翌日、放課後＿＿＿

  教室から弓道場までの道。

  湊の事が心配で、

  というか、やっぱり辞めるなんて

  言わせたくなくて

  湊の教室まで押しかけた。

  湊は少し緊張しているらしく、

  表情が硬い。

  渋り続ける湊の背を押して

  弓道場の扉を開けさせる。

  もう既に部活は始まっているらしく、

  準備をする音が聞こえてきている。

  あまり悠長にもしてられないと

  思ったのといつまでも湊が

  中に入らなそうなのとで

  つい背を押してしまった。

  このままだと自分も弓道場に

  入らなければならなくなるなんて

  全く気づいていなかった。

  
  1番に気づいた遼平くんが

  私を指さして叫んだ。

  やらかしたと思った時には

  もう遅かったようだ。

  静弥も驚いたようにこちらを見て

  如月くん・小野木くんは

  珍しいものを見るように

  こちらに目を向けた。

  背筋を正した湊は

  これまでの態度を反省している事を伝え、

  部に入れて欲しいと言った。

  皆が湊に注目している間に、

  こっそり弓道場から出ようと

  忍び足で出口へと向かう。

  清らかな笑顔で湊と顔を合わせる静弥。

  女子部員たちも湊の入部を

  認めてくれているらしい表情をしている。

  元気よく湊の肩に腕を回した山之内くん。

  身長の関係で湊を見下ろす形になるのに、

  全く嫌な気にならない屈託の無い笑顔だ。

  やはり無邪気に湊に尋ねるが、

  返答が予想に反していたらしく、

  驚いたような声を上げた。

  声を上げたのは



  山之内くんだけでは無く＿＿＿

  こんなことを言ったら失礼だろうけど、

  強面代表みたいな顔でその台詞、

  自分が言われている訳じゃないのに、

  背筋がピンと張ってしまう。

  だが、小野木くんに対する湊も

  こればかりは引く気はないらしく、

  真っ直ぐと小野木くんの目を見ていた。

  不穏な空気が流れる弓道場。

  気まづすぎるし、部外者すぎるので

  さっさと出て行きたい。

  でも湊を送ると決めた以上、

  ここで帰る訳にも行かないだろうか。

  紫がかった髪を一つ結びにしている子が

 
  遠慮がちに声を上げた。

  丁寧な話し方と所作で指されたのは

  私のことだった。

  全員が再び私の存在に疑問符を浮かべる。

  さすが部長だなと思いながら湊の隣に戻る。

  湊は少し不服そうだったけど、

  なんとなく面白いから放っておこう。

  静弥と美人ちゃんの関係が気になって

  ここまで来てしまっていた

  なんて、



  口が裂けても言えるはずも無い。

  静弥からの目線を受け取ったが

  気付かないふりをして目を逸らした。

  覗きという誤解は解けたらしい。

  なんていう安堵も束の間、

  件の美人ちゃんが優しく尋ねる。

  事情を知らない人を

  無下にする訳にもいかない。

  そう思って答えるけれど

  視線は下がっていくばかりで、

  皆が違和感を抱き始めていた時、

  またも如月くんに助けられ、

  場を凌ぐ事が出来た。

  いつかお礼を言わねばと思いながら

  弓道場を出ようとした時、

  湊に呼び止められた。

  少し子供扱いをしてみた。

  また面白い反応が見れると思ったから。

  反応は、思っていたのと違った。

  もちろんいい方の予想外。

  このままきっと湊は

  いい方向に進むだろう。

  私は、

  私は、本当はどうしたいんだろう…?  

                          ♥️・⭐️・💬  お気軽に