第99話

🦉✩.*˚
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2026/05/16 12:00 更新










 ホグワーツが用意したポートキーでイギリスに到着したのは、現地時間の朝だった。



 今までなぜこれを使っていなかったかというと──そもそも存在を知らなかったからだ。外国人留学生用のポートキー制度は、魔法省が昔に整備したものの、異国の魔法学校に通う生徒などほとんどおらず、すっかりホコリをかぶって忘れ去られていた。伝えられなかったのも、仕方のないことだったのだろう。


 「制度というのは忘れられるものじゃ」とは、ダンブルドア校長の談だ。
 


 ぐにゃり、と世界がひっくり返ったかと思えば、胃の中が裏返されるような感覚に襲われた。足元ががたんと崩れ、視界の端が白く滲む。


 次の瞬間には草の匂いと土のにおいが鼻をついた。転ばなかったのは奇跡だと思う。僕は自分の足元を見下ろして、ズボンの裾についた土をそっと払い落とした。




あなた・シアーズ
やっぱり、ポートキーは苦手だ……





 スーツケースを引き寄せて体勢を整えると、遠くに赤い屋根が見えた。煙突からは細い煙が上がっていて、どこか懐かしい香りが漂ってくる。


 一昨年と全く変わらず、家は傾いていた。屋根は少し曲がっていて、窓の数は左右で合っていない。でも、なぜだろう。すぐに「ああ、あれがロンの家だ」とわかってしまう不思議さがあった。



門を抜けると、玄関の扉が勢いよく開いた。




ハーマイオニー・グレンジャー
あなたー!!





 ハーマイオニーだった。少し乱れた髪、頬をほんのり赤くして駆け寄ってくるその姿を見て、僕は自然に笑ってしまった。




あなた・シアーズ
久しぶり
ハーマイオニー・グレンジャー
もう、いつ来るのか全然分からなかったじゃない!あなた連絡が遅いんだもの
あなた・シアーズ
ごめん、手続きがうまくいかなくて





 ハーマイオニーは僕の手を取って、グイグイと家の中に引っ張っていく。




ハーマイオニー・グレンジャー
でも間に合ってよかった!朝ごはん、まだ残ってるわ。あ、ジニーも起きてる!





 そのまま手を引かれて玄関へ入ると、途端にウィーズリー家のにぎやかな空気に包まれた。


 朝のキッチンでは、ウィーズリーおばさんが鍋に魔法をかけながら、何種類もの料理を同時進行で作っている。トーストがひとりでに宙を舞って、皿に並んでいく。




モリー・ウィーズリー
来たのねあなた!
あなた・シアーズ
お世話になります
モリー・ウィーズリー
まぁまぁ、そんな他人行儀にしないで。さぁ、座って座って!





 声に促されて、テーブルにつく。ジニーが隣に座って、「あのチケット、ほんとすごいよ」と目を輝かせた。




ジニー・ウィーズリー
貴賓席でしょ?パパのコネで取ってもらったんだって。
ハーマイオニー・グレンジャー
すごいわよね。ロンが喜ぶのも納得だわ
あなた・シアーズ
そういえば、そのロンは?





僕がそう尋ねると、ジニーは真顔で答えた。




ジニー・ウィーズリー
寝てるわ。起きないのよ、ほんとに
ハーマイオニー・グレンジャー
絶対、出発のギリギリまで寝てるわ





 ハーマイオニーがあきれたように言うと、背後から軽快な声が飛んできた。




フレッド・ウィーズリー
おいおい、ロンのこと悪く言うなよ、彼はウィーズリー家の希望の星なんだぞ?
ジョージ・ウィーズリー
と言いつつ、昨日もトーストのバターで机をベタベタにして怒られてたけどな





 フレッドとジョージが揃って現れる。


 にやりとしたその笑顔に、僕は苦笑した。




ジョージ・ウィーズリー
あなた、お帰り。今年の夏は静かにはさせねぇぞ
フレッド・ウィーズリー
前よりさらにパワーアップしたイタズラ道具、見せてやるからな
あなた・シアーズ
……頼むから、僕の寝床にだけは仕掛けないで
フレッド・ウィーズリー
おっと、それは『善処する』とだけ言っておこう





 二人は楽しげに肩をすくめ合いながら、別室へと去っていった。



そのあとに遅れて、階段の上から寝ぼけたハリーが顔を出した。




ハリー・ポッター
あなた?ああ、やっと来たのか……おはよ
あなた・シアーズ
おはよう、ハリー。相変わらず寝癖がすごいね
ハリー・ポッター
うん……僕も自分で見てびっくりした……鏡が壊れたかと思った……





 ハリーはぼそぼそと笑って、階段を下りてくる。僕の正面の席に座って、眠たげにトーストをかじった。




ハリー・ポッター
でも、間に合ってよかったよ。君がなかなか来ないから、ロンが昨日の朝からずっとぶすくれてた
ハーマイオニー・グレンジャー
ロンったら、「あなたにクディッチがいかに素晴らしいかを教える!」って、意気込んでたのよ





 ハーマイオニーが笑顔でそういうと、なんだか僕まで嬉しくなった。


 ロンとの会話を楽しみにしておこう。



 そういえば、とジニーが口を開く。




ジニー・ウィーズリー
あなたって、クィディッチ見るの初めてなんでしょ?ルールとか大丈夫?
あなた・シアーズ
うん……でも、好きだよ。去年はハリーの試合も見てたし
ジニー・ウィーズリー
じゃあ、生で見るのはきっと驚くよ!会場の大きさも、選手の動きも、信じられないから!
あなた・シアーズ
楽しみにしてる





僕の、イギリスでの生活が帰ってきた。









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