすがに心配だから代わりに俺が面倒を見ると言った。

岸くんはそれに対してすごく申し訳なさそうにして断ってきたけれど、あれやこれやと言いくるめて渋々了承してくれた。

下の子たちも、まだ幼いけれど岸くんが毎日自分たちのために色んなことをしてくれていることを分かっているようで、少しでも楽になってほしいという提案があって、岸くんもそれに従った。

そうしてから、岸くんの負担はだいぶと軽減したようで顔色もよく目の下にあった薄い隈も綺麗に無くなっていた。

ちゃんと睡眠が取れているようで俺も安心する。

なにより、子どもたちがとても喜んでくれた。

それが嬉しくて、これからも続けていこうと思っていて矢先に、岸くんからある連絡がきた。

岸優太
大事な話があります。


俺はすぐに岸くんの家に向かった。

家に着いて、インターホンを押すと岸くんが出迎えてくれた。

いつものキラキラした笑顔ではなく、曇った顔をしていてなにかあったんだと悟る。

平野紫耀
平野紫耀
それで、話って?


俺はリビングに通されて、ソファに座るとすぐに今回の件について触れた。

けど岸くんは中々言おうとせず、どこか不安そうだった。

俺は岸くんの手をそっと握って安心させてるように撫でてあげた。

しばらくして岸くんが不安気に顔をあげて俺の目を見てきた。

岸優太
岸優太
あの·····。
平野紫耀
平野紫耀
うん。


俺は岸くんの次の言葉を待った。

岸優太
岸優太
実は·····、
平野紫耀
平野紫耀
ゆっくりでいいからね。
岸優太
岸優太
·····はい。


岸くんは1度深呼吸をして、そして言った。

岸優太
岸優太
俺たち引っ越すことになりました。
平野紫耀
平野紫耀
··············え?


理解に何秒使っただろうか。

引越し?

引越しってあの?

え??

平野紫耀
平野紫耀
ていうことは?つまり?
岸優太
岸優太
しばらくしたら俺たちはここからいなくなります。


え·····。

平野紫耀
平野紫耀
な、なんで?
岸優太
岸優太
紫耀さんもご存知だと思いますが、このアパートは古すぎていつ崩壊してもおかしくない状態なんです。もしそうなった時に、ここにいては危ないと思って引っ越そうと思ったんです。妹たちの為にも。
平野紫耀
平野紫耀
で、でも引っ越すって言ってもどこに?宛はあるの?
岸優太
岸優太
それは·····、これから探します。
引っ越すことについては妹たちも了承してくれています。
平野紫耀
平野紫耀
そっか·····。


そうだよね。

このアパート、だいぶキてると思ってたし、岸くんの判断は正しい。

でも、嫌だな。

引っ越したら、会えなくなっちゃう。

会うことができないわけじゃないと思うけど、それでもなんか辛いな·····。

あっ、そうだ。

平野紫耀
平野紫耀
引越し先は決めてるの?
岸優太
岸優太
いえ、まだですけど·····。
平野紫耀
平野紫耀
だったら俺のとこにおいでよ!
岸優太
岸優太
·····はい!?
平野紫耀
平野紫耀
俺の家大きいし、岸くんたちが来てくれてもなんの問題もないよ!なんならお世話してくれる人もいるから妹さんたちのこと見てくれるし!俺の家からでも岸くんのバイト先は通えるし!
岸優太
岸優太
いや、あの、え??
平野紫耀
平野紫耀
よし!決まり!
じゃあさっそく連絡を·····。
岸優太
岸優太
ちょちょちょ、待ってください!
急すぎますよ!!ていうか、紫耀さんの家にお世話になるなんて·····、そんな申し訳ないことできないです。
平野紫耀
平野紫耀
なんで?俺の家だよ?家主の俺がいいって言ったらいいの!それに俺1人嫌いだからさ、岸くんたちが来てくれたら嬉しいな。あっ!ちゃんと一人部屋もあるから安心してね!
岸優太
岸優太
え、ええ?でも·····。
平野紫耀
平野紫耀
引越し先をこれから決めるんでしょ?それにお金は?引越すためのお金、あるの?
岸優太
岸優太
うっ·····。
平野紫耀
平野紫耀
俺の家だったら家賃払わなくていいし、引越し代もいらないよ。それに岸くんがしたいことなんでもしていいんだよ。
岸優太
岸優太
なんでも·····?
平野紫耀
平野紫耀
うん。岸くん、色んなこと我慢してきたでしょ?節約したり、欲しいって思った物を買わずに我慢したり。もうしなくてもいいんだよ。俺は社会人だし、働いてるからお金はあるし!
岸優太
岸優太
でも一気に3人も増えて大変じゃ·····。
平野紫耀
平野紫耀
そんなことないよ。むしろ俺一人のためにご飯を作ってもらって申し訳ないくらい!だから逆に増えてくれた方がお世話係さんもきっと喜ぶよ!岸くんの食べっぷりは最高だしね!!
岸優太
岸優太
··········。
平野紫耀
平野紫耀
ね?おいでよ!歓迎するよ!
お兄ちゃん!


隣の部屋から妹さんと弟さんが飛び出してきて、その勢いで岸くんに抱きついた。

岸優太
岸優太
え、どうした?
私、紫耀お兄ちゃんの提案にさんせいする!
ぼ、ぼくも!
岸優太
岸優太
え·····。
平野紫耀
平野紫耀
どうする?岸くん。


岸くんはしばらく悩んだ。

そして·····。

岸優太
岸優太
じゃあ·····、お世話になってもいいですか?
平野紫耀
平野紫耀
もちろん!ウェルカムだよ!!


こうして岸くんたちは元の家から離れ、俺が住むマンションに引っ越してきたのだった。




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