第5話

入学式当日〈放課後〉
42
2026/04/01 14:10 更新
高校入学して初日が終わった。まだ早いかもだけど。滑り出しは順調。友達も一応できた。良かった。私の学校生活は明るい…!
サノス
Hey!!!!!あなたって奴いる!?!?
………前言撤回。お先真っ暗かもしれない。紫色の髪と、手と首にあるのは刺青?色がばらばらなマニキュアからしても絶対まともな人ではない。何としてでも彼の目にはいるのは避けねば!!!となるべく自然な動きで人の影に隠れる。
デホ
え?あなたですか?
あなたなら、ほら。あそこ
デホ
おーい、あなた!先輩が呼んでるぞ〜!!
馬鹿野郎!!!と心の中で毒づく。さすがに声に出す勇気は無かったけれど。しかし、指をさされて声までかけられてしまっては無視をするわけには行かない。とぼとぼと先輩?の方へ向かう。助けを求めてジヨンとセビョクのほうを見たがごめ!と軽く謝るような仕草をしただけだった。後で覚えとけよ!裏切り者!!
あなた
…………はい………
サノス
ちょっとついてきてくれ。良いよな!Let's go!!!
あなた
……………えっ?ちょ、えぇ?
見た目に違わず強引な人だ。ほとんど引っ張られるようにどこかへ連行されていく。正直怖くて仕方がない。
少し歩くと、紫の人から話しかけてきた。
サノス
なあ、お前さ、ベースやってんだろ?
あなた
…………ぇ
確かにやっている。少し前まで動画サイトに投稿してた。でもそれは黒歴史だから誰にも言ってないし、そもそもこの学園に知り合いはいないはずだ。何故この人が知っている?じわじわと焦りが脳内を占めていく。
サノス
お、やっぱり?
サノス
あのな?さすがにアカウント自分の名前にすんのはヤバいぜ?
今回は俺だったから良いものの…と仕方がなさそうに言う。まずい。逃げたいけれど、体格差からしても簡単に逃げられる相手じゃない。
サノス
We're here!着いたお先にどうぞ、princess?お姫様
ここまで来たら、腹を括ろう。最悪、金的を食らわせて痛がっているうちに逃げる。この廊下も人通りが少ないとはいえ無いわけではない。死にはしないだろう。
あなた
……………失礼します
セミ
サノス、自分から呼び出しておいて遅刻って………あれ、あなた?
あなた
……えっ?セミ先輩………?
覚悟を決めて教室に入ると、今朝会ったセミ先輩がいた。もっと言うと、初対面の男子が二人と、セミ先輩がいた。
ナムギュ
アニキ、遅いす。あとそいつ、新入生ですよね?どうしたんスか?
サノス
ん?ウチの、new bassist.
許可も得ず肩をばしばし叩く紫頭とその仲間に怯えて、セミの方を見た。…というか、今聞き捨てならない言葉が聞こえた気がする。
あなた
あっ、あの!!私っ!そんな話、知りません………
ん?と微笑を浮かべる紫頭に気圧されて紡ごうとした言葉が尻すぼみになってしまった。
余りに怯えた私を気にしてくれたのか、セミが助け舟を出してくれる。
セミ
どう見ても誘拐してきたんでしょ。そもそも部活見学も始まって無いのに何連れて来てんの?
セミ
ほら、こんなに怯えてる。こっちおいで、あなた
思わず小走りでセミ先輩の近くに寄ると、抱きしめられた。柔軟剤だろうか、いい匂いがする。
サノス
Hey!!!俺が先に目を付けてたんだぞ!Thiefing cat!!!泥棒猫
セミ
は?怖がらせてるだけでしょ
ナムギュ
おい!!アニキになんて口叩きやがる
ナムギュ
年長者への敬意が足りてねェんじゃねえの!?
セミ
もう少し尊敬できるとこ作ってから言えば?
ミンス
ま、まあまぁ三人とも
ミンス
軽く自己紹介だけして、一旦今日はお開きでいいんじゃ……明日部活見学があるんだし………
私を置き去りにして進んでいく話に、ずっと困ったようにきょろきょろしていた先輩が待ったをかけた。ヒートアップしていく喧嘩に挟まれているのはとても居心地が悪かったので、正直ありがたい。
ナムギュ
は?おいミンス。今日こそこの生意気なクソアマを教育……
サノス
That's a good idea! 確かに入部届は今無いし、部活もホントは駄目だって言われてたし、取り敢えず自己紹介だけして解散するか!
サノス
 〜♪Yo
新入り? you look kinda shy
目逸らすなよ I don’t bite
名前はサノス 覚えとけ
この部屋じゃちょっとだけ loud な先輩で
ベース持ってんだろ? good choice
リズムは嘘つかねぇ that’s real voice
ミスってもいい 気にすんな
音で話せば だいたい分かるから
怖がんなよ we ain’t that bad
まぁちょっとだけ crazyなだけ
困ったら来い behindじゃなくて前
そのうちお前も 鳴らせる side by side
まさかラップで自己紹介されるとは思わなかった。歌詞リリックを上機嫌に口ずさみながらこちらへずかずか近寄ってくるので、思わずセミ先輩の後ろに隠れてしまった。
セミ
普通にできないの?
ナムギュ
アニキ……初対面の自己紹介でラップそれはちょっと………
サノス
何だよ!日常的に俺のラップ聞けるのはお前らくらいなんだぞ!?もっと有難がれよ!!
ミンス
あー…えっと、大丈夫?サノスは頭が少し心配かもだけど、ステージの上では心強いから。
ミンス
僕は、ミンス。楽器はドラム。よろしくね
ミンス先輩が、こちらを気にしながら覗き込んでくる。さっきの喧嘩も諌めてくれたし、いい人なのかもしれない。
ナムギュ
お、ちょっと顔出した!……チッ、引っ込むなよ
ナムギュ
俺はナムギュ〜〜担当はリードギタ〜
……よ・ろ・し・く
……あんまり得意ではない気がする。さっきのセミ先輩に言っていた事もあるし、軽薄な感じが好きではない。視線を上げると、セミと目が合った。
セミ
……もう一回やっとく?
セミ
私はセミ、キーボード担当。バカばっかだけど、許してやって
セミ
なんかあったときは言うんだよ?助けるから
あなた
ありがとうございます……!
あなた
あなたです。一応ベースが弾けます。よろしくお願いします
自分もちゃんと自己紹介をして、これで一区切りである。この場は、一旦解散となった。
あなた
っはぁ〜〜〜
あなた
ただいま………
ジヨン
あ!!!おかえりあなた!!大丈夫?何もされてない?
あなた
う、うん……というかその反応、あの人が誰だか知ってたの?
ジヨン
ゔ………それは……………
ジヨン
あの人スカウトだし……ヤバい噂しか聞かないし………
あなた
スカウトって良くないの?あの先輩は別として
セビョク
スカウトで入ってくる奴は、私みたいな身寄りがなかったり、親に反対されてたりで進学が難しい人か、余りに暴力的とか頭おかしい奴かだから。
セビョク
あいつは当然後者
セビョク
あんたも安全に卒業したいならあんまりアイツに関わらないほうがいいよ
そんな事言われても、あっちから近づいてきたのだ。セミ先輩というおまけ付きで。先輩がいる以上、関わらないわけにはいかないし何故か私がベーシストということも知ってたようだし完全な四面楚歌状態である。
あなた
……どうしよう…
ジヨン
ま、まあまあ
ジヨン
あの人も流石にここ退学したくは無いだろうし、きっと大丈夫だよ!!
ジヨン
最悪、先生に助け求めればいいんだし!
セビョク
まあ、結局はあなたアンタが決めることでしょ
セビョク
好きなようにしたらいいじゃん
友達にそう言われると、なんだか勇気が出る。明日部活見学に行ってみて、無理そうだったら断ろう。そういう決意が湧いた。
あなた
……ありがとう、ちゃんと考えてみる!
ジヨン
ん!良かった。じゃね!
セビョク
じゃあ、また明日
あなた
うん、またね!
別れを告げて家に帰った。半日とは思えない濃さの学園だったので、その日は早く風呂に入って時計が9時を回る前に寝たのだった。

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