高校入学して初日が終わった。まだ早いかもだけど。滑り出しは順調。友達も一応できた。良かった。私の学校生活は明るい…!
………前言撤回。お先真っ暗かもしれない。紫色の髪と、手と首にあるのは刺青?色がばらばらなマニキュアからしても絶対まともな人ではない。何としてでも彼の目にはいるのは避けねば!!!となるべく自然な動きで人の影に隠れる。
馬鹿野郎!!!と心の中で毒づく。さすがに声に出す勇気は無かったけれど。しかし、指をさされて声までかけられてしまっては無視をするわけには行かない。とぼとぼと先輩?の方へ向かう。助けを求めてジヨンとセビョクのほうを見たがごめ!と軽く謝るような仕草をしただけだった。後で覚えとけよ!裏切り者!!
見た目に違わず強引な人だ。ほとんど引っ張られるようにどこかへ連行されていく。正直怖くて仕方がない。
少し歩くと、紫の人から話しかけてきた。
確かにやっている。少し前まで動画サイトに投稿してた。でもそれは黒歴史だから誰にも言ってないし、そもそもこの学園に知り合いはいないはずだ。何故この人が知っている?じわじわと焦りが脳内を占めていく。
今回は俺だったから良いものの…と仕方がなさそうに言う。まずい。逃げたいけれど、体格差からしても簡単に逃げられる相手じゃない。
ここまで来たら、腹を括ろう。最悪、金的を食らわせて痛がっているうちに逃げる。この廊下も人通りが少ないとはいえ無いわけではない。死にはしないだろう。
覚悟を決めて教室に入ると、今朝会ったセミ先輩がいた。もっと言うと、初対面の男子が二人と、セミ先輩がいた。
許可も得ず肩をばしばし叩く紫頭とその仲間に怯えて、セミの方を見た。…というか、今聞き捨てならない言葉が聞こえた気がする。
ん?と微笑を浮かべる紫頭に気圧されて紡ごうとした言葉が尻すぼみになってしまった。
余りに怯えた私を気にしてくれたのか、セミが助け舟を出してくれる。
思わず小走りでセミ先輩の近くに寄ると、抱きしめられた。柔軟剤だろうか、いい匂いがする。
私を置き去りにして進んでいく話に、ずっと困ったようにきょろきょろしていた先輩が待ったをかけた。ヒートアップしていく喧嘩に挟まれているのはとても居心地が悪かったので、正直ありがたい。
まさかラップで自己紹介されるとは思わなかった。歌詞を上機嫌に口ずさみながらこちらへずかずか近寄ってくるので、思わずセミ先輩の後ろに隠れてしまった。
ミンス先輩が、こちらを気にしながら覗き込んでくる。さっきの喧嘩も諌めてくれたし、いい人なのかもしれない。
……あんまり得意ではない気がする。さっきのセミ先輩に言っていた事もあるし、軽薄な感じが好きではない。視線を上げると、セミと目が合った。
自分もちゃんと自己紹介をして、これで一区切りである。この場は、一旦解散となった。
そんな事言われても、あっちから近づいてきたのだ。セミ先輩というおまけ付きで。先輩がいる以上、関わらないわけにはいかないし何故か私がベーシストということも知ってたようだし完全な四面楚歌状態である。
友達にそう言われると、なんだか勇気が出る。明日部活見学に行ってみて、無理そうだったら断ろう。そういう決意が湧いた。
別れを告げて家に帰った。半日とは思えない濃さの学園だったので、その日は早く風呂に入って時計が9時を回る前に寝たのだった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。